第26話 夏祭り

「京香そのわたあめ美味しそうだな!」


「うんうん!! あっちで売ってたよ! めちゃくちゃ人気で列ができてたよ!!」


「そのわたあめ私も食べたいな〜! たこ焼き食べ終わったら買いに行こうっと!!」


 たこ焼きを食べている中、朝比奈さんがわたあめに興味津々な反応を見せていることで、朝比奈さんはわたあめを買いに行くことになった。

 

 僕はその付き添いで朝比奈さんについて行った


「このわたあめなんだか雲みたい!! んんっ〜美味しい〜!!」


 僕は買ったわたあめを食べながら歩く朝比奈さんと一緒に賑やかな屋台を見渡しながら歩いていた。


「そんなに美味しいの? わたあめ」


「うん! あ、影密くんも食べる? はい! どうぞ!!」


 朝比奈さんはわたあめをひとつまみして僕に渡してくる。


「え? いいの……? それじゃあ一口もらうよ」


 僕は彼女からわたあめを受け取り、口の中に入れると想像を絶する旨さに思わず難しいダンジョンをクリアしたかのような笑みを浮かべた。


「うふふ! 影密くんのその顔可愛い〜!!」


「え? 僕いま変な顔してた?」


「ううん! 全然素敵な笑顔だよ!!」


 僕たちが先ほど座っていた、ベンチに到着すると3人が仲良く座って待っていた。


「よしっ! それじゃあお前ら次はどこに行くか? 次! 花火大会の時間はまだだからな! せっかくだから夏祭り思いっきり楽しみたいしな!!」


「うーんそうだな……スーパーボールすくいとか、射的とか金魚すくいとか?」


「いいね! あたち射的やりたーい!!」


 大翔の呼びかけでどうやらお次は射的の屋台に行くことが決まったらしい


「景品がいっぱいあるね……」


 射的の屋台の奥に見える景品には、お菓子やおもちゃ……ぬいぐるみなどいろいろなものが並んでいる。


「よーし! まずはあたちがやるー!」


 塙さんは射的の銃にコルクを詰めて、チョコレートのお菓子目掛けて発射した。

 すると、あと少しのところで落ちそうだったがお菓子は、思い通りに落ちることはなかった。


「ううー! 難しいよ〜!! てか、今の惜しくない惜しいよね! 惜しい惜しいーー! アハ!」


 花輪さんは今の結果がよっぽど嬉しかったのかその場でぴょんぴょん嬉しさを露わにする。


「それじゃあ……お次はわたしがやらせてもらうよ!」


 次に、千秋さんが挑戦するようだった。

 千秋さんは花輪さん同様コルクを詰めて、射的の銃を構える。


 すると、見事に可愛いニワトリのぬいぐるみに命中して、勢いよく下に置いたことにより、景品をゲットすることに成功した。


「千秋さん超うめぇーじゃねえか!」


「紗奈! さすが紗奈だよ! かっこいい〜! あたち惚れてしまいそう」


 大翔と花輪さんが千秋さんの手腕に絶賛の声を上げる中、私か俺たちの周りに女の子たちが集まって歓声を上げていた。

 おそらくその歓声を浴びている、主は重中はっく千秋さんだろう……


「千秋さん……すごいね……なんというか、歓声がその……」


「アハハ……本当になんだろうねこれ……困っちゃうな……」


 千秋さんが困ったような顔をしたが、その顔もどこかの国の王子様のような風貌を醸し出しているので、周りにいる女の子の歓声がより大きくなる。

  

 それこそ、僕の横にいる学年一の美少年が少し掠れるぐらいに……


「僕もやってみようかな……射的……」


 僕は花輪さんと千秋さんのを見て、射的に興味を持ち、お金を払って射的に挑戦する。


「……あれ? どこ行っちゃったんだろう……コルクの玉が……」


 僕はちゃんとあそこにあるいちご味のお菓子めがけて玉を発射させたはずななのに、何故かトンチンカンなところに飛んでいってしまった。


「日影〜お前どこ狙ってるんだよ〜だはは」


「これ意外と難しいね……」


 僕が射的に苦戦する中、朝比奈さんが僕の後ろから優しく手を回して、僕の手の上から射的の銃を掴んだ。


「え? 朝比奈さん何やってんの?」


「影密くんが苦戦してそうだったから、ちょっからサポートしてあげようと思って!」


 朝比奈さんは僕の手の上から射的の銃を動かして、先ほどの景品に向かって標準を合わせる。

 この状況はサポートというより、ただやりづらいだけじゃないかと思うのだが僕にそれを朝比奈さんに言うつもりはない、だって朝比奈さんとても楽しそうなんだもん


 てか、さっきから背中に朝比奈さんの柔らかい部分が当たって僕は射的どころじゃないのだけど……


「……ああん! 外れちゃった!!」


 朝比奈さんのアシストが乗った、玉は見事に景品から外れた。


 射的を楽しんだ後、僕たちは会場をぶらぶら練り歩いていた。


「なあなあ、やばいよな! なんで夏祭りにいるんだろうな!?」


「それな! あの雨宮美香がこの夏祭りにいるなんて!!」


 僕は歩いている際、通りがかった人が話していたことを聞いた。朝比奈さんはそれを聞いてびっくりしたようや表情を浮かべた。


「朝比奈さん……お姉さん来てるんだ……」


「姉さん……確かこの日は仕事って言ってたから、多分仕事でこの夏祭りに来てるんだと思うけど」


 僕たちは人通りの多い場所を抜けると、比較的開けている通りに出た。

 周りを見渡すとある一点に明らかに人が集中していた。


「あそこだけ人やばくね? なにやってんのかな?」


「あたち! 気になるから行ってくるよ!」


「あ! ちょっと待てよ、花輪さん! そんなに一人でガツガツ行ったら逸れちまうって!!」


 花輪さんが人が多いところに突っ込んでいくのを大翔がやれやれと言った様子で追いかける。

 僕たちもその後ろを追いかけた。


「……あ、あれって……」


 僕は、人混みの中、うっすらと人と人の隙間から顔を出して、みんなが注目している場所を見た。

 すると、そこにはモデルであり、朝比奈さんのお姉さんである、雨宮美香さんが立っていた。


 雨宮美香さんは、美しい浴衣姿に包まれて周りにはカメラマンさん複数人が雨宮さんを撮っていた。

 おそらくモデルの撮影だろうか?


 なにはともあれ、雨宮美香さんの美しい美貌とスタイルに本当に同じ人間なのか疑いたくなるレベルだ……

 

「まじか!? 雨宮美香がこの夏祭りにいるなんて!! てか、実物見れるなんて俺たち超ツイれるじゃん!!」

 

 僕の横にいる大翔がめちゃくちゃ興奮気味にはしゃいでいた。

 大翔は、雨宮さんのファンなのかな?


「……姉さん、めちゃくちゃ可愛い……」


 すると、朝比奈さんが僕の横にやってきて、僕にだけ聞こえる声で話す。


「そうだね……お姉さんもだけど……」


「……へ? 影密くん今なんて?」


「あ、いやいや、なんでもないよ」 


 僕は今何を言おうとしていたのだろうか……

 僕はお姉さんを見つめる朝比奈さんを見て反射的に声が出た。


「なによ〜気になるじゃない! えへへ」



 

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