第12話 従業員をみつけた
まるで丸いパンがくっついて、手足が生えたような姿に愛らしさを感じる。
「お家の中が綺麗なのもあなたたちが掃除していたからよね?」
『ここはあそびばだもん!』
『キレイにしないとね』
精霊族は小さな姿をしており、普段は姿を隠して生活している。
精霊族はイタズラっ子と勘違いされているが、本来は物静かで見つけたほうが勝手に驚いているだけだ。
賢者もその一人で普通に生活していた精霊族に驚いて大変なことになっていた。
あの時は台所に出てくる黒い虫と勘違いしていたのもあるだろう。
「ひょっとしたらここに来た人たちを脅かしていたのかな?」
『だってひまなんだもん』
穏やかな性格の子の方が多いなか、目の前にいる精霊はどうやらイタズラ好きのようだ。
すぐに姿を見せたのも、性格と関係しているのだろう。
「こんなに良いところなのに、誰も住んでいないのはそういう理由があったのね」
実際に建物を見て気づいたが、建物と借りる値段が釣り合っていなかった。
破格な値段で借りられるのには、彼らが悪さをしていたのだろう。
「私たちはここにいないほうがいいかしら?」
『えー、もういなくなるの?』
『またつまらなくなっちゃうね……』
チラチラとこっちを見てくる精霊族に、どこか可哀想だと感じてしまう。
ただ、お店をやるとして、脅かしてしまう精霊族がいたらお客さんもリラックスはできない気がする。
「たしか精霊族って魔法が得意だったかしら?」
『まほう?』
『これのことかな?』
精霊は手から小さな火を出した。
他にも水を出したり、風が吹いたりなど器用に魔法を使っていた。
「毎日暇なら一緒にお店をやらないかしら?」
『おみせ?』
『なにをするの?』
私はここでお茶屋をしたくて、家を見にきたことを伝えた。
毎日暇ならお店を手伝ってもらうのもちょうど良いと思ったのだ。
それにお店にはお客さんを驚かせない場所があるからね。
『たのしそうだね』
『いつからやるの?』
どうやら二人とも協力してくれるようだ。
まずはお茶やお菓子の準備が必要になるため、少しは時間がかかるだろう。
それに肝心なお茶を作るところから始めないといけない。
「お店の準備も協力してもらうけどいいかな?」
『『はーい!』』
これでお店で働く人も確保できたようだ。
それにしてもレイヴンはいつまで静かに待っているのだろうか。
「レイヴン?」
「俺はここで働かせてくれないのか?」
「へっ!?」
「あいつらだけせこいぞ」
どうやら静かにしていたのは、自分だけ仲間外れにされたと思ったのだろう。
いつもと違う姿につい私も笑ってしまう。
あんな出来事があったのに、魔王国に来てから本当に笑うことが増えたような気がする。
色々な人に感謝しないといけない。
ただ、意地悪ばかりする彼にはこれで十分だろう。
「私を守ってくださるんじゃなかったかしら?」
私の言葉に子どものように目を輝かせるレイヴン。
本当の彼はどこか子どもっぽい人なんだろう。
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