第34話 そういうことは家でやってくんないかな?
「日影っち! 今日さ今日さ! さっき日向と紗奈と話してたんだけどさ、体育祭の打ち上げカラオケ行かないかって! もちろん日影っちも行くよね?」
僕は体育祭閉会式が終わって、椅子を持って教室に戻っているところ、花輪さんにカラオケ? に誘われた。
ところでカラオケってなんだろう……?
「あ、あの……花輪さん、カラオケって何? 唐揚げ屋さんか何か?」
「ええ!? 日影っち! カラオケはカラオケだよ日影っち!!」
あのね、花輪さん……カラオケというものがわからないからカラオケだよって言われても困るよ
「日影くんもしかしてカラオケ知らないのかい?」
「カラオケ……確か聞いたことはあるかもだけど、何とはわからない」
「カラオケはね、個室を借りて、歌を歌ったり時には競ったり、二人でデュエットしたりするところだよ!!」
僕と花輪さんが話しているところに、千秋さんが椅子を2枚重ねながらやって来て説明してくれた。
「あ、そのことをカラオケっていうんだ!」
「日陰っち! やっとわかった! えへへ、あたちの説明がうまかったからかな!!」
「いや、京香……君は何もやってないだろ……」
僕はカラオケというものをやっと理解する。
理解したと言っても、カラオケというものは前々から知っていてカラオケという名称というものだけ知らなかった……ってよりは忘れてたという方が正しい
「千秋さん……その椅子待とうか? 2個持ってたら重いでしょ?」
「アハハ……日影くん、それには及ばないよ! 気持ちだけありがたく受け取っておくよ! それに今度は君が重くなっちゃうよ、君やっぱり日向の言っていた通り優しいんだね!」
千秋さんはそう言って天使の笑みを漏らした。
今日の体育祭は赤組の勝利で終わった、閉会式が終わって朝比奈さんにそのことを伝えると朝比奈さんは右足が痛いのにも関わらず飛んで喜んでいた。
そして、僕たちは学校帰りそのままカラオケへと向かうことになった。
「なんか〜俺たちが学校帰りに全員揃ってどこか行くことこれが初めてじゃね?」
「確かにそうだね! いつもはあたちたち部活とかあってなかなかこのメンバーで遊ぶ機会ないもんね!」
僕は、いつものメンバーでカラオケに行く際、朝比奈さんが右足痛そうにしながら歩いているため心配しつつ歩いていた。
「朝比奈さん大丈夫? 右足」
「……うん、だいぶ痛みが引いて楽になったけどまだ痛いみたい……」
あんなにド派手に転んで、痛くないわけがない、朝比奈さんはその状態でも走って花輪さんに繋いだんだから本当にすごいと思う。
「……朝比奈さん、痛いのはわかったけど、なんで僕から離れていくの?」
「……え? ぁの、その……えっと」
朝比奈さんは急にもじもじし始める。
僕なんか朝比奈さんに嫌われることでもしたかな?
もしかして僕朝比奈さんに嫌われちゃったか!?
だとしたら僕は今日大量の涙で枕を濡らすことになる。
「……私もよくわかんないのよ……なんかその、いつもと違うっていうか……影密くんがいつもと違うというか……はたまた私がいつもと違うというか」
朝比奈さんはよかわかんない事を言ってるけど、とりあえず嫌われてなさそうでよかった……
そして、カラオケに到着した。
カラオケに入ると受付にて、朝比奈さんが慣れた手つきで個室を予約して、僕たちはそこに入った。
「さーてと! 今日は歌うぞ〜!」
「イェーイイェーイ!!」
部屋に入ると、大翔と花輪さんがうねりをあげる。
それからというもの、大翔や花輪さんや千秋さんがが気持ちよさそうに歌を披露して、僕はマラカス片手にそんな3人を応援した。
「次は私だ!! 恋するラブソフトクリーム!」
朝比奈さんはマイクを取って、ベンチから立ち上がる。
あれ? この歌……確か、あの幼馴染ドミノっていうラブコメアニメの主題歌だった気が……
それから朝比奈さんは恋するラブソフトクリームをノリノリで歌った。
朝比奈さんは歌がうまくて、それこそ聴いている人を惚れ惚れさせてしまうほどだった。
「ふゅふゅ〜!!」
朝比奈さんが歌い終わると、花輪さんがでかい声で手を叩き始めた。
「やっぱり歌うの楽しいね! 次どうする? せっかくだから影密くんも何か歌わない?」
僕は朝比奈さんに提案されたが、首を高速で左右に振る。
何せ僕は人前で何かを歌ったことがないからだ……それに自分で歌上手いと思ったことないし、どうせ下手だと思うし……
僕はなんとかしてこの場を乗り切ろうとしたが、案の定朝比奈さんが強引にマイクを渡して来た。
「……ぇ? 本当にやるの?」
「うん!! 影密くん、せっかくだから私とデュエットだ!! 曲はこれだよ!!」
朝比奈さんが入れた曲は、今期のラブコメでめちゃくちゃ人気を誇る、オンラインゲームがきっかけで学校一の美少女と、学校一の頭脳の持ち主が、同棲を始めるというドタバタラブコメディーだ。
「……影密くんは、下の青い文字で表示されているところを歌って! 私は上に表示されている赤い文字で表示されているところを歌うから!!」
この歌は、主人公とヒロインの声優の人が二人で歌う、このアニメのオープニングだ。
それから僕と朝比奈さんはデュエットというものをした。
「わたしたちちょっとジュース取ってくる!」
「俺はトイレ行ってくるわ!!」
歌を歌い終わると、千秋さんたちと大翔がカラオケの部屋を出て行って、今この部屋には僕と朝比奈さん二人だけになってしまった。
「影密くん、うまかったじゃん! 歌! さて、私もちょっと疲れたから座ろうかな! ってうわ!?!?」
朝比奈さんが部屋にあるソファの僕の隣側に座ろうとしたら、右足を捻りそうになり体制を崩して、ちょうどソファに座っていた僕に覆い被さる形で、倒れ込んだ。
「……あ、朝比奈さん……」
「か、影密くん……かげ」
僕は状況を理解した、僕は今朝比奈さんにソファに押し倒されたのだ
いきなりのことで動揺していると、朝比奈さんと僕は至近距離で見つめ合う。
朝比奈さん肌ツルツルだし、まつ毛長くて綺麗だな……
「ゴホン! 日向……日影くん……二人ともそういうことは家でやって欲しいかな……一応わたしたちもいるからさ……」
すると、ドアの方から声が聞こえて朝比奈さんは慌てた様子で飛び上がる。
「ち、違!? 違うよ!! あれは体制崩してこうなって……、その、事故だから!!」
「わ、わかったから日向……そんなに勢いよく抱き付かないで……」
朝比奈さんはものすごい勢いで千秋さんに飛びついて弁明をした。
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