シンゴウ

てると

シンゴウ

「おい、シンゴー!ちょっとシンゴーを調べてみろ」

「はい?」

「いいから」

 にやけた笑顔の先生は、そこで不意に使わなくなった裏紙を取り出し、そこにペンででかでかと「秦剛」と書かれた。


秦 剛(しん ごう、簡体字中国語: 秦 刚、拼音: Qín Gāng 、1966年3月19日 - )は、中華人民共和国の元外交官、報道官。


 わたしはこの記憶を想起するたびに、不思議と哄笑がこぼれてしまうのだが、これが一体何なのか定かでない。しかし、笑ってしまうように作動している。先生の笑顔につられて。


「僕もYouTubeで情報取ってるんだけどね、中国はもうダメだね。韓国も。もうまもなく、もうまもなく」

 煙草を先端ばかり吸うとすぐに灰皿代わりの陶器に入れてしまう先生は、そうして、頗る真剣に中韓の崩壊を説き、右手でにゅるりと口元を拭かれる。



 わたしは今これを書いている只中にも、トイレに行き、パソコンの前でも、ずっと「秦剛秦剛」と唱えるように笑いながら、わけのわからない愉快さに満たされている。

 わたしははっとした。そうだ、わたしたちは、もっと、理解できないものを食べるべきなのだ。いや…、誰が為にか、あなたを支えるまなざしは、既に、じっと意味不明。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シンゴウ てると @aichi_the_east

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る