第30話 今日はリレーの練習しようよ!!
「おはよう〜!! 日影っち!!」
「あ、おはよう……花輪さん」
僕は学校の校門の前に到着すると、同じく学校に来ていた花輪さんと校門前でばったり会う。
「いひひ! 日影っち! 今日から始まるね!」
「え? 何が始まるの?」
「なんだ日陰っち知らないの? 今日から始まるんだよ体育祭の練習が!!」
「た、体育祭か……」
体育祭ってそうか……もうそんな季節になったのか……
「あたちたちの組が優勝できるように頑張ろうね!!」
この学校の体育祭は1組は赤組など、クラス単位で体育祭の組が決定する……
「みんな〜おはようー!!」
「お、おはよう……」
教室に着くと、花輪さんに続いて僕も小さな声で挨拶をした。
「あれ? 影密くんと京香一緒に来たの?」
「うん! さっきそこでばったり会って!!」
朝比奈さんは僕と花輪さんが一緒に来たのが珍しかったのか不思議そうな顔をした。
そして、今日の2時間目はいつもの時間割通りなら国語の授業があるのだが、体育祭が近いということで種目決めが行われた。
「それじゃあ、体育祭の種目決めるぞ〜まず! 障害物競走〜!!」
先生が淡々と黒板に種目を書いて、やりたい人が手を挙げるシステムだ……
ちなみに100メートル走は、全員強制らしい僕は全部出たくなかったのだがこればかりは仕方がない
「最後にリレーだ! これは種目の一番最後まあ、ようするに体育祭の大目玉だ! 立候補するやつ手を挙げろ!!」
「はい! あたちやります!!」
一目散に手を挙げたのは、陸上部で走るのが大好きな花輪さんだった。
「京香がやるなら私もやる!!」
すると、花輪さんに続いて朝比奈さんも手を挙げた。
朝比奈さんリレー立候補するんだ……すごいな
それからリレーの選手は続々と決まっていき種目決めは終わりを迎えた。
「日向〜今日はリレーの練習しようよ!!」
「うん! しようか練習って……あれ? 京香今日部活は?」
「あたち今日は部活休みなの!!」
「そうなんだ! でもせっかく部活休みなら休めばいいのに!!」
「ヤダ! あたち走りたいもん!!」
どうやら朝比奈さんと花輪さんさっき決まった格組対抗リレーの練習をするらしい
「京香本当に走るの好きね!」
「あたち走るの大好き!! あ、紗奈も走ろう!」
「え? わたしはリレー出ないぞ?」
「それでも走ろう〜! 紗奈も今日部活ないでしょ!!」
「まあ、部活はないんだけど」
千秋さんはソフトボール部に在籍しているらしい
高校一年生にして、すでに部活のエースと言われている彼女のファンは多く、部活の練習試合があるとたくさんのギャラリーが彼女目当てで観にくる
みんな体育祭頑張るな……
僕は放課後になったことで、荷物をまとめて自宅に帰ろうと席を立ち上がると、朝比奈さんに突如話しかけられた。
「影密くんも一緒に走ろう?」
「え? 僕はリレーにそもそも出ないし、そんなに走るの得意じゃないよ?」
すると、朝比奈さんは小悪魔的な笑みを浮かべた。
「うふふ! 今の話盗み聞きしてたんだ〜悪い子ちゃんだ〜!! ふふふ」
「あ……違うよ、たまたま聞こえちゃっただけで、その、盗み聞きするつもりは……」
「えへへ! 冗談!! ほら、影密くんも一緒に走ろう! きっと走るの楽しいよ!」
朝比奈さんがそこまで言うなら、OKしておかないといけないな……
「そこまで言うなら、わかった……」
そして、僕たちは普段体育をする際に着る体育のジャージを着用して、出発地点である校門前に並んだ。
「さーて! 練習のルートはこの学校の周りをとにかく走る! みんなそれでいい?」
「……うん! 京香あなたが陸上部と言っても私、絶対に負けないよ〜!!」
「あたちだって負けないもん! 日向、紗奈、日影っち! 真剣勝負だ! それじゃあ〜よーい! スタート!!」
花輪さんが合図を言うと、僕たちは一斉にスタートする。
僕は無我夢中で走ったが、朝比奈さんたち3人からどんどん距離を離される。
「……みんな、速すぎる……」
僕が車で、朝比奈さんたちが新幹線ぐらいのスピードの差を感じながらも必死に3人にくらいつこうと僕は走っていた。
「はあ、はあ……みんなすごいよ本当に……これ練習なのに、あんなに本気で走っててさ……」
僕は数分走ったのち、その場で力が尽きた
どうやら今の僕の体力ではここまでらしい……
「なんか……そこにある自動販売機で飲み物でも……」
立ち止まった場所の近くに自動販売機がありそこでジュースを買って、横に設置されているベンチに重い腰を下ろす。
「……生き返る〜〜って、一体この場所はどこだろう……」
僕は無我夢中に走ったので、学校周りの普段通らない道を進んでしまい、ここがどこだかわからなくなる。
とりあえず、朝比奈さんに電話するか……
僕は電話をしようとポケットに忍ばせているスマホを取り出すと、スマホの画面が真っ暗で、電源ボタンを押すと充電切れの表示が出ていた。
「どうしよう、来た道戻るか……?」
僕は独り言を呟いている中、結論を出す。
しばらくここで休憩しよう……
まあ、先ほど来た道を逆走すれば学校に着くんだしそんなに焦る必要はないよね……
「ああ〜喉乾いた〜!!」
それから、僕がしばらく空を見つめてボーとしていると喉が乾いたと嘆く声が聞こえたので、そっちの方向を見ると、こちらに走ってくる一人の女の子が目に入った。
その女の子は朝比奈さんだった。
「……うう! どれにしようかな! オレンジジュースもいいけど、グレープジュースもいいな!」
朝比奈さんは僕の横にある自動販売機の前に立って楽しそうに飲み物を選び始める。
こんなに近くにいるのに僕のこと気づいてないのかな?
「……朝比奈さん?」
「ん? うわ! 影密くん!? こんなところにいたの!? 京香や紗奈めちゃくちゃ心配してたよ! あと、私も……」
「ごめん、自動販売機でジュース買って、ここのベンチで休んでたんだ……朝比奈さんに連絡しようとしたんだけど、スマホの充電切れてて」
「なんだそういうことか〜!!」
朝比奈さんはグレープジュースを買って、僕が座っているベンチに腰掛けた。
朝比奈さんがベンチに腰掛けたのよかったんだけど、なんだが朝比奈さんめちゃくちゃ端っこの方に座ってる……
もっとこっちに寄ってくればいいのに……そんなにギリギリに座ってたら落ちちゃうよ……
「朝比奈さん……そんなにギリギリじゃなくてもっと真ん中くれば? そのままじゃ落ちてジュースこぼしちゃうかもよ……?」
「いや、それは……そのね」
「私! 今運動したばっかで汗とか気になるし……その、だからね、今影密くんにはあんまり近づかない方がいいかなって思って、ほらもし臭かったら迷惑かもしれないし!」
え? 汗? 朝日奈さんから汗の匂いなんてしないのに……むしろフルーティの香りがするのに……
「まあ、朝比奈さんがそういうなら……そういえば、朝比奈さんすごいね、体育祭の種目3つも出るんでしょ?」
「え? 2つだけだけど?」
「ごめん、100メートル走も入れたらって意味」
「あ、うん!! 私せっかくならクラスの役に立ちたいって思って」
「僕、朝比奈さんの事応援してるから」
「えへへ! 頑張るね影密くん!!」
「さーて、影密くん、学校戻ろっか!」
「そうだね、朝比奈さん!!」
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