第2話

僕は夏海という彼女ができたことで大学時代の最後で充実した生活を送ることができた。


もちろん、これまでも充実はしていたけどね。


僕は公務員試験を受け、無事に合格、県職員として勤務することになった。


夏海も有名な化粧品メーカーに就職が決まり、広報担当として勤務することになった。


お互いに忙しい中で、デートをして仲を深めていった。


だけど、僕は雅史とは疎遠になっており、たまにメールでお互いの近況を送り合うだけになっていた。


その中で、雅史からのメールに彼女ができたとの連絡があって、今度、お互いにダブルデートか食事会でもしようかという話があり、夏海にも言うと、大学時代には雅史とは会っていないから、夏海も懐かしく思ったのか、


「良いね。久しぶりに雅史とも会いたいし、彼女さんには雅史のカッコ悪いとこ教えておかないと。」


なんて言って、ニシシと笑っていた。


雅史にダブルデートや食事会の件を了承したら、雅史からは


「公務員と有名企業のお二人に時間を合わせるから、都合の良い日時を教えてくれないか?」


と言ってきたので、こちらの都合の良い日時を伝えると、今度の金曜日の夜にお互いの中間地点にある駅前の居酒屋で会って食事会をすることになった。


僕は金曜日は急いで仕事を終わらせて、予定より少し早く夏海との待ち合わせ場所に着いた。


僕が待っていると夏海もやってきて、


「遅れてごめんね。」


夏海が謝ってくるけど、僕は笑顔で、


「まだ待ち合わせ時間になっていないし、僕も今来たとこだから大丈夫だよ。」


夏海とはよく会っているけど、いつもと違う場所で待ち合わせをすると少し緊張するし、今日の夏海はしっかりと化粧をしているみたいだから、いつもより綺麗に感じられる。


服装も最近の僕とのデートよりも、おしゃれな感じだな。


ひょっとして、雅史の彼女さんに会うから、ちゃんとした恰好になっているのかな?


女性同士だから、こう、張り合うみたいな感じとか、あるかもしれないね。


僕達は雅史との食事会の場所である居酒屋に行くと、雅史が女性と待っていて、僕達が居酒屋に入ると手を挙げて位置を教えてくれた。


雅史は高校時代よりも身体付きもしっかりしていて、ワイルドさを増していた。


ちょっと伸ばした髭もよく似合っていて、ワイルドなイケメンになっていた。


「雅史、久しぶりだね。」

「ほんと、イケメンになっているわね!」

僕と夏海が声をかけると、


「いやいや、そんなことはないさ。お前達もイケメンと美人になっているじゃないか。あぁ、こちらにいる女性が俺の彼女で下北優子しもきたゆうこさんだ。」


雅史の横にいる大人しそうで優しい風貌の女性が会釈をしてくれた。


「下北優子です。雅史さんからはお二人の事はよく聞いています。3人は幼馴染で仲が良いんですよね。私にはそんな幼馴染はいないから羨ましいです。」


僕は下北さんに


「僕は小さな頃から引っ込み思案だったから、2人に引っ張ってもらって、色々手伝ってもらったりしていたから2人には感謝していますよ。」


そう言うと、雅史が


「ほんと、ほんと、いつも俺と夏海が翔太を連れて回っていたよな。」


と冗談っぽく言ってくれたので場が和んできた。


僕は久しぶりに直接雅史と会うので嬉しくなり、あんまり飲めないのにお酒を飲んでしまい眠くなってしまった。


ふと、前を見ると下北さんもお酒は強くないみたいなのだろう。

僕と同じような感じで、時折、頭がガクッとなり、そのショックで覚醒するという感じだった。


僕も疲れていたので、少し休憩をする感じで頭を下げて寝ている体を装って、夏海を見ると、しきりにスマホを触っている。


何か仕事かなと思っていると、夏海は雅史の方をじっと見つめているみたいだ。


僕は眠ったフリをしながら、雅史の方を見ると雅史も仕事なのかスマホを触って何かメッセージを打ったりしていたと思ったら夏海をじっと見つめたりと忙しそうにしていた。


僕は、今、起きたふりをして、欠伸をした。

すると夏海と雅史は慌ててスマホを触るのを止めて、


「翔太、大丈夫かな?久しぶりに飲んだから眠くなった?」


と夏海が心配してくれた。


「いや、せっかくの食事会なのにごめんね。寝ていたよ。下北さんも大丈夫かな?かなり眠そうだけど。」


すると雅史が、


「そうだな。優子も眠そうだし、今日はこの辺でお開きにしようか。また今度連絡するから、今度は休みの日にでもダブルデートしようぜ。」


僕と夏海は雅史達と居酒屋の入口で別れて、手を繋ぎながら駅に向かう。


「今日はごめんね。久しぶりに雅史に会うからお酒を飲み過ぎちゃったよ。」


夏海は首を横にふり、


「ううん。大丈夫よ。最近、翔太も忙しかったからね。眠くなってもしょうがないよ。」


そう言って、ニッコリ笑ってくれた。

そんなことを話していると、夏海のスマホにメッセージの着信があったみたいでスマホが鳴動した。


「あれ?何か仕事の連絡?」


僕が聞くと、夏海は、


「うん。さっきからね。週明けの月曜に会議が入ったみたいだからその確認かな。心配しなくて大丈夫だよ。」


そう言っていたが、普段なら僕と手を繋いで歩いていたら、よほどの急ぎの仕事でないとメッセージには返信しないのだけど、今日はすぐに手を離してメッセージに返信していたから、口ではああ言っていたけど、かなりの急ぎ仕事の連絡なのだろう。


僕は夏海を家の前まで送り、


「お休み。また連絡するね。」


というまで、夏海はうわの空で僕の話を聞いており、スマホでのメッセージ返信が忙しいみたいだった。

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