第25話 友達の浴衣姿

「奈々美……好きだ……」

「ふえ? 今なんて言ったの? 花火の音でよく聞こえなかった……」

「だからお前のことが好きだって〜!」


 僕は今、自分の部屋でラブコメ漫画の夏祭りのシーンを読んでいる。

 主人公が覚悟を決めてヒロインに告白したのだが花火の音でよく聞こえず、しどろもどろするというひじょうに焦ったいシーンだ。


 そういえば、もうすぐこの近くじゃないけど、とても大きい夏祭りが開催されるんだよな……

 この前テレビCMやってた気がする


 僕は読んでいた漫画をテーブルに置いて自分の部屋を出ようとすると、スマホが着信を知らせてきた。


「影密くん! 一緒に夏祭り行かない?」


「夏祭りって確かいっぱい屋台があるやつ? あと花火とかが上がるやつで、ラブコメで結構出てくるやつ?」


 僕が慌てて電話に出ると、声の主は朝比奈さんだった。

 夏祭りってさっき読んでた夏祭りだよね……


「そうよ! 今度とてもでっかい花火大会兼夏祭りが開催されるんだけどよかったら影密くんも一緒にどうかなって思って!!」


「……うん、僕も夏祭りっていうものに興味があるからぜひ一緒に行かせてもらうよ」


「よーし! それじゃあ決まりね! 夏祭り当日は会場がここから遠いこともあってさ! 私影密くんの家に迎えに行くね!!」


 そして、夏祭り当日、僕は朝比奈さんが家に到着したことを確認して、ドアを開けて外に出た。

 すると、美しい浴衣姿の髪を後ろで編んでいる朝比奈日向と鉢合わせした。


「やっほー今日も暑いね!! 影密くん!!」

「どう? 私の浴衣似合ってる?」

「……うん、すごく似合ってるよ……」


 僕は浴衣姿の朝比奈さんに思わず見惚れてしまった。

 朝比奈さんは僕が感想を漏らすと少々照れ臭そうに笑った。


「……それじゃあ朝比奈さん……夏祭り行こうか……」


「……うん、行こう……影密くん!」


 僕と朝比奈さんは夏祭りに行くために最寄駅へと向かって歩き始めた。

 彼女は草履を履いてるため、草履特有の音が夕陽が照らす道に響く。


 駅に到着すると、今日は比較的駅の利用者が多い気がした……やはり夏祭りに行く人がたくさんいるのだろう……


「ふう〜やっと着いた! 夏祭り会場はあっちだな〜!!」


 僕は朝比奈さんと電車に揺れること、45分ほど経ってようやく夏祭り会場の近くの駅に到着した。

 さっきまでは空はまだうっすら明るかったけど、いまはもうほとんど真っ暗だ……


「朝比奈さん……すごい人だね……まさかだとは思うけど、これ全部夏祭りの人かな?」


「そうだと思う! ここの夏祭りテレビでも紹介されるほどデカくて! 毎年人もめちゃくちゃくるらしいよ!」


 僕と朝比奈さんは人の列に続いて花火大会会場の入り口に到着した。

 入り口に到着すると、薄らと見える屋台の方からとても美味しそうな匂いがこちらまでしてくる。


「日向〜日影くん!!」


 僕たちが入り口について、そこに設置されているベンチに座っていたところ、浴衣姿の千秋さんが僕たちの前に姿を現した。


「紗奈ー! 浴衣姿めちゃくちゃ似合ってるよ!」


「ありがとう! 日向も似合ってるよ!」


 千秋さんはとても可愛い浴衣に身を包んで、髪をポニーテールに束ねていて、イケメンな男子風に見えなくもないような見た目から通行人の女子たちにチラチラと注目を浴びている。


「紗奈は相変わらず王子様感が半端ないね!」


「王子様か……困ったなわたし女の子なんだけど」

  

 僕たちは千秋さんが来たことによって、ベンチなら立ち上がる。

 ……あと来ていないのは、大翔と花輪さんか……

 

 僕たちは今日、夏祭りにこの前プールに行ったメンバーで行こうという話になった。


「さてと! それじゃあ行こうか、二人とも」


「ええ? 紗奈! まだ京香と緋村くん来てないよ」


「あれ? 二人とも知らないのかい? 京香と大翔くんは一足先に会場について先に回ってるらしいよ……なんか京香が待ってようぜって言う大翔くんを無理やり連れ出したっぽいけど」


 花輪さんと大翔は先に行ってるのか……

 

「うわ〜屋台がいっぱいー!! どれから回る? 私ありすぎて選べないや〜!!」


 朝比奈さんは夏祭り会場に入ると、想像以上の屋台の数に興奮していた。


「日向あれとかいいんじゃないか? ほら、やっぱり夏祭りと言ったらたこ焼きでしょ!」


「ああ! たこ焼きだ〜! さっきからいい匂いがする気がしたけど、あれってたこ焼きの匂いだったのか〜! あ、その隣には焼きそばがあるー! よーし! 並ぶぞー!」


 朝比奈さんに続いて僕たちも美味しそうなたこ焼きの列に並んだ。

 列に並んでいる途中、僕は屋台が並んでいる奥の方を見ると、そこには半ば興奮気味の無邪気な女の子とそれに振り回されてる一人の美少年がいた。


「あれ! 大翔と花輪さんじゃない?」


「あ! 本当だー! アハハ! 京香左手ににリンゴ飴、右手にわたあめって、すごい満喫してるじゃん!!」


 花輪さんは両手に食べ物を待ってめちゃくちゃはしゃいでいる、大翔は……なんだか勘弁してくれみたいな顔をしている。


「おーい二人とも! 私たちここにいるよー!」


「ああー! 日向ー! 紗奈ー!! 日影っち!!!」


 僕たちはたこ焼きを買って、近くに設置されていたベンチに座りながら、たこ焼きを食べていた。


「はあ〜日影……めちゃくちゃ疲れた……花輪さんマジでめちゃくちゃ食うんだもん……まあそれは別にいいんだが、それであちこちはしゃぎ回るから、めちゃくちゃ大変だった……」


「なんだか花輪さんらしいね!」

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