ゲームがきっかけで学校一の美少女と友達になる話

第21話 プール

「それじゃあ全員揃ったことだし！　いざプールへー！　レッツゴー！！」

「ちょっと京香！　張り切るのはいいけど……まずどこに行くの？」

「うーん、それは……流れるプールじゃない？」

　この地域最大級の大型プールの特徴はなんと言ってもめちゃくちゃ長い流れるプールだろう……

　花輪さんが提案すると僕以外の全員が賛成の意思を示した。

「あれ？　影密くん？　行かないの？」

　僕以外の人たちが流れるプールに向かって歩き出す中、僕は一人考えを迷わせながらレジャーシートに座っていた。

「あの、流れるプールって、その……プール泳げない人でも大丈夫なの？」　　　

　泳ぎが苦手な僕は小さい頃行ったきりの久しぶりのプールで、先ほどレジャーシートに向かう際に見た流れるプールに若干の不安を募らせる。

「影密くん泳ぐの苦手なんだ……でも大丈夫だよ流れるプールは別に泳がなくていいし、その場でぷかぷか浮いてるだけだから！！」

「ぷかぷか浮いてるだけでいいの？」

「ぷかぷか浮いてるだけでいいんだよ！！」

「そうなんだ……なんだか僕大丈夫な気がしてきたよ……」

「それじゃあ行こう！　みんな待ってるよ！」

　朝比奈さんは僕の手を握って引っ張った。

　朝比奈さんの手って小さくてあったかいな……

　今、僕は生まれて初めて女の子と手を繋いでないか……？

「なんかこれすごい……これが流れるプール」

「あれ？　日影くん、流れるプールははじめてかい？」

「うん……多分……もしかしたら、小さい頃に両親に連れて行かれた時に体験したかも知らないけどそんなこといちいち覚えてないからね……」

「これが初めてか〜どうだい？　流れるプールは楽しいかい？」

「うん……なんだかわからないけど楽しい……」

　僕は千秋さんと流れに任せながらお話をしている中、前にいた花輪さんがこちらを向いた。

「あたち急に泳ぎたくなっちゃった〜！！」

「京香泳ぎたいのはわかったけどここではやめとけよ〜他の人に迷惑になるからな〜」

　花輪さんめちゃくちゃ泳ぎたそうにしているな……やっぱり花輪さん走るのが好きなのもあってなのか泳ぐのも好きなのかな？

「影密くん〜！！　どう？　ちゃんと流れるプール堪能してる？」

「……うん、朝比奈さんって泳ぐの好き？」

「え？　私は泳ぐの好きだよ！　なんだか泳いでる時ゲームでキャラクターが水中ステージを体験してるのを疑似体験してるみたいで楽しいんだ！」

「ゲームのキャラってすごいよね……水中でも敵の攻撃避けるし、アイテムを取ったりできるし……僕も泳ぎたいけど中々難しいよ……」

「ああ！　私いい考えがあるよ！！　影密くんは泳ぎたいんだね？」

「……うん、なんだか泳いでみたい……」

「流れるプール一周したら、そこにあるとっても大きいプールで一緒に泳ぐ練習しましょう！　あそこなら泳いでも人の迷惑にならないだろうし！」

「うえ？　でもいいの？　練習って僕のわざわざ泳げるようになるために朝比奈さんが練習付き合ってもらっちゃって……」

「うんうん！！　影密くんも泳いだらきっと楽しいよ〜！　あ、私がちゃんとそばについてるからそこは安心してね！！」

「……ありがとう……朝比奈さん……」

　僕たちはそれから流れるプールを一周した後、流れるプールを後にして、先ほど朝比奈さんが言っていた広くて大きいプールに向かった。

「やっと泳げるー！！　今のあたちは誰にも止められないぞ〜！！」

　花輪さんは一目散にプールに飛び込むとクロールを駆使して華麗な泳ぎを見せる。

「うはは！　花輪さんすげえーな！　俺も負けてらんねえぞ！！」

　大翔は謎の対抗心をあげ始めて花輪さんの後を同じくクロールを駆使して追い始めた。

「……全くあの二人は……」

「それじゃあ影密くん！　とりあえずこの浮き輪を付けて、まずはバタ足練習だね！！」

「……うん、頑張ります……先生」

「えへへ！　頑張りたまえ！　影密ーくん！！」

　僕は浮き輪を身に纏いながら、朝比奈さんの手を掴んでその場でゆっくりとバタ足を開始する。

「そうそう！　その調子その調子！！」

「……これで合ってる？」

「うん……合ってるよ〜」

　僕はプールで泳ぐ練習っていっても今美少女と手を繋いでるんだよな……

　朝比奈さんの手……小さくて暖かくて女の子って感じがする……

　って！　何を考えてるんだ僕は！　せっかく朝比奈さんが手伝ってくれてるのにそんなことを考えるな〜！！

「それじゃあ影密くん！　今から手を離すからそこにいる京香のいるところまで進んでいって！！」

「……うん、わかった」

　朝比奈さんはクロールを一通り終えてその場で大翔と談笑している花輪さんの元に泳いで向かってと促してくれた。

　僕はバタ足を駆使して、花輪さんの元に辿り着くことができた。

「アハハ！！　できるじゃん、ちゃんと泳げるじゃん！！　影密くん！！」

　朝比奈さんは自分の子供がいい点数を取った時に嬉しがるお母さんみたいな反応を示した。

「……ちゃんと泳げたよ……泳ぐってすごく楽しいね……」

「うふふ！　でしょでしょ！！　影密くん！」

　朝比奈さんは僕が花輪さんの元に泳いでいけた方がよっぽど嬉しかったようだった。

「……影密くん——やったね……これで影密くんの始めての体験が一つ増えたね……」

　僕はこの前朝比奈さんに言われた通り、いまひとつ初めての体験を経験した。