戦士オリビアの憂鬱 ~最弱パーティーで何が悪い!ㅤ魔王を倒して世界を救う〈英雄〉になってみせます!~

夜月 透

第0話ㅤ若き戦士の冒険譚



「お前だけは、絶対に許さないッ……!!」



ㅤおどろおどろしい、魔空間の中。


ㅤ強大な敵──『魔王』を目の前にしても、若い女戦士、オリビアは志高く剣を構えた。


ㅤ双剣の柄を握り直し、魔王と距離を取りながら勢い良く駆け出していく。


ㅤ風に乗り、一つに束ねたオリーブ色の長髪をなびかせ、戦場を走り抜ける彼女は、まさに疾風のごとく。


ㅤ怒りと闘志をたぎらせた眼差しは、諸悪の根源である魔王の姿だけをとらえていた。

「……人間ごときが、小賢こざかしいッ!」


ㅤ魔王の周囲には、無数の魔法陣が空中に展開され、妖しく発光している。紫色の陣の前には、球状の魔光が列をして、宙に浮かんでいた。


ㅤ黒色の魔光は、激しい音を立ててスパークしている。雷を集めたような、そんな攻撃魔法を──魔王はオリビアに向けて、容赦ようしゃなく放つ。


ㅤ魔光弾が地面にぶつかる度に、激しい音を立てて爆発し、崩壊していく。



「くッ……!!」


ㅤ着弾する光を置き去りにしながら、オリビアは身をかわし、魔空間内を旋回せんかいした。


ㅤ時に低姿勢になり、方向転換した彼女は、今度は魔王に向かって真っ直ぐ駆け出していく……!!


ㅤそんなオリビアを狙って不敵に笑う魔王は、新たな魔光を作り出している。




ㅤその魔光弾が放たれる直前──白い光の矢が、魔王の腕や肩に深く突き刺さった。



「……ぐッ……!!」

ㅤ矢の飛んできた方向に、魔王は鋭い視線を向ける。


ㅤそこには、頭から血を流す一人の若い男が、地面に片膝をついていた。


「……ッ……」


ㅤ栗色の髪の男は満身創痍まんしんそういながらも、戦いを諦めていない瞳で魔王を見つめている。



ㅤ目の前にいる敵に対し、照準を合わせた姿勢をとっているが──


──その手には、


ㅤ男が空中で弓を引く動作をとると、そこに白い光が集まり、矢の様な形状になった。


ㅤ魔族の嫌いな『聖魔法』──相手が強大な敵であったとしても、威力は抜群である。


「貴様ァァア゛アッ!!ㅤ私の邪魔ばかりしおってッ……!!」


激昂げきこうする魔王が光の矢に気を取られているうちに、目の前まで迫っていたオリビアは高く飛び上がった。


ㅤそして、渾身の力を込め、剣を振り下ろす。



「はぁああああーッ!!!」


ㅤ若き戦士の咆哮ほうこうが響き渡った。


──お前の時代は、これで終わりだッ……!!



▼▼▼



ㅤ戦士オリビアは、個性的な仲間たちと出会い、強く成長しながら進む。


ㅤ時に助け合い、時にふざけ合い( ? )


ㅤ絆を深めながら、縁を繋いでいく。



ㅤ魔王を倒し──英雄になるまでの冒険譚。


ㅤ今、ここに開幕!

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