第10話 甘くないぞ、出産育児休暇⑩
「ああ、もうこんな時間か。」
いろいろと話をしている間に結構時間が経過していたようだ。
「どうする?これから先の話はさらにややこしく、時間もかかる。しっかりと理解してもらうなら、今日だけで終わる話でもないんだ。日を改めるか?」
「そうだね。」
確かに、出産育児休暇の話だけでも盛り沢山だった。
メモ書きしているとはいえ、帰ってからまとめておかないと後で見返した時に断片的にしか思い出せないだろう。
横にいる遥香に視線をやると、彼女も微かに笑いながら頷いていた。こういった表情の時はそろそろ切りあげようってことだ。
遥香もこれ以上は頭がパンクするって思っているのかもしれない。
「来週の予定はわかる?」
ふたりの雰囲気で察してくれたのか、隆人兄ちゃんが次回の予定について聞いてくれた。
残念なことに、二週間後にしかお互いの予定は合わなかった。しかし、隆人兄ちゃんはそれまでにいろいろと準備しておくよと言って、持参した保険証券などをコピーし始める。
「あ、そうそう。少し早いけど、市役所とかにいって出産育児に関するパンフレットをもらっておくと良いよ。急ぎではないから、近くに立ち寄った時でいい。先に話を聞いてからパンフレットを見れば、より理解しやすいはすだから。不明点や疑問点などがあれば、俺か役所の窓口に相談するとなお良しだな。」
「うん、わかった。そうするよ。」
「ああ、いちおう言っておくけど、来年度については多少制度に違いが出る可能性がある。その辺りは役所に聞いてもまだ決まっていませんと言われるかもしれない。」
「年度ごとにいろいろと変わるんだね。」
「国の決定がそのまま下りてきて施行されればいいんだけど、実際は地方自治体ごとに運用が異なる場合も多いからな。」
なるほど。
そう言われればそうだ。
「頻繁に市役所の窓口を訪ねた方がいいのかな?」
「ネットでホームページを閲覧するか、市民だよりや県民だよりに目を通せばいいと思うよ。」
「ああ、そういえば毎月ポストに入っているよね。いつもあまり読まずに捨ててた。」
「まあ、ホームページか窓口の方が詳細を知ることができるけど、意外とそういった情報が掲載されてるんだ。新しい制度なんかは特にね。」
「なるほど。今度からはしっかりと目を通すようにするよ。」
「一度、どこに何が書かれているかわかれば、すぐに探せるようになる。何せ、毎回似たようなフォーマットで情報掲載されているからな。」
これまでほとんど興味がなく、ポストに投函されていても目を通すことなんてなかった。
でも、よくよく考えてみれば、税金から予算を捻出した広報誌なんだよな。無料で配布されているのではなく、支払っている住民税の一部から作られているのだから、目を通すのは当たり前なのかもしれない。
まあ、最近ではネットで調べた方が詳しい情報が知れるし、紙媒体が不要な家庭への配布はやめて予算の節約をすればいいのにとも思う。
ああ、そういえば母さんはよく揚げ物の油取りとか、コンロ周りの油はね清掃に新聞紙や市民だよりを使っていたな。
最近は新聞の契約をやめたみたいだからキッチンペーパーを使っているみたいだけど、地方自治体の広報誌もちゃんとエコには貢献していたんだなと何となく思ってしまった。
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