僕の事を好きだと言った君は・・・
鍛冶屋 優雨
第1話
1人は女の子で
翔太は小学生の頃から夏海に好意を寄せていたけど、身体も大きくリーダータイプの雅史の方が夏海には似合っていると思って、自分の気持ちは抑え込んでいた。
雅史と夏海も仲良くしていて、中学生になると、たまに翔太抜きの2人だけで遊んでいたので、翔太もなんとなく2人は付き合っているんだろうな、なんて漠然と思っていた。
3人とも同じ地元の高校に進み、周囲の同級生からは幼馴染の3人トリオなんて呼ばれていた。
翔太は別のクラスの同級生からは夏海と付き合っているの?
なんて聞かれることもあったけど、(心は痛かったけど)
「いや、横須賀さんは僕なんかより雅史の方が好きだと思うよ。」
なんて応えていた。
その頃は夏海も雅史も仲良くして2人きりで会っていたのを翔太は知っていたけど、2人は、3人トリオの関係を崩したくないのか、翔太を遊びに誘うことが多く、翔太としては幼馴染カップルを邪魔するようで心苦しいので断りを入れることもあるのだが、夏海からはしつこく誘われることが多くあった。
翔太も仄かに夏海に恋心を抱いていたので、夏海に誘われるとつい、一緒に遊んでしまうので、雅史には申し訳ないなと思っていたので、ときには断りを入れて2人で遊んでもらうこともあった。
3人は高校を卒業後、翔太と夏海は大学へ進学、雅史は親の仕事を継ぐために親が経営する酒屋で働くようになる。
卒業の進路は違っても3人は仲良くしており、時間があればよく遊んでいた。
大学では翔太と夏海は2人で行動しており、周囲からは幼馴染カップルなんて呼ばれていたけど、翔太は、
「横須賀さんは別の幼馴染が恋人としているからね。」
なんて言っていた。
これは翔太の思い込みではなく、実際に、夏海と雅史が翔太には内緒で会って遊んでおり、ある時、翔太が本屋に行こうとしていたら、前方に夏海と雅史の2人が腕を組んで歩いているのをみたことがあったのだ。
後ろ姿だけだが、長い付き合いの翔太が、2人を見間違えることはない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
だから、僕は今、驚いているのだ。
だって、夏海が・・・、雅史の彼女が僕に告白しているからだ。
時間を少し戻すと、
今日は、金曜日、大学の講義が終わって、夏海と僕の2人で帰るために構内を歩いていると、夏海が、
「翔太、ちょっと良いかな?」
なんて聞いてくる。
いつも元気のいい彼女にしては、ちょっとしおらしく女の子っぽいけれど、何かお願いでもあるのだろうか?
「どうしたの?何かあった?」
夏海は少しモジモジしていて、
「ちょっとこっちにきて。」
と言って僕の手を引っ張って大学構内の人気のない方に僕を誘導していった。
そして、周囲に人がいないのを確認すると、
「えっと、小さな頃から翔太のことが好きだったの、私と付き合ってくれないかな?」
なんて告白してきた。
僕は夏海の告白に内心は喜んでいたけど、夏海への気持ちを押し殺して応える。
「夏海は雅史と付き合っているでしょ?僕は雅史を裏切れないよ。だから、ごめん。」
夏海は自分が振られるとは思っていなかったのか、ショックを受けた顔をしていた。
「なんで!私は雅史とは何もないよ!」
夏海のあまりの剣幕に、僕は逆に冷静になり、
「えっと、中学の頃から僕抜きで遊んでいたことは知っているよ。さすがの僕でも、何ともない関係には思えないよ。」
僕は2人の後を付けていると思われたくなかったので、この前、2人が腕を組んで歩いているのを見たよとは言わなかった。
「雅史とはほんとになんでもないからね!」
僕はここまで夏海がしつこいのには理由があって、雅史と共謀して、僕にドッキリでも仕掛けるつもりだな。なんて思い始めた。
僕が喜んで
「ありがとう!僕も昔から、夏海のことが好きだったよ!」
なんて言ったら、何処からか雅史が出てくるか、もしくは、雅史から電話がかかってきて、
「俺の彼女と何、付き合おうとしてんだよ!」
なんて言って、僕をからかおうとしているのだろう。
この2人、高校時代は仲が良すぎてたまに度が過ぎることがあった。
それに、夏海が僕に過剰なスキンシップをしてきたのを雅史がじっと見ていることもあったからね。
「はいはい、分かった、分かった。もう遅いから帰るよ。」
僕は高校の時よりは、割り切っており、いつまでも恋心を引きずることはなかった。
「ちょっと!私の告白は!」
なんて、夏海が言っているが、僕は気にせず、
「はいはい、雅史によろしくね〜!」
なんて流して、後ろで唸っている夏海に、
「ほら、いつまで唸っているの?帰るよ。」
なんて言うと、夏海は大人しく僕についてくるのだった。
それからだろうか、夏海は露骨に雅史と距離を空けるようになった。
夏海は、週末には、僕を遊びに誘うことがあるのだけど、今まではそこに雅史もいた。
だけど、あの告白を機に雅史がいないことが多くなり、いつしか、2人だけで遊ぶようになった。
夏海からのスキンシップも多くなり、ボディタッチだけでなく、腕も組んでくるようになってきた。
もちろん、僕は腕を組むのは拒みボディタッチもさりげなく躱すようにしていた。
僕は最近、雅史と会わなくなってきたので、電話で近況を話すようになったのだけど、雅史からも夏海の話は出なくなってきた。
しかも、雅史からは、最近、お客さんで気になっている女性がおり、今度、思い切って告白しようかなんて言ってきた。
僕は驚いて、
「雅史は夏海と付き合っているのに駄目だぞ!夏海を泣かせんなよ!」
なんていうと、
「おいおい、お前もかよ!俺と夏海は何にもねぇよ。」
なんて笑いながら、僕に話す。
雅史は昔から夏海と付き合っていると思われていて、誰ともつき合えなかったなんて愚痴を言い始めた。
あれ?僕がこの前見た後ろ姿はなんだったのだろうか?僕の見間違えなのだろうか?
2人が言うのだから見間違えなんだろうなと思い始めた。
それからも週末に夏海の誘いはあったけど、そこに雅史はおらず2人だけで遊ぶようになった。
そして、僕と夏海は大学の卒業前には就職先も決まり、ささやかながら祝宴を開くことになった。
もちろん、そこには雅史はおらず2人だけで居酒屋に入り、2人ともお酒を飲みながら、話をしていた。
お酒も入っていたから、思い出話も長くなり、終電も過ぎてしまったので、僕はネットカフェでも泊まろかなと思っていた。
夏海はどうすると聴こうとして、彼女の顔を見ると、夏海が真剣な表情で僕を見つめていた。
「翔太、少し前にした、告白を覚えている?あの時、翔太は雅史に悪いからって言っていたけど、私は雅史とは何ともないからね。翔太が好きなんだ。だから、もう一度、告白しても良いかな?」
夏海はそこで一呼吸おき、
「私は子供の頃から翔太が好きだった。私と付き合ってくれないかな?」
僕は夏海の真剣な顔を見ると、昔、抱いた恋心が呼び戻ってきた。
「うん。ありがとう。僕は夏海が雅史と付き合っていると思っていたから、気持ちを抑えていたけど、本当は夏海のことが大好きだった。こちらこそよろしくお願いします。」
僕の言葉を聞いて夏海は思いっきり僕に抱きついてきて、夏海は僕にキスをしてきた。
そして僕は夏海に誘われるまま、ホテルに入り、2人きりで夜を過ごした。
好きだった夏海と付き合うことができ、浮かれていた僕は、夏海がその手のホテルの入り方や避妊具の装着方法に躊躇や戸惑いがなかったことには気付かなかった。
僕は今まで性行為をしたことはなかったし、夏海も初めての性行為だと思っていたから、血が出て痛がるかなと思っていたけど、夏海があまり痛がる様子がないので尋ねてみたら、夏海から
「女の子が全員、初めてだからって血が出て、痛がるわけではないよ。」
と女性である夏海から言われると女性の身体に詳しくはない僕は、そうなのかと思ったのだった。
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