第15話 彼からは逃れられない

 お茶を持って2階に向かっていると、急いで精霊が私を呼びにきた。

 すぐに部屋に戻ると、レイヴンが苦しそうにしていた。

 何が起こったのか確認しても、精霊たちはわからないの一点張り。


 治癒魔法をかけても反応がないということは、怪我をしているわけでもない。

 声をかけると反応はあるものの、必死に助けを求める声と私の名前を呼んでいた。


 はじめは冗談かと思ったが、意識を失ったのを見ると明らかに演じているわけではないようだ。


「私一人じゃ運べないわよね」


 手を持って引っ張ってみるが、全く動く気配はない。


『ひっぱる?』

『てつだうよ?』


 精霊たちも手伝って引っ張ってくれるが、全く動かせられるような気がしない。

 それにレイヴンが手を放してくれないから、私も移動することができないでいた。


「部屋から布団を取ってきてもらうことはできるかしら?」

『ふとんねー』

『いいよー』


 精霊たちに頼むと、布団がふわふわと宙に浮いていた。

 小さい体なのに力はしっかりあるのね。


 結局、私は今日もレイヴンから逃れられないのだろう。


 風邪を引かないように布団をかけると、どこか安心したのか優しい表情になっていく。

 その姿に少し笑ってしまう。


 レイヴンと過ごして思ったのは、見た目と中身がかなりかけ離れていたことだ。

 まるで小さい子どもを相手しているような感覚に近かった。

 それも記憶がなくなっているのと関係しているのだろうか。


『ねーねー、これがおちゃ?』


 そんな私たちを気にすることなく、精霊たちは淹れてきたばかりのお茶が気になっているのかジーッとお茶を見ていた。


「飲んでもいいわよ」


 レイヴンのために淹れてきたけど、今のこの状況じゃ飲むこともできないもんね。

 精霊はそのままカップに口をつけて、一口飲んでみる。


『にがー』

『こんなののめないよ?』


 どうやら精霊の味覚は子どもに近いようだ。

 苦味があると中々飲みにくいから仕方ないのだろう。

 ただ、次第に眠たくなってきたのか目を擦っている。


「一緒に寝る?」

『いいのー?』

『さっきダメっていってたよ』


 きっとレイヴンの頼みを断っていたからだろう。

 ただ、精霊ってどことなく人間とはかけ離れていて、動物に近い見た目をしているから抵抗感はない。

 それに今は二人っきりにされない方が良い気がする。


 チラッと私を見て大丈夫だと思ったのか、私とレイヴンにかけている布団の中に入ってきた。


『ポカポカだねー』

『ねむたいねー』


 そのまま精霊たちは寝てしまった。


「私も眠たくなってきたわね」 


 今日は物件も決めて、茶摘みもしたから私も疲れが出てしまった。

 結局動けないのであればここで休むしかないのだろう。


 私もそっと寄り添うように眠る。

 きっと明日も良いことがあるだろう。

 優しい表情で眠る彼を見ると、そんなふうに思えてきた。


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【あとがき】


『ねね、あいつらを驚かそうぜ!』

『またイタズラするとセレちゃんに怒られるよ?』

『☆をあげたらあいつも喜ぶだろ?』

『それもそうだけ……あっ……』

『バレちゃったな』


 どうやら精霊たちが☆を集めるために、イタズラをしているようだ。

 ぜひ、☆を集めるお手伝いをしてあげよう。

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