第19話 一生心に残る夏休みにしてあげる!
僕たちは自分かき氷のお店からできている列の最後尾に並んだ。
「この子超可愛いよなー!! 最近勢いすごくてよ! モデルだってよ!!」
「この子名前なんて言うんだっけ?」
「そうなんだよ! 名前は
僕と朝比奈さんの後ろに並ぶ男子二人組はどうやらモデルの人について話しているようだった。
「……朝比奈さん? どうかしたの?」
「え? いや! なんでもないよなんでもない」
今、朝比奈さんがびっくりした様子を見せていたので、僕は思わず朝比奈さんを心配した。
そういえばこの前、大翔が最近この子が勢いあってイチオシって僕に見せてくれてのが、確かその、雨宮美香さんだったような……
僕も一眼彼女をみたけど、雨宮さんの外見とかなんとなく朝比奈さんに似てる気がしたんだよな……
「影密くんは夏休み予定とかあるの?」
「え? 特にこれと言った予定はないかな……まあしいていうなら、家でイエローダンジョンをひたすらやり込むことかな……」
僕はイエローダンジョンにとても感謝している……だってこのゲームがきっかけで朝比奈さんというとても素敵な人とお友達になれたんだから……
「だったらさ! 影密くん……もしよかったら、夏休み一緒にどこか行かない? ほら、プールとか海とか夏祭りとか……」
「……いいの?」
「なによいいのって! てかさ、影密くんめちゃくちゃ驚いてるじゃん! 驚きすぎだよ!!」
「だって僕……今まで友達と……その、プールとか夏祭りとか行ったことないっていうか……友達とかき氷を食べるために並んでいる事も去年までだったら考えられないことだったからさ……今とてもびっくりしちゃって……」
「えへへ! それじゃあ、影密くんはこういうことも今年で初めてなんだ!!」
「……うん、僕最近初めてのことばっかで……勉強会もみんなでお昼ご飯を食べることも……どれも新鮮で……」
「影密くんこの夏休み! 私といっぱい初めてを増やしていこう!! 影密くんにとって一生心に残る夏休みにしてあげるんだからね!!」
朝比奈さん本当に君は……優しいな
そして、並ぶこと45分僕たちはやっとのこと、かき氷屋さんに入ることができて、店員さんに案内された席に座った。
「ここ冷房ガンガンにきいてるじゃん! 外暑かったから冷房の風がめちゃくちゃ気持ちいいな〜」
「そうだね、お昼を過ぎてから一気に暑さが増したよね……このかき氷いっぱいメニューあるけど……僕どれを頼めばいいのか迷うな……」
「確かに迷うよね! あ、この前テレビで紹介されていた夏の季節限定の冷凍みかんのかき氷だ! 私それにしよう」
「冷凍みかん……僕もそれにしようかな……」
僕は季節限定という単語に惹かれて冷凍みかんのかき氷を注文した。
「早く食べたいな〜! かき氷楽しみだな〜!」
僕はとても機嫌が良さそうな朝比奈さんを横目に店内を一通り見渡す。
「なんだか、ここのお店とてもおしゃれだね……」
「でしょでしょ!! ここのお店はね、タイスタグラムでね、この前おしゃれってバズって、それから有名タイスタグラマーさんたちもいっぱいこのお店を訪れているんだよ……」
「そうなんだ、朝比奈さん詳しいんだね……」
「うん! 私、憧れの人がいてさその人のことをタイスタとかで見かける時、偶然ここのお店のストーリとが上がってるのを見てさ、この前テレビでやってたのも相待って行きたいなって思ったんだよ!」
朝比奈さんの憧れの人か……
彼女が憧れるほどの人ってどのくらいすごい人なんだろう……めちゃくちゃ気になる……
そして、程なくして店員さんが冷凍みかんかき氷を持ってきてくれた。
「私みかん大好きだから超嬉しいよー!!」
「なんというか、すごいボリューミーだね……」
僕は目の前にある冷凍みかんのかき氷……かき氷の上に甘いみかんのシロップと冷凍のみかんが飾り付けられている、とてもおしゃれなかき氷を眺めて、思わず感想を漏らす。
「確かに! こんなに大きいとは私びっくりしたちゃった!」
「全部食べ切れるかな……?」
「大丈夫だよ! 食べきれなかったら私が食べてあげるから!! いっただきまーす! あーん!」
「んんっ〜!! おいちいー!!」
朝比奈さんはスプーンでかき氷を一口すくって食べると、とても幸せな表情を浮かべた。
僕はその表情に思わず見惚れてしまった。
「ほらほら! 影密くんも食べてみてよ!」
「うん……いただきまーす……」
僕がスプーンでかき氷をすくって口の中に入れようとした時、僕たちの隣の席から、カップルがイチャイチャする声が聞こえてきた。
「たっくん〜! 美味しい?」
「うん! とっても美味しいよ!
「えへへ〜もう! たっくんたら〜! ほら、もう一口あーん!!」
僕は思わず気まずくなり、口の中に入れる直前でかき氷すくったスプーンを持ったまま体を停止した。
「影密くんどうかしたの?」
朝比奈さんが僕の様子がおかしいからと心配しているが、よくよく考えたらこの状況その……デ、デートだよな……これってデートだよね……
「いや、な、なんでもないよ……ちょっとかき氷の美しさに見惚れてただけだよ……」
日影……落ち着け……これはデートなんかじゃないただの友達としてのいつも通りの遊びだ……
それに、朝比奈さんはこの状況を何も思ってないのに僕だけ意識してバカみたいじゃないか……
とにかく朝比奈さんが目の前にいるからいつも通りの平然を装って……
「……どうかしたの? 朝比奈さん?」
僕は朝比奈さんの方を見ると、朝比奈さんの様子が明らかにおかしかった。
朝比奈さんめちゃくちゃ顔赤くなってるけど、熱でもあるのかな?
「な、なんでもないよ! アハハ……なんか今の私たちおかしいね……」
「そ、そそ、そうだね……暑いところから涼しいところ来たからかな……あはは……」
もしかして朝比奈さんも隣のカップルの声を聞いて気まずくなったのか?
僕はなんかこう……今猛烈に恥ずかしくて穴があったら入りたいよ……
そして僕たちはかき氷を食べ終わると、お会計をしてお店を後にした。
「どうだった? 美味しかった? かき氷」
「うん、これはクセになっちゃうよ……その、朝比奈さん……」
「影密くんなーに? 」
「ま、まま……また来ようね……その、さっきのお店に……」
僕が勇気を振り絞って朝比奈さんに想いを伝えると朝比奈さんはこちらを見つめたのち、にっこりと笑った。
「ふふ! また行こうね! 影密くん約束だよ!」
「……うん、朝比奈さん約束……」
僕は夏休み初日から友達とかき氷を食べに行くという初めての体験をした……
「よーし! かき氷も食べたことだし! 影密くんの家に戻ったら、たらふく遊ぶぞ!!」
「朝比奈さん……いつものデラックスファイターズでもする? それともパープルカートをやる?」
「ふふふ! 両方やりましょうー!!」
僕はその後、朝比奈さんとゲームを夜まで一緒に楽しんだ……
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