31〜
第31話 体育祭1 借り物競走
そして、ついに体育祭が開幕した。
「みんな優勝できるように頑張ろうね!!」
僕達は各組に設置されたテントに自分の椅子を教室から持ってきて座ると、朝比奈さんが僕達に呼びかけをした。
そして、体育祭開幕式をするために僕たちはグラウンド中央に移動する。
「楽しみだな〜パン食い競争!!」
グラウンド中央に移動する中、横で歩いていた大翔が嬉しそうな顔をする。
「パン食い競争、そんなに楽しみなの?」
「だってよ、あのパンどんな味するか今から楽しみなんだぜ!!」
「そうなんだ……でもどうするすごい不味かったら」
「不味いってことはないぜ! 日影! だってよ、中学の時もパン食い競争あったんだが、そん時のパンがめちゃくちゃ美味かったんだからよ!!」
そんなに美味かったんだ……僕も一口でいいから食べてみたいな、ていうか僕も出ればよかったパン食い競争……
「あれ〜影密じゃん!」
「雅也さん……こんにちは」
開会式が終わった後、僕はテントに戻ろうと歩いていると、僕のお友達である雅也さんに話しかけられる。
「影密なんの競技でんの〜?」
「僕は100メートル走だけだよ」
「ワタシ、借り物競走と各組対抗リレー……それと、100メートル走に出るんだよ! だから応援よろしくね!」
「応援よろしくって……僕と雅也さんは敵同士だよ……」
「敵同士だとしてもそんなの関係なくない〜? 友達なんだから応援よろしく!!」
雅也さんが出る種目、朝比奈さんとまんま一緒じゃん……
「どうしたんだ? 日影……って、雅也朱莉!?」
大翔が僕のところに来ると、雅也さんの顔を見るなり、驚いたような顔をした。
「あんた確か、学年一の美少年の」
「その呼び方やめてくれ……ってか、なんで日影が雅也さんと話してるんだ?」
「えへへ! ワタシと影密はお友達なのよ!」
雅也さんは僕の肩を持って自分の方に僕の体を寄せてきた。
あの……こんなところで目立つのでそういうことは、やめてほしい……
「アハハ……そうか、日影の友達か……アハハ、これは朝比奈さん新たなライバルだな……アハハ!」
ちょっと大翔笑い事じゃないって、それにライバルとかよくわからないこと言ってるし……
とにかく助けて、僕女の子に接近されてドキドキしちゃうから、なんでもいいから大翔助けて!!
そして、体育祭が始まり……まずは借り物競走が行われた。
借り物競走に出る人……朝比奈さんと雅也さんは順番に並んで自分の番を今か今かと待っていた。
ついに朝比奈さんと雅也さんの番になった。
なんの因果か、朝比奈さんと雅也さんは同じグループだったらしく、僕はどっちを応援していいのか一瞬わからなくなる、いや……それはもう決まっている、同じ赤組として朝比奈さんを応援することに
借り物競走は、お題の書かれた人あるいは物を連れてグラウンド中央にいる係の人にOKサインを出して貰えばゴールという扱いである。
「なあなあ、日影! お題どんなのがあるんだろうな……気になるよな……!」
「確かに気になるね……」
僕は朝比奈さんを応援するため、彼女の動向をテントの中から見守っていた。
すると、朝比奈さんはグラウンド中央でお題が書いてある髪をめくると、その場でしどろもどろしつつ、こちら側に向かって走って来た。
「朝比奈さんこっちに来るみたいだぜ! なんだろうな!」
「確かになんだろう……」
大翔とそんな事を話す中、朝比奈さんは僕の前にやって来た。
「影密くん……ちょっと来てくれない?」
「え? 普通に嫌だけど……」
「はあ!? ちょっと……いや、なんでよ!」
「いや、だって……恥ずかしいから……」
「ダハハハハ! 日影に振られちまったな! 朝比奈さん」
「ちょっと緋村くんは静かにしてて!」
朝比奈さんは相当焦っていた。
なんでそんなに焦っているのか、僕にはわからないけど、それに顔もとっても赤くなっている。
「お願い! 影密くんしかいないの! このお題を達成できる人は!!」
僕しかないないって……それはつまり、お題の中身はイエローダンジョン世界一位を取った男とか、プレイヤーネーム「マスター」の人とか?
「……わかったよ……それじゃあ」
「ちょっと待った!!!」
「「へ?」」
僕が朝比奈さんと一緒に係の人がいるグラウンド中央に向かおうとした時、横から別の女の子が静止してきた。
「影密! お前はワタシと来てもらう!」
「ちょっと、雅也さん! 早い者勝ちだってこういうのは!」
「速い者勝ちなんて……そんなルールはないぞ! そこまでいうなら朝比奈日向! 日影をかけて勝負だ!」
なんかえらいことが始まってるって……
朝比奈さんと雅也さんの僕? をかけた戦いが起こるということで、それを見るギャラリーも時間を増すごとに多くなる。
「勝負ってなにをするの?」
「それはあれだよ! やっぱあっち向いてほいでしょ〜」
「あっち向いて……ほい?」
「そうだ! それじゃあ始めるよ!」
「わ、わかった……負けないからね」
どうやら朝比奈さんと雅也さんはあっち向いてほいをするらしい……
「最初はグー! じゃんけんぽん! あっち向いてほい!」
朝比奈さんがじゃんけんに勝ち、雅也さんに向かって右を指差したところ、雅也さんが右を向いて朝比奈さんがストレート勝ちを決めた。
「くっ、くそ〜ワタシ負けたのか〜!」
「ほら、影密くん行こう!!」
「え? うん……」
朝比奈さんは僕の腕を掴んで引っ張りつつ、係りの元へと走って行く。
なんか今の僕は結婚式でちょっと待ったって来た男の人と一緒に式場を抜け出す花嫁の気分……
「えーとそれでは、お題を確認しますね……」
係の人はお題を確認した後、僕たちに向かってOKサインを出した。
これにて、朝比奈さんのこのグループでの1位が確定した。
「よかったよ! 影密くんありがとう!!」
借り物競走が終わり、僕と朝比奈さんがテントに戻ろうと歩いていた時、朝比奈さんが安堵の声を漏らす。
結局、あの後雅也さんは相手を見つからず、朝比奈さんのグループでは最下位に終わった
なんかそう考えると申し訳なく思ってしまう……
「それで……お題の中身はなんだったの?」
「それは……絶対に言わない!!」
絶対に言わないなんて言われたら逆に気になってしまう……
すると、朝比奈さんのジャージのポケットから一つの紙が落ちた。
僕はその紙を拾うと、それはお題の書いてある紙だった。
そこには、「気になる異性」そう書いてある。
「……あ、朝比奈さんって、僕のこと好きなの?」
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