第16話 車は維持費の比較も重要なポイント

「そう考えると、うちはやっぱり軽自動車かなぁ。」


隣に座る遥香もこくこくと頷いている。


「そうだな。燃費もいいし、最近の軽自動車は中も広いからな。」


「でも、仮に今の車がさっきの買取額で売れたとしても、残った100万だと新車は厳しいよね。」


「その前に残債処理のことを考えないといけないな。」


「あれ?残債処理って、買取額が上回ったら消せるんじゃないの?」


「普通は消せないな。ローン契約を結んでいるクレジット会社か、車を購入したディーラーに所有権があるはずだからな。一般的には残債を一括で支払って、所有権解除を申し出てからしか車の売却はできないはずだ。」


「ということは、先にローンの残金を支払わなければいけないってこと?」


「普通はそうだな。仮に残債が100万だとして、支払えるか?自分たちの貯金、一時的な親からの借金など方法はいくつかあるけど。」


「どうかな?」


俺は遥香に聞いてみた。


うちは彼女に財布を任せている。


「う~ん、支払えないこともないけど、不安だなぁ。もし今の車の買取額がもっと低かったり、お金が戻ってくるまでに何かあったら厳しいよ。」


「そっかぁ。」


「それなら、ちょっと裏技ができないかやってみようか。」


「裏技?」


「まあ、確実にできるかはわからないけど、残債処理を現金負担なしでできるかどうか相談してみよう。」


「そんなこと可能なの?」


「何事もチャレンジだ。それより、軽自動車への買い替えで本当にいいのか、ふたりで話し合っておいて欲しい。それと、今の車と軽自動車の維持費の違いについて話しておこう。」


「うん、わかった。」


「まず、自動車税だと排気量が2000ccクラスの今が年間39500円、軽自動車税なら10800円だ。これだけでも年間の差額が28700円だな。」


「自動車税だけでも結構大きいね。」


「次に燃費だが、光太郎の車でどのくらいだ?」


「燃費計で見る限り、ガソリン1リットルあたりで11.5kmくらいだったと思う。」


「ウェブで見る限り、軽自動車の対象車種は実燃費でリッターあたり17~18kmだな。」


「やっぱり軽自動車の方が燃費が良いね。」


「ボディが軽いし、排気量も三分の一だからな。」


「なるほど。」


「年間走行距離は今の車の走行距離を考えると4000~5000kmくらいだよな。ざっくりと年間で19000円ほどガソリン代が安くなるな。」


隆人兄ちゃんが素早く電卓を叩いた。


「ええ、そんなに?どうやって計算するの?」


「今の車での年間走行距離を4000kmとして、1リッターあたりの走行距離11.5kmで割って給油料を算出した。あとは軽自動車でも同じ計算をして、差し引きすれば答えが出る。ガソリン価格は1リッターあたり160円で計算した。」


「自動車税と合わせて47700円も違うんだね。」


何か車ですごく贅沢をしていた気分になってしまう。


「一年ごとの法定点検で1000円から3000円ほど、車検代では自賠責保険や印紙代にそれほどの差はないけど重量税で1万円は軽自動車の方が安い。あとは消耗品についても、普通車と軽自動車とでは差があるな。」


「車検代はそれくらいしか変わらないんだね。」


「あくまで確実に決まっている法定費用だけの話だけどな。実際には総額で三万くらいは差額か出るだろうね。あとは任意保険料で、軽自動車と普通自動車では年間23000円ほどの違いがあるともいわれている。こちらは保険会社や車種、加入条件でも変わるから実際には見積もりしてもらわないと正確な数字は出ないだろうな。」


「ということは、ざっくりとだけど年間で7万から8万くらい維持費に差があるってことだね。結構大きいなぁ。家賃と駐車場一ヶ月分がまるまる払えてしまうよ。」


「車はいかに金食い虫かってところを、忘れてはいけないからな。」


本当にそうだよね。






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