第26話 さいしょからわかっていた

 ぼくは家に帰ってからスマホで、AIに聞いてみた。瀬々さんがいったように、マンガとかで、映画とかで、急に主人公の男の子を助けるために、どこからともなく現れ、なんとなく世界のすべてを知っている感じで、主人公をみちびく女の子のことを、マジカル・ガールというのかと。

 AIは、こうこたえた。『そういう呼び方きいたことがありません。ですが、そういう役目を果たす女の子は、ミステリアスヒロインと呼ばれることがあります』

 ミステリアスヒロイン。

 マジカル・ガールとは呼ばない。

 マジカル・ガールは、瀬々さん思いこみ。かんちがいがつくったのかもしてない。

 いやでも、ぼくはどこかで、ちょっとだけさいしょからわかっていた。きっと、ちがうだろう。

 でも、それでもよかった。あのときの、瀬々さんの言葉にはエネルギーはあったし、たとえ、この世界の真実とちがっても、感じたエネルギーはあったし。

 ぼくは心の底からそう思い、家を出た。

森ノ木図書館へ向かう。

 風が吹いていた。森ノ木図書館のたてもののまわりを囲うように生えていた木々の葉が、ゆれ、ふれあって、音がなる。

 それも、ぼくの知る図書館の音のひとつだった。

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