第3話 英雄と勇者の鍛錬
かぁーっ、遂に召喚されやがったかぁ……
このまま召喚されなけりゃ俺のこの村での平凡でとても穏やかな毎日のスローライフが続いた筈なのに……
こんな小さな村にまで聖王国セイントにて英雄と勇者が召喚されたと伝わってきた。前世と違い伝達手段の限られているこの世界で、一ヶ月前の出来事がこの村に届くなんて絶対にセイントの奴らが早馬なんかを利用して意図的に流してるんだと思う。
そんな話が伝わってきたなか、何故か俺はテツロウと一緒に神殿にいる。そこにいるのは
「よくぞ参った、
「おーい、爺っちゃん…… 創世神に何を言われたか知らないけど、そんな芝居は要らないし俺は村を出ていかないから」
俺が冷静にそう村長に突っ込むと、途端に何時もの口調に戻る村長。
「何だと、ヤマト。お前は創世神様の言いつけを守らないというのか? それは大神官として見過ごせんなあ」
「だからな、爺っちゃん。創世神の神としての力を多少とはいえ取り戻してやったのは俺なの。それを感謝されこそすれ、余計な頼み事まできいてやるつもりは俺には無いし、もしも俺がこのまま創世神のいう事に従ったなら村の掟にも反するだろ?」
「むっ、確かにそうだな……」
この村には【受けた恩を必ず返す、返してもらう】という謎掟があるのだ。
『ちょっ、ちょっと、大神官! ヤマトちゃんに丸め込まれないでよーっ!?』
「いや、創世神様。今のワシは大神官ではなく、村長ですっ!!」
『そんな〜……』
「諦めろ、創世神。前にも言ったが俺は村から出るつもりは無い」
しかしそんな俺の言葉に村長が反論した。
「それは困るぞ、ヤマト。お前には街に村の生産品を売りに行く際の護衛を頼んでいた筈だ」
「いやいや、そう言う意味で村から出ないって言ってないから、村長。用事がある時は出るよ」
「ならば良し! という訳ですので創世神様、ご理解頂きたい!」
『う〜…… 分かったわよ!!』
オネエさんな創世神はそう言うと神気を残して神殿から消えたのだった。
「しかしヤマトよ。本当にその英雄や勇者はこの村を通るのか? 魔族の領域に行くには確かにこの村を通らねば行けないが、それ程の者たちならば空を飛んで行ったりするのでは?」
う〜ん…… それは無いかな? この世界の魔法は便利なようで不便だからな。転移魔法は無いし、重力魔法なんかも無い。火水風土樹氷雷光闇の属性魔法はあるけど、風魔法も人を飛ばす程の精度を持ってる物じゃない。
それは神託の女神と呼ばれている邪神も知ってる筈だから、そんな魔法は創れないようにしてあると思う。多分だけどな。
…… …… …… …… …… ……
「オラーッ!! これでどうだっ!!」
「甘いっ!! そんなのではスライムすら斬れませんぞ、英雄タケル殿!!」
意外に真面目に鍛錬に励んでいるタケルだが、それは王宮の者にその気にさせてくれと頼まれた高級娼婦のお姉さんに乗せられているからだ。
ちなみにタケルは昨夜、お姉さんのテクニックにより本番前に精力を使い果たしていた。
「ウフフフ、夜の英雄になるにはまだまだ体力が足りないようね、坊や。そんなんじゃ私を抱く資格は無いわ」
その一言によりタケルは持久力、体力、精力を鍛え上げると密かに心に誓ったのだ。なので、真面目に鍛錬をしているのである。
『ぜってぇーにあの
タケルの心の中はそれしか無かった……
一方で勇者カオリは聖職者に連れられて教会に来ていた。聖王国セイントでは神託教が正教となっている。表向きはちゃんと教会として負傷者や病の者の治癒を魔法で行っているのだ。
高いお布施を支払える者に限ってだが……
しかしカオリは教会に着いた途端にメイスを構えて責任者である神官を脅した。
「私は早急に力をつけたいの! だからお布施を支払える支払えないに関わらず、毎日五十人の治癒の必要な人を用意しなさい! その五十人からはお布施は取らない事! 良いわね? 逆らうならアナタの顔を潰すわ!!」
カオリが姫と婚約者の顔を公衆の面前で潰した事は教会でも知られている。顔を潰されたくない神官は即答した。
「ハイッ!! 勇者カオリ様の言う通りに致しますっ!!」
『これで貧しい人にも治癒魔法をかけて上げられるわ……』
勇者カオリの内心を知らずに神官はそれから毎日五十人の治癒を必要とする人を、スラム街まで行って探す羽目になったのだった。
それぞれの思惑により鍛錬は進み、王都には治癒の必要な者が居なくなったので、カオリは王都を出て近隣の街にまで泊まりがけで出かける事に。既にこの頃にはカオリのレベルは85にまで上がっていた。
街に向かう道中に出る魔獣も難なく倒せるレベルである。
一方で英雄タケルは……
「ウフフフ、まだまだねぇ、坊や。ちゃんと鍛錬してるのかしら?」
まだ高級娼婦のお姉さんを攻略出来ていなかった……
『クソが! 何でだ? レベルも78になったし、体力も気力も魔力も着実に上がってるのに! それに持久力もかなりの物だぞ! 俺は今ならフルマラソンを全力で走っても息切れをしない自信があるのに、何でだ?』
タケルは悩んでいた。しかしながらいくら身体の持久力をつけようとも、股間にぶら下がるジュニアの持久力は上がらない事をタケルは知らなかった。
その鍛錬はまた別の方法でしかなし得ないのである。それを知るのはまだまだ先の話である。
「ウフフフ、それじゃ坊や。今夜もお姉さんが添い寝してあげるわ」
そうして今夜も精力を口で搾り取られたタケルは疲れ果ててお姉さんの添い寝で深い眠りにつくのであった…… 頑張れ、英雄タケル!
君が高級娼婦のお姉さんを抱ける日はまだまだ遠い! 茨の道を進むのだ!!
まあ、この高級娼婦のお姉さんは実は三代前の曽祖母がサキュバスクイーンだったのを知ってるのはこのお姉さんを連れてきた高級官僚のみである……
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