アイドルと付き合える訳ないとも言い切れない

太田 守

開幕前 握手会で


「実は明日誕生日なんだ」


「えっ、そうなんだ!おめでとう!私と同い年だったから17歳?」


彼女はぱっと、大きな瞳を見開いた。息を呑むような可愛らしさにドキッとしてしまう。何度会っても変わらないドキドキだ。


「そうそう、歳一緒、彼女もいないから祝ってくれる人もいないんだけどね」


誕生日に、推しのアイドルの握手会でそんなことを言っちゃうぐらいにモテないのは自虐ネタだ。

「じゃあ私が祝ってあげる!いい1年になりますように!」


彼女はいつもの様に笑顔で僕に接してくれて誕生日を祝ってくれた。



あんな娘と付き合えたらな...この時の僕はファンなら誰もが思うであろうことを考えた。


あの娘が彼女だったら毎日楽しいだろうけど、アイドルと付き合える割合なんてたかが知れている。

彼女からしてみれば有象無象の一つに過ぎない存在だ...と、この時の僕は思っていた。









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