第18話 宇賀くん
中学校から帰り道は、宇賀くんとならんで歩いた。
ふたりとも部活には入っていない。
歩きながら宇賀くんは、やっぱり、今見ているゾンビのドラマについて話していた。彼いわく、そのドラマは、いままさに最終シーズンに入り、まもなく最終回をむかえるらしい。シリーズじたいは、十年前にはじまったのだという。
いまのぼくたちが十四歳だから、ぼくたちが四歳の頃に、ドラマは開始されたのか。
ということは、そのドラマの登場人物たちは、ぼくたちの人生の半分以上の時間、ゾンビと、たたかっている。
と、そんなことをかんがえたけど、宇賀くんには話さなかった。彼は、ゾンビの動きについて、熱く語っている、しあわせそうに話している。ぼくは彼のしあわせを、くずさないように、話をきいた
別れ道まで来て、宇賀くんとは、そこでわかれた。またあした、のあいさつのかわりに「今日も家にかえってゾンビドラマを見るの」と聞いた。
彼は「ううん、ゾンビのイラストを描く練習をする」とこたえた。「ゾンビの意外な一面をとらえて、絵に描きたい」
想像していなかったこたえだった。
ぼくはひとり、家へ向かって歩きながら、かんがえていた。今日もシマさんと会う約束がある。彼女のいう、図書館の最終回に付き合うためだった。もちろん、いまだにピンときていない、図書館の最終回とは、いったい。
でも、今日はこころに決めたことがある。シマさんに図書館の最終回なんて、よくわからないことを目指さないで、森ノ図書館がなくならなくて済む方法をかんがえようよ、と、いってみよう
そんな方法は、まったく、おもいつけてない。でも、それがぼくの中で、ランキング一位の願いだった。もしも、森ノ木図書館がなくならずにすめば、すべての問題はなかったことになる。
そう思いながら家の近くまで来た。すると、森ノ木図書館の前に、小さなトラックがとまっていた。ぼくが通りかかるとき、トラックは丁度、行ってしまった。
わるい予感がした。
そして、わるい予感はあたった。
鞄を置き、図書館へいってみると、シマさんが入り口のベンチに座っていた。今日も隣町の中学校の学生服姿だった。
授業が終わってから、すぐ来たのか、よくみると、自転車置き場に、自転車もある。
「こんにちは、シマさん」
ぼくがあいさつした。
すると、シマさんはいった。
「はんぶんもってゆかれた」
「はんぶん」
「あ、おくればせながら、こんにちは、三日村くん」
シマさんは、どくとくな時間差で、ちゃんと、あいさつをしてきた。
そしてまたいった。
「はんぶんもってゆかれた」
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