第32話 体育祭2 ゲームのキーホルダー

「何言ってるの? 影密くん……」

「いや、その……この紙に気になる異性って書いてあったから」


 僕は朝比奈さんに拾ったお題の紙を見せた。

 すると、朝比奈さんは顔を真っ赤に染め上げる。


「ち、違うって! そ、そそ……その、紙には確かに気になる異性って書いてあるけど、その……影密くんは友達として気になるって意味で……断じて好きでは……ないと思う……」


 もう! 僕のバカバカ! 一瞬でも朝比奈さんが僕のこと好きなんじゃないかって疑ってしまった、そんなに万が一つあってもあるわけないじゃないか

 相手は学校一の美少女だぞ、そんな彼女が僕みたいなのを好きになるはずがないじゃないか……


「日影次男子100メートルだってよ!」

「え? もう100メートルなの?」


 僕がテントに戻ってゆったりと休憩をしていたら大翔に100メートルの呼びかけをされた。


「うぅ……ちょっとお腹痛くなってきたかも」

「大丈夫か? 日影? まあ、ゆったりやればいいんだ! 別にお前が最下位取ろうが1位取ろうが点数には対して関係しないんだから、もっと気楽に行こうぜ!」

「わ、わかった……」


 僕がテントを出て100メートルの集合会場に向かう際に朝比奈さんのことを探したけど、彼女は見つからなかった。


 そして、100メートルが開始して、もうすぐ僕の番がやってこようとしていた。

 僕あのスタートする時のピストルの音苦手なんだよな……


 小学生まで耳塞いでたもん……いや、中学2年生までか


 そして、一緒に走る他の組のライバルとスタートするために一斉に並ぶ。

 くわわわ……僕毎回緊張するんだよな……

 ピストルの音に……


「よーい! スタート!!」


 僕は苦手なスターターピストルの音を聞いた後瞬時に100メートル先のゴールに向かって走り始めた。


 結果は最下位だったけど、僕にしては良くやった方だと自分では思う……

 意外に走れると思ったら、この前のリレーの練習

 あの後も何回か練習に参加させられたけど、それのおかげもあるかもしれない、今度、朝比奈さんたちに感謝しないと


「フレ〜フレ〜赤組〜イエイエイエーイ!!」


 僕がテントに戻ってくると、テントの近くで赤の鉢巻をつけたチアガールの服装をした女の子たちがポンポンを持って赤組を応援していた。


「……影密くんナイスファイトだったね!」

「え? うん、ありがとうございます……って朝比奈さんか!?」  


 僕はチアガールの一人に話しかけられて、一瞬ドキッとするが、その正体が朝比奈さんだと気づいて安堵した。

 朝比奈さんさっきいないと思ったらチアガールの服装に着替えていたのか


「えへへ! サプライズ〜! 私さっき影密くんの100メートル走見てたよ〜! 頑張ってたね!」

「あ、ありがとう……あ、朝比奈さんのおかけだよ」


 僕は朝比奈さんのチアガール姿に思わずドキドキしてしまった。


「私のおかげ? どゆことどゆこと?」

「えーとね、この前朝比奈さんたちと練習したじゃん……そのおかげで僕思ったよりも走ることができたから」


「あーーなんだ! そういうことか! そういうことならお礼はいらないよ! 私だって練習に景密くんがいてくれてめちゃくちゃ嬉しかったんだからね」

「わ、わかった……でもありがとう」


 その後パン食い競争に綱引き、障害物競走など色々な種目が行われた。

 そして、応援合戦が始まった。


「フレフレ! 赤組〜!!」

「行け行け!! 白組〜!!」

「勝つぞ、勝つぞー!! 黄組!!」


 各組が熾烈を極める戦いをする中、朝比奈さんは人一倍目立っていた。

 朝比奈さんダンスめちゃくちゃ上手いな……


 そして、目立っていると言えば、もう一人……

 朝比奈さんに負けないぞという気迫が聞こえてくる雅也さんがめちゃくちゃキレのあるダンスを披露していた。


 体育祭はこれにてお昼休憩になった。

 僕たちは一旦教室に戻って、お昼を食べることに


「きゃーかっこいい〜! 千秋さん!」

「千秋さん血液型なに型なんですか?」


「ふふ! A型だよ」


「きゃーーーー!!!」


 体育祭で相当目立ったのか、教室の前では千秋さんが他のクラスの女子に質問攻めにされていた。


「紗奈めちゃくちゃモテてるね」

「千秋さん体育祭で何かあったの?」


 僕は一緒にお昼を食べている、朝比奈さんに千秋さんが今こんなになっている理由を聞いた。


「ほら、紗奈前々からかっこいいじゃん! それこそ王子様見たいに、さっきの応援合戦でさ、キレのある踊りを披露して女の子たちを釘付けにしていたみたいなの……」

「え? 千秋さん応援合戦出てたんだ」


「え? 影密くんだか見てたの? めちゃくちゃ紗奈目立ってたわよ!!」

「いや、その……見てなかったというか……」


 僕は君をずーと見てたから……なんてこの世界がいきなりダンジョンに満ちても言えない


「大翔っち! 紗奈めちゃくちゃモテててるね!」

「おい! 何か俺を哀れんである目で肩を叩くんじゃない、俺は別にモテたいなんて思っちゃいねえ」


 千秋さんがモテてる関係で、おい、学年一の美少年はどうした? って感じの目線を送る花輪さんに大翔はちょっとキレ気味で返した。

 

 そして、体育祭午後の部が開幕した。

 午後はまず騎馬戦と玉入れが行なわれて、どれも白熱した戦いが繰り広げられた。


「次はいよいよ組対抗リレーか……」

「よーし! 日向! 頑張ろうね!!」

「日向、京香、わたしはここから二人のことを応援しているよ!!」


 赤組、青組、白組、黄組による最後の大勝負、格組対抗リレーが始まる。

 実質これが大目玉と言っても過言ではない、体育祭と言ったらリレーという風潮があるくらいだから


「うう、なんだか緊張してきた……」

「朝比奈さん! これあげる!!」


 緊張している朝比奈さんめがけて僕はあるキーホルダーを投げた。


「え? このキーホルダー……イエローダンジョンの」

「そう! うさぎだよ! 朝比奈さんといえばの、

うさぎは瞬発力がすごくて、機動力もすごいおまけに足も速い!! だからこれで朝比奈さんは今現在世界一足が速い!! それこそ陸上世界一の選手を抜かせるぐらいに!!」


「……へ? ふふ! アハハハハハハ!!」

「だから頑張れ! 朝比奈日向〜!!」


 朝比奈さんはキーホルダーを見て爆笑し始めた。

 本当に頑張れ朝比奈さん


「ありがとう……影密日影くん!!」

「頑張れ! 頑張れ! 朝比奈さん!!」


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