第6話
夏海の場合2
私は雅史と付き合う気はないと言っておきながら、雅史の告白からは休みの日は、2人きりで出かけることが多くなった。
私は心の中で翔太に、雅史とは単なる幼馴染だから、恋人じゃないからと言い訳しながらも雅史と会う自分に喜びを感じていた。
いや、雅史と会うことが嬉しいんじゃない・・・、私と会った翌日、翔太を見る雅史の目が優越感に満ちるのを気付くと、私はゾクっとするのだ。私に選ばれることで喜ぶ雅史の目に・・・、幼い私は昏い悦びを感じる。
子供の頃からいつも一緒にいた翔太のことだ。
私達が2人で出会っていることには気付いているだろう。
あれほど恋人として付き合う気はないと言ったのに、雅史の態度からは私を彼女の様に扱う態度が滲みでている。
私の言った事を忘れて、私を・・いや、女を単なるステータスの一部のように扱う雅史に呆れながらも、雅史の目に悦ぶ私は、翔太の事を密かに想う。
最近では翔太の態度からも、私の事を仄かに想っているのが、分かるようになった。
翔太だって思春期の男の子だ。
手近にいる親しい女の子に、想いを寄せても間違いではない。
だけど、私には一見、雅史という彼氏(私にとっては彼氏ではないけど)がいるのだ。
あぁ!
翔太の目にから僅かに感じる雅史への嫉妬に、私は心の中でニンマリと嗤う。
2人の男に選ばれる私に、私の心はとても昏くて抗い難い悦びを感じる。
私達3人は、同じ高校に入ることができた。
私と雅史との関係は相変わらず翔太には秘密だ。
多分、翔太は気付いてはいて、私達が付き合っていると思っているだろうけど。
私はまだ雅史には心を赦してはいないが、ボディタッチは増やしていた。
雅史の身体に触れると、雅史の目が優越感に満ちるのを感じるのだ。
翔太に対してだけではない。
自分で云うのはなんだけど、私は中学生の頃から、周りの女子に比較して綺麗な存在だったと思う。
それが高校生になる頃には、更にその差が大きくなり、私は周りに比べて綺麗な女性だった。
雅史はそんな私を彼女のように扱うのだ。
彼が優越感に浸るのは当たり前だろう。
彼は翔太だけではなく、周囲の男性に対して優越感を持つようになった。
そんな彼を見る度に、強くて昏い悦びを感じて、私はボディタッチを増やすのだ。
だけど、私は忘れてはいない。
そう・・・、私は翔太のことが好きなのだ。
雅史とは休みの日を2人きりで出かけて、過ごすことが増えたが、雅史と一緒に過ごすたびに翔太ことが好きになる。
雅史と出かけたら、訪れる先々で雅史の幼さが分かり、私は女として、雅史には魅力感じなくなる。
雅史の店員に対する態度や私を彼女として扱うことで、周囲のカップルに対する優越感に浸るのも魅力を感じない。
だけど、あの雅史の目だ。
あの雅史の欲望と優越感に浸る目を見ると私は彼以上に優越感に浸り昏い悦びを感じるのだ!
私はその悦びに抗い、翔太を想う、だけど、翔太は高校に入ると私と雅史に気を使い3人で出かけようと誘っても断ることが多くなる。
その翔太の態度を見て、また雅史は優越感に浸るのだけど、私は悦びを感じるよりも危機感を感じる。
このままだと、翔太は私から離れて行ってしまう。
私は別のクラスの友達を上手く利用して、翔太にそれとなく彼女ができていないか、私を彼女と思っているかを探ってもらっていた。
私は、周囲には雅史とは付き合ってはいなくて、仲の良い幼馴染アピールをしていた。
私は、周囲には雅史と付き合っていると思われたくなくて、翔太を誘って、3人トリオでいたかったのだけど、翔太が私達を気遣って、2人きりにしたがっていた。
翔太!
違うのよ!
私はあなたのことが好きなの!
ただ、雅史の優越感に浸る目やあなたに対する態度を見ると、私は選ばれた女として何物にも代えがたく抗い難い、昏い悦びに満ち溢れるのだ。
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