第1話 誕生日プレゼント
164cmの長身でスタイル抜群でありながら、実年齢より幼く見られる整った顔立ち、愛らしい笑顔でファンからの人気もナンバー1だ。
そんな彼女に僕、
デビュー当時からの最古参と言ってもいいぐらい、彼女に認知されるレベルでイベントに参加。
「ハルくん、この前言ってた本読んだよ!凄い面白かったよ」と言ってもらえるくらいには長い期間彼女を推している。
でもいわゆるガチ恋勢かと言われればそれは違う、彼女にしてみたらファンのただ一人に過ぎないし、そもそもアイドルと付き合える確率なんてたかが知れている。非現実的な夢は抱かない主義なんだ。
今日は誕生日、昨日の握手会でおめでとうと、夏凜ちゃんに言ってもらえた幸福感がまだ持続している。
おかげで楽しくない学校生活もスムーズに行きそうだ。
「あの、吉崎陽人くんですよね……」
夕方、高校の校門を出てすぐ女性の声に呼び止められた。
「そうですけど……?」
サングラスに野球帽を被り、作業服のようなジャージを着ている女性、見るからに怪しすぎる。
「えっと、どこかでお会いしましたっけ?」
その怪しい女性は僕のその言葉に不満そうな顔をした。
「はぁ、やっぱりか、まあそうだよね~」
そう言って大きなため息をつく。あれ?よく見ると顔立ちは幼いような。意外と年は近いのだろうか。
でもこんな不審者知らないぞ、僕が困惑していると、彼女は決心したように、そっと僕の目の前でサングラスとマスクを外した。
ぱっちりとした二重まぶたの大きな瞳に鼻筋の通った顔立ち...僕の憧れ、北原夏凜その人だった。
「かりんち、ん、むぐっ」
「しっ声が大きい」
口を塞がれてむせてしまった。いやそんなことより、なんで彼女が、夏凜ちゃんがここにいるんだろう?
「ここは...いつ人が通るかわからないし...来て」
そう言って手招きをして近くの路地へと僕を誘った。
「昨日ぶりだね、ハルくん」
人気のない路地裏、夏凜ちゃんは少し申し訳なさげに笑う
「驚いたな、いや、まさかイベント以外で会えるとは思わなかったから、でもいいの?……プライベートでファンに会っても?」
僕は夢かと疑いながら恐る恐る聞いてみた。
「うん、そのことなんだけどね、ハルくん今日が誕生日なんでしょ!私、今日はオフだったからお祝いしたいなーって思って、まあホントは良くないんだろうけどね!」
夏凜ちゃんが僕の為に…現実味がなくて本人を目の前にしてもイマイチ信じられない。
あと今、結構大事なこと言ってた気がするんだけど、ホントに大丈夫?
「えーと、言いたいことはいろいろあるし、どこからツッコんだらいいかわかんないけど……それにしても、よく僕が通ってる高校がわかったね、しかも人数多いのに」
「えーっと、それはね、ハルくんのSNSの過去の投稿から大体目星を付けたんだよ! 4時間もかかっちゃったんだ~それに出て来るの遅かったから1時間半も待ってたよ~」
えっ…えーっと耳を疑う情報が入ってきた。夏凜ちゃん、それは特定班とか、ストーカーがよくやるヤツじゃないの。
「それはともかく、今日は私がハルくんとデートしてあげる、どう?私からのプレゼント」
ともかく、なのか? これは...何か裏がある? 壮大なドッキリ、いやそもそも夏凜ちゃんが特定班だったことが衝撃なんだけど。結構ヤバい娘だったの?
「どうかな?」
ニコニコ笑顔で聞いてくる夏凜ちゃん、彼女が結構ヤバい娘だという疑惑が浮上して驚きを隠せない...
いやいや、そんなことよりカワイイ!なぁ。もう目の前にすると作業服という現役アイドルが着る服装じゃないことも忘れそうになる。
天使が、天使はここにいた...。
「よ...よろしくお願いします」
断れるわけなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます