第29話 私たち付き合っちゃう?

「そうだ! 積もる話もしたいからさ! 今日のお昼休み〜学校の中庭に来てくんない! お昼ご飯一緒に食べるついでにいろいろお話ししたいからさ!」


「ちょ、ちょっと待ってよ……今日は始業式だから、その……お昼休みはないと思うよ……午後放課後だし」


「……ぬわ〜!! そうだった〜完全に忘れてた〜〜! それじゃあ影密! 放課後学校の中庭に来てよ!」


 僕は雅也さんとお話ししする中、放課後中庭に行くことになった。


「今日の学校はここまで明日から普通に授業があるぞ〜!!」


 先生がHRで生徒に向けて、そう告げた後、僕は雅也さんに言われた通り中庭に向かった。


「おお! 来たな影密!!」

「こんにちは、雅也さん……」


「ところであなたは何故、今回のランキングで1位はおろか、15位にまで転落したのかしら?」


 このランキングというのは、この前僕がやっていた、夏休み限定ダンジョンのクリアタイムを競う世界大会のことだろう……


「えーと、その……今年はあんまりイエローダンジョンをやらなかったというか……ほかのゲームをやっていたというか……」


 実際今年の夏休みは、大翔とデラックスファイターズで対戦したり、朝比奈さんとパープルカートというレースゲームをやっていたりしたから


「あなたがいないおかけでワタシ今回は1位を取ることができたからね! そこは感謝してるよ!」


「か、感謝って……それはそれでなんだか悔しいな……」

「ところで、あなたはOINEやっているかしら? もちろんやっているわよね?」


「え? やってるけど……」

「それじゃあワタシと友達になってよ! 連絡先交換しよう〜!!」

「え? いいけど……」


 僕は流れに乗るまま、雅也さんと連絡先を交換することに——


「よし! 登録完了! ワタシ名前カタカナでアカリだから! よろしくね影密!!」


「うん、これからよろしく……」


「それじゃあ、ワタシ友達と約束あるから! バイビ〜〜!!」

「バ、バイビ……」


 雅也さんはまさにムササビの如く疾風の速さでこの場を後にした。

 なんだか騒々しい人だな……


「くらえ〜! 影密くん!!」


 そして、時は移り次の日になった。

 僕は放課後いつも通り朝比奈さんを家に招いて一緒にゲームをしていた。


「よーし! 今日は私の勝ちからだね!」


 僕はデラックスファイターズでいつも通り朝比奈さんと対決すると、1戦目は見事に完敗した。


「ねえ、影密くん一つ聞いて言いかな?」

「え? いいけどどうしたの?」


「影密くんはさ、最近……雅也さんっていう子と仲良いよね?」

「え? なんでそれを?」


「風の噂よ……あなたが雅也さんと中庭で話していたこと見たって人がいたの……」


 中庭でって……それは絶対に昨日の放課後のことだ……あれ誰かに見られていたのか……


「影密くんってさ……雅也さんと付き合ってるの?」


 朝比奈さんは僕のベットに勢いよくダイブする。


「え? 付き合ってないよ……それに、彼女とは最近友達になったばっかりだし……」


「えへへ、影密くんにこんな可愛い彼女がいるわけないか〜!!」

「ちょ! それはわからないよ! 僕だっているかもよ可愛い彼女が!!」

「アハハ……もしいるんだったら是非紹介して欲しいものだよ〜!! なんてね!」


 朝比奈さんは僕のベットでいつも通り寝返りを打つ。

 その姿はさながら彼氏のベットに寝転がる彼女のようだった。


「……ねえ、影密くん、私たち付き合っちゃう?」

「……は? 今なんて?」

「えへへ、恥ずかしいから二度は言わないよ……」


 僕は反射的に聞き返したけど、なんて言ったのかは聞こえていた。

 私たち付き合っちゃう? そう言ったのだ……


「それは……冗談だよね? さすがに冗談だよね?」


「……プフ! アハハ〜! 影密くん全部冗談だよ!! 本気にしないで〜!!」

「ちょ! ちょっと! ピュアな男子高校生を煽るとはそんなのダメなんだよ!」

「アハハ……ごめんごめん……!!」


 朝比奈さんはベットの壁側に顔を向けて僕に背中を向けた。


「でも……全部冗談はそれも嘘だよ……」

「……え? 今なんて言ったの?」


 今度は本当に聞き取れなかった。


「……なんでもない!! 影密くんのバカ!!」


 朝比奈さんは勢いよく僕のベットにある枕を僕の顔面めがけて投げてきた。

 ……うぅ、グリーンヒットしちゃった……


「あ、あぁ……ごめん、影密くん大丈夫?」


 朝比奈さんは僕の顔にぶつかった衝撃がすごかったのかベットから体を起こして、僕の顔を優しく触る。


「痛いの……痛いの飛んでけ〜! 痛いの……痛いの飛んでけ〜!!」


 朝比奈さんは僕の顔を触ってその後両手を上に伸ばした。

 僕の目の前でこんな可愛いことをやられては痛みもすぐに和らいだ、むしろ和らがない方が難しい


「もう、大丈夫だよ! ありがとね朝比奈さん」


「もう! ごめんね、枕投げちゃったりして!」

「大丈夫だよ! 朝比奈さんももう気にしないでね!」

「うん……影密くん!!」


 朝比奈さんと僕は至近距離で見つめ合う

 僕と朝比奈さんの距離はこれ以上縮まることがあるのだろうか……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る