第3話 俺の噂とアイツのウワサ
眠い目を髪の毛の上から擦りながら登校した俺は教室に入るやいなや、以前とは違う視線が俺に向けられていることに気が付いた。
が、そんな目線など陰キャの俺は気にすることなく、いつものように自分の席に着く。
その瞬間を待っていましたと言わんばかりに、俺の肩に手が回される。
「何か用か、
俺にそんなことをしてくる奴は
唯一、この高校生活で出来た俺の友達と言える人かもしれない。
イケメンともブスともいえぬ普通の顔だが、ノリと勢いで男女ともから慕われている一言でいえばいい奴だ。
「何だと聞きたいのは俺の方だ。学校中が話題になってるぞ」
「何が?」
「
人のうわさというものは怖いもので、ゴールデンウィークで会う頻度が減るであろう期間だっただろうに俺のそんな噂は学校中にも広まっていた。
会う頻度が減るのは俺みたいな陰キャだけだと言うのは無しだぞ。
ただ、広まっている噂は嘘ではないので俺はそのまま返事する。
「あぁ、別れたよ」
「なんでだ?お前から言ったのか?」
「いや、振られたんだよ。向こうに好きな人が出来たんだってさ」
「それならそうと俺に連絡しろよ。悲しみ飯の1つや2つ奢ってやったのに……でも、ついに切られたか」
「ん?」
そんな一問一答みたいな会話中に、隆貴の口からボソッとそんな言葉が聞こえ俺は反射で聞き返すと、隆貴は俺を教室の端に引っ張って連れて行きささやくような声で俺に言葉を続けた。
「いや、これは本当はお前には言うなって言われたんだけど。一部で噂が立ってるんだが……」
「うん」
「有村唯、実はお前と付き合っているときに他の男とも会っているのが何度か目撃されててな。その相手が、あのイケメンで有名な
その言葉を聞き、すべてが繋がったような気がした。
村上陸先輩はイケメンで有名な他、結構な遊び人だとも知られている。
好きな人が出来た、して欲しいことが……。
「あー、でも噂だからホントかは分からんけどな」
「いや、伝えてくれてありがと。おかげで吹っ切れたかな」
そんな俺の様子を見てか、隆貴は何故か笑みを浮かべた。
「何で笑うんだよ」
「いや、もっと悲しんでると思ってな。どうやって接しようか悩んでたんだが杞憂だったな。もうすでに新しい恋でも見つけたのか?」
「そんな訳ないじゃん」
「お前みたいないい男には有村はもったいなかったんだよ。ほら、松村陽菜とかどうだ?」
そう言われて俺たちは楽しく友達と団らんしている彼女の方に目線を向ける。
少しこの前のことを思い出してしまったが、向こうは俺だと思っていないし無かったことだとかき消す。
「関わったことほとんどないし、流石に高嶺の花すぎる。俺には勿体無い」
「俺はそんなことないと思うけどな」
「そんなこと言ってくれるの隆貴くらいだよ。俺は俺よりお前の方がお似合いだと思うよ」
「いやいや、それはないわ。俺には心に決めた人が……」
「はいはい、もうその話は何回も聞いた」
「つめた~」
「それに、俺はしばらく恋愛事は良いかな。今回でこりごり」
俺のそのセリフに隆貴は「そっか、いつかメシ奢ってやるからな」と優しい声で言った。キリよくそのタイミングで先生が入って来て、朝礼の時間となったので俺たちはそれぞれ自分の席に着いた。
「よーし、お前らゴールデンウィークは楽しんだか?いいニュースと悪いニュースどっちから聞きたい?」
教壇の前に立った先生は、女性にしては悪い口調で俺たちにそんなことを尋ねてきた。
クラスの陽キャたちが口々に「いいニュース」「悪いニュース」と発しているのを片目に、俺は悪いニュースの方から聞きたいなと思いつつ口にはしないで先生の発表を待つ。
ちなみにショートケーキのイチゴは最後に食べるタイプ。そっちの方が良くない?行儀は悪いらしいけど。
「それじゃあ悪いニュースからにしよう」
俺の心の声を呼んだのか先生は悪いニュースから発表してくれた。
「悪いニュースは、テストの話でーす。今月末には中間、すぐ後には期末テストがあります。来年からは受験生なので、今の内から始めておくように。卒業生の中にはもっと早くから始めておけば良かったとの後悔をよく聞くので、みんなは後悔しないように」
その先生の先生らしい呼びかけに皆気だるそうに「はーい」と返事をする。
「まぁ、でも高校二年生なんて勉強を忘れてはっちゃける最後の年だからな、楽しむのも忘れないように!ということで、ここからがいいニュースです!」
そんな先生のテンションの切り替えに、クラスメイト達もワクワクしている。
「今から席替えをしまーす」
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