第24話 殺人者からの求愛 ①

黒木涼はただ顔を整形しただけで、体は普通の女のままだった。しかし普段は完璧な男装をしており、ダボダボの服を着て性別がわからない様にしていた。

「このブスアマ、勝手に俺の部屋に入るなって何度言ったらわかるんだ!!!次入ったらマジで殺す、左手一本で殺してやる!!」

「だって悟さん、右手が不自由だから…………お掃除とかしてあげたいと思って。あと俺を殺すのは無理です。だってそっちは俺の本業だから」

そう言って黒木は素早く俺の背後に回り、俺の左手の親指を逆向きに折ろうとしていった。黒木の力は凄まじく、細い体は痩せているのではなく筋肉で脂肪が無いだけだった。

「いてぇだろうが、此の激ブス!!いいから部屋にすっこんでろ!!」

「ああっ、悟さんに罵倒されるの大好きっ!もっと言って、左指折ったらもっと言って!」

ギチギチと更に力が強くなり、俺はまじで悲鳴を上げそうになっていった。その背後から洸太郎が現れ、思いっきりグーで黒木の頭を殴りつけていった。

「もう店の開店時間ですので、ギャーギャー騒ぐのやめてもらえますか。あと店内には絶対に降りてこないで下さい。万が一降りて来たら、貴方を僕は本気で殺しますから」




「あの洸太郎って人、優しそうに見えて根はかなりヤバい人ですね。俺を見ても全くビビらないし、肝の据わり方が常人とは明らかに違う」

「当たり前だ、俺と一緒に何人あの世に送ってきたと思ってるんだ。っていうか、なんで俺の膝の上に勝手に座ってるんだ」

俺がソファーで休んでいると、勝手に黒木が俺の膝の上に飛び乗って来た。そして俺の体に抱き着いた瞬間、胸のあたりに柔らかい感触が当たるのがわかった。

「俺ね、学生時代はずっと陸上やってたんです。でも高校生になって、やたらオッパイがでかくなっちゃって。Gカップとか陰であだ名付けられて、勝手に盗撮とか毎日されまくりで」

黒木が徹底的に歪んだのは、高2の夏休みの事件がきっかけだった。塾の帰りに部活の先輩の男達に襲われ、集団レイプの被害に合ったという。

しかし証拠不十分で犯人の男達は退部になり、黒木は完全に泣き寝入りとなった。更に最悪な事に、黒木はその内の誰かの子を妊娠してしまっていた。

「俺、ODして死のうとしたんです。でも未遂に終わっちゃって、ガキは速攻で堕ろす事になって…………更に自殺未遂した事がクラスの噂話で広がって、俺はもう学校にもいられなくなったんです。

だから中退して、親の金盗んで家を飛び出した。そこからはもう、滅茶苦茶しまくりました」

何をしたのかはもう、俺は何も黒木には聞かなかった。黒木は俺の左手を掴み、自分の胸に強引に押し当てていった。




「男にはなれなかったけど、オッパイを小さくしたのは本当です。俺、自分が嫌いだから女しか殺さないんです。恨んでいるのは男なのに、殺したいのは絶対に女だけ」

「お前、普通に女として生きていけばいいじゃん。顔も整形だけどそこそこ可愛いし、怪力以外は別に普通なんじゃね?」

「悟さんが俺と付き合ってくれるなら………………悟さんこそ、普通に男として生きていけばいいじゃないですか」

俺はそういう黒木の顔をじっと見つめた。俺はもう心因性機能障害をとっくに克服している。この女を抱こうと思えば、今からでもいくらでも出来る体だった。

「なんで俺が殺人鬼と付き合わなきゃならねえんだよ。つうかペチャパイブス、そもそもお前なんか俺の好みじゃねえんだよ」

「ペチャパイじゃないです、まだDカップくらいはありますよ!下もちゃんと穴空いてますし。其れに俺プロですから、表向きは住所不定無職です!」

そう言って黒木は、いきなり俺の前でTシャツを1番上まで捲り上げていった。まあまあのものを見せられた俺は、そのまま黒木をソファーに押し倒していった。

「じゃあ今から一発やって、気持ち良かったらそのまま付き合うか?当然イマイチだったら、さっさと荷物まとめて消えて貰おうか」

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