第15話 車購入の基本はリセールバリュー⑤

「比較するにあたって、エコカー減税とか環境性能割など、車種によって異なるものは今回含まない。一般的に必要となるランニングコスト面を重視した方がわかりやすいからな。イニシャルコスト─車の購入費用については、オプションや諸費用なども含めた総額予算を先に決める方がブレにくいだろう。」


「エコカー減税とか環境性能割って、耳にするけどよくわからないなぁ。」


テレビとか雑誌ではたまに聞く言葉だけど、実際どんなものなのか詳細は知らない。


「エコカー減税は、環境性能が高い車の重量税を優遇措置するものだな。似たようなものにグリーン化特例というものがあるが、こちらは自動車税や軽自動車税が対象だ。とはいっても、電気自動車やプラグインハイブリッド車、一部のガソリン車などに設けられた制度だ。対象車は少ないし、購入費用もそこそこ高いものが多いから今回はあまり気にしなくていい。環境性能割は以前の自動車取得税で、名前の通り環境性能によって非課税や減税措置が受けられるんだ。」


「それって、対象車種の方がお得ってことだよね?」


「その車が欲しいならそうだろうな。」


「どういうこと?」


「電気自動車やプラグインハイブリッドなど優遇措置を受けられる車は、燃費や環境に高い意識を持っている人が購入することが多い車だ。ただ、技術的にも普及率を考えてもまだまだコストが高い。毎日何十kmも車で通勤したり、環境のために身銭を切れる人向けって感じだな。もちろん、静かだしパワーもあるから、余裕があれば買いたい車ではある。ただ、経済的に無理をしてまで買う必要があるかは別の話だ。」


「電気自動車って補助金とかあるんだよね?」


「一例をあげると、車両本体価格が300万以上する電気軽自動車に、国と地方自治体合わせて120万ほどの補助金だったと思うぞ。しかも補助金の総予算が決まっているから納車が遅れたらアウトらしい。」


「ええ、補助金が出ると思って買ったら出なかったなんて怖いね。」


「それに加えて車種も限定されるから、目的と合致しなければ考える必要はないだろう。」


「そうだね。」


「まあ、いずれはプラグイン・ハイブリッドや電気自動車だけの世の中になるだろうけど、まだまだ充電する場所のインフラ整備も完全じゃないしな。そもそも駆動用バッテリーは5年から8年、もしくは走行距離が10万km程度の耐用と寿命が短い。実際には10年10万km以上問題なく使える車もあるが、メーカー的にはその程度が安全に乗れる基準だとうたってるわけだ。だから、中古車もそれなりの走行距離や年数を経たハイブリッドカーなどは安く流通している。駆動用バッテリーがダメになったら、交換に100万くらいかかることもあるらしいからな。」


「え、マジで!?」


「マジだ。だからハイブリッドカーなんかは、残価設定型ローンで買うのもひとつの選択肢だろうな。」


「ああ、そうか。定期的に新しい車に乗り換えられるから悪くはないのか。」


「まあ、事故や過走行になったら残価がひどいことになるから、追加負担なしで乗り換えってわけにはいかないけどな。あくまで無事故、規定値内の走行距離で使用した場合にメリットが出るってこと。」


「うわぁ。そう考えると、電気自動車やハイブリッドカーも善し悪しだね。」


「世界的な環境配慮としての商品ではあるな。車両本体価格が安くて燃費が良ければ価値観は高いが、それでもリセールバリューが高いうちに乗り換えを検討するべきだ。だからこそローンを組むにしても、36回までがベストなんだよ。」


「でも、毎月の負担は大きくなるよね?」


「その負担が大きくない額でローンを組むのがあたりまえなんだ。最善なのはローンなんて組まずに現金で買うことだな。ああ、最近はクレジットカード支払いが可能な場合もあるから、それでポイントを稼ぐ手はある。まあ、それが可能な販売店も少ないし、ポイント充当分を値引きで調整しているみたいだけどな。」


「何か、世知辛い世の中だね。」


「吊り広告みたいなものだな。お得感を演出して売上げをあげる。でも実際に安く売りすぎると会社が傾く。商売の常套手段というより、企業として生き残るための策だな。」






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