第24話 朝比奈さんのお姉さん
「アハハ……ごめんね、充電器……これあたしの使ってる機種使えなくてさ! 大人しく家から取ってくるわ〜!!」
朝比奈さんのお姉さんは充電器を返しに戻ってきたらしい……
「姉さんまたノックぐらいしてよ〜いきなりきたらびっくりするじゃない〜!!」
「アハハ! ごめん日向〜イチャイチャの途中で参上しちゃって」
「だから付き合ってないし! イチャイチャしてないの〜!!」
朝比奈さんは必死に弁解を始めた。実際僕と朝比奈さんはイチャイチャしていないんだけど……多分
「だったら……そこの影密くんもらっちゃおうかな〜あたしが!」
朝比奈さんの姉さんは小悪魔的な笑みを浮かべつつ僕のそばにきて僕の肩に手を置いた。
ちょっと近いよ……モデルの人がこんなに近くに……僕の背後からほのかにとてもいい香りがしてくる。
「ちょ! なんで姉さんいきなり……」
朝比奈さんはこの様子に明らかな動揺を見せている。
「だって付き合ってないんでしょ? だったらあたしがもらっちゃおうかなってことよ!!」
「……あ、ああ……あげないから! 姉さんには絶対にあげないから!!」
朝比奈さんはその可愛いほっぺをぷんぷんしながら起こった様子を見せた。
「ふふふ! 冗談よ〜別に取らないわよ、あんたの大切な人は……そんなに怒らなくても……ふふ」
朝比奈さんのお姉さんはなんだか嬉しそうだった。
そして、朝比奈さんのお姉さんは部屋を後にしようと立ち上がって歩き出そうとした時、部屋の中にあるテレビの横にイエローダンジョンのゲームソフトのパッケージが置いてあることに気がついた。
「このゲームなっつ!! あたしこのゲーム昔狂ったようにやってたな〜モデル業始めてからめっきりやらなくなったけど! 日向〜最近このゲームどんな感じよ?」
「最近はねダンジョンもいろいろ増えてとっても楽しいよ〜それに今夏休み限定ダンジョンも配信されてるし〜!!」
「へえ〜あたしも久しぶりにやってみようかな〜あたし久しぶりに限定ダンジョンやりたくなっちった〜! 限定ダンジョンのクリアタイムを競う世界ランキングであたし9位を取るほどやりこんでたな〜一時期」
「アハハ……姉さんもまだまだね! そこにある影密くんことプレイヤーネームマスターさんは去年の世界ランキング1位よ!」
「ええ!? 影密くんってあのマスターさんなの? あたしめっちゃ驚いたんだけど〜」
「ど、どうも……マスターです……」
朝比奈さんのお姉さん、僕のことマスターって知ってて驚いていたけど、僕のこと知っているのかな?
「……あ、影密くんめちゃくちゃびっくりしてる顔してるね……実はあたしと影密くん一緒にダンジョン攻略したことあるんだよ! ほらあたしプレイヤーネームタヌキだから!!」
そのタヌキさんとは確か、僕と朝比奈さんがダンジョン攻略していた時にたまたま朝比奈さんのフレンドとして入ってきた人だ……
「あたし影密くんのプレイみたいな〜ねえ、ちょっとプレイしてみてよ〜!」
「そうだよ! 影密くん私のそこにあるコントローラー使って、イエローダンジョンやってみてよ! 私も見たい〜!!」
「え? 朝比奈さんは前に見たでしょ?」
「むう〜私は何回でも見たいの〜! ほらほら早く早く〜!!」
朝比奈さん姉妹が圧をかけてくるので僕はイエローダンジョンのプレイの様子を二人に見せることに
「……すげえ〜これが世界ランキング1位の動き! めちゃくちゃキャラ使いこなしてるじゃん!!」
お姉さんは明らかに僕のプレイを見て興奮している……先ほどのおとなしそうな彼女からは想像もできない声と表情をしている。
「すごいでしょ〜影密くんはすごいのよ〜あ、そこの分岐の道一番左行った方が早いと思うよ!」
朝比奈さんは僕がダンジョンを進む上で必ずぶち当たる、左、真ん中、右の3つの分岐道に差し掛かった時アドバイスをくれた。
だけど僕は知っている……真ん中が1番早いことを……
「ちょっと日向〜! そこは左の道が一番早いっしょ! あたしここのダンジョンけっこう知ってるからね!」
僕が朝比奈さんに申し訳ない気持ちで、真ん中を進もうとした時、お姉さんがすかさず朝比奈さんに反論した。
「違うよ! 姉さん!! 絶対に左だから!」
「違うわよ! 右なのよ!!」
朝比奈さん姉妹は右か左かで言い争いを始めた。
僕の後ろで賑やかそうに言い争ってる時僕は静かに真ん中を進もうとした時、お姉さんが僕の腕を掴んだ。
「うえ?」
「影密くんは! もちろん左を選択するわよね?」
「違うよ! 右だよ影密くん!! 姉さんは間違っているのよ〜!! 騙されないで〜」
朝比奈さんも負けじと僕の腕を掴む。
二人とも間違っているよ……多分
そんなに自信満々に言われたら僕の真ん中のルートが一番早いのか疑問が湧いてくる……
「絶対に左よ〜左しかありえないわ!!」
「右よ右!! 右の道しかないのよ!」
朝比奈さんと朝比奈さんのお姉さんは僕の腕を掴んで僕に急接近してきた。
これ……どういうことなの? どういう状況!?
僕はただただこの状況に困惑しつつめちゃくちゃドキドキしていた。
「ちょっと……あの、僕その……真ん中行きます……」
僕は二人の間で縮こまりながら真ん中を進んだ。
「あの……その、お邪魔しました……」
僕は朝比奈さんの部屋でしばらくイエローダンジョンをプレイした後、家に帰宅するために玄関へと向かい、お出迎えをしてくれた、朝比奈さんとお姉さんとお母さんにお辞儀をした。
「……影密くんもう帰っちゃうの? よかったら泊まっていけばいいのに〜日向と一緒のベットで寝ればいいじゃん!!」
「ま、待って……それはさすがに……」
「姉さん……何言ってんのよ! 影密くんめちゃくちゃ困ってるじゃないの〜!!」
「ごめん〜あんたたち二人を見てて面白くてついついからかいたくなっちゃうんだもん〜」
「……全く姉さんは……」
朝比奈さんは困ったような顔をしていた。
そんな二人を見てお母さんは嬉しそうに微笑む。
「……あの、お邪魔しました……楽しかったです」
「うん!! また来てね! 影密くん!!」
「今度あたしにイエローダンジョンのこといろいろ教えてね!!」
「影密くんまた来てね!」
僕はみんなにお礼を言うと、朝比奈さん家族から温かい言葉をかけられて、それに対してにっこり笑って、玄関を出て、家に帰るために歩き出した。
「……待って! 待ってよ影密くん!!」
「……え? どうしたの朝比奈さん?」
僕は家を出ると、朝比奈さんが玄関から飛び出してきた。
僕は朝比奈さんと玄関前で向かい合う。
「……またね、また来てね!」
「……うん、また来るよ……」
朝比奈さんと僕はお互い微笑みあって温かみのこもったハイタッチをした。
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