第16話 朝比奈さんのお弁当
あれから午前の授業があり、ついにお昼休みがやってきた。
最近までお昼休みは一人でご飯を黙々と食べていたが、先週の金曜日は大翔がご飯を一緒に食べようと僕のことを誘ってくれた……
僕は教室で大翔と特に仲がいい、イケイケなクラスメイト二人とご飯を共にしたんだけど、僕がまだ人と話すことに慣れてないため、クラスメイトが僕に話を振ってくれるのだが、それに受け答えするだけのような状況が続いていた。
そんな他愛もない返事をする僕にも優しく話しかけてくれる大翔の友達はとってもいい人だと僕は思った……
それに大翔は僕の肩をポンポンと優しく叩いて自分のペースでいいんだよ! って優しく僕を励ましてくれた。
この人は顔も性格も超絶イケメンだ……
「影密くんー!! 今日さ、私たちと一緒にお昼ご飯食べない?」
僕が昨日のことを思い出していると、朝比奈さんが僕のことをお昼ご飯に誘ってくれた。
「え? いいの? 僕も一緒に食べて……千秋さんや花輪さんとかと食べるんじゃないの?」
「うんうん!! もちろん二人とも食べるけど影密くんも私たちと食べよう!!」
「でも僕は……まだ二人とそんなに仲良くないのに、一緒にご飯なんか食べていいのかな? ほら、さっきお友達になったばっかりだし……」
「いいに決まってんじゃん! それに、京香と紗奈に影密くんも誘ってって言われてるのよ! ほら行くよ!」
僕は朝比奈さんに引っ張られる形で、朝比奈さんの席にやって来た。
「おすおす!! 日影っち! 元気してた? 朝ぶりだね!!」
「わたしも君とお昼ご飯ご一緒できて嬉しいよ」
僕が朝比奈さんの席に向かうと、朝比奈さんの席と千秋さんたちが席がくっつけていて、そこに千秋さんたちが笑顔で座って、机に弁当を広げていた。
「こ、こんにちは……千秋さん……花輪さん、僕ほんとにお昼ご飯ご一緒していいの?」
「アハハ! なに、かしこまってるの? 影密くんはもう立派な友達だから逆にお昼ご一緒しちゃダメな方が違和感があるよ」
「……なんかその……ありがとう……」
それから僕は自分の席から椅子を持ってきて朝比奈さんの席の横に椅子を置いてそこに腰を下ろす。
「日向のお弁当ー!! 超絶美味しそうねえねえなんかちょうだい!!」
「もう! 京香はしょうがないな〜一体何が欲しいの?」
「そのだし巻き玉子が欲しい!!」
朝比奈さんは自分の席にお弁当を広げると花輪さんにだし巻き玉子を分けてあげた。
「うまうま!! これはデリシャス〜!!」
朝比奈さんのお弁当、なんだかオシャレだし美味しそうだし……なんだか女の子のお弁当箱っていう感じがする、それに手作り弁当っぽいけど……朝比奈さんもしかして自分で作っているのかな?
「影密くんはいつもお昼にパンやおにぎりを食べているのかい?」
僕がクリームパンに一つかじりしていると、千秋さんが質問をしてきた。
「……うん、家両親が朝とか仕事で忙しいからさ……お弁当作ってもらうとその分労力がかかると思うから……コンビニで済ませてるよ……」
「へえ〜影密くんはなんて言うか親想いなんだね!! そんな影密くんにはウィンナーをあげよう!!!」
朝比奈さんはお弁当からウィンナーを手で摘んで僕の口元に持ってくる。
「う、うえ? これなにどういうこと?」
「見てわからない? 影密くんにウィンナーをあげようと思ってるの!! ほら口開けて!」
「ええ〜うえ!?」
僕はいきなりのことに動揺したが、朝比奈さんが僕を見つめてくるので、口を開けた。
「影密くん美味しい?」
「ウィンナーの味がする……」
「ウハハ!! アハハ!!影密くんおかしなこと言うね!」
「君は面白いなウィンナーを食べたんだからウインナーの味がするに決まってるじゃないか……くふ、笑いすぎて腹筋がバキバキになりそうだ……」
僕がよっぽど面白かったのか、朝比奈さんと千秋さんは大笑いを始めた。
僕一体全体変なこと言ったかな?
「ねえ、私が言った通り面白いでしょ? 影密くん」
「ああ〜全く待って……最高だ」
「アハハ〜二人ともなんで笑っているのかわからないけどなんだか面白いね〜!! あ、日向ー! 日向の手作りウィンナーあたちにもちょうだいな!」
今、彼女朝比奈さんの手作りウィンナーって言った? っていうことは僕の予想通り、このお弁当は朝比奈さんが作ったことってこと?
「え? 朝比奈さんそれ自分で作ったの!?」
「えへへ! 驚きすぎだよ影密くん! そんなに私料理できないように見えた?」
「いや、違うよ……ただ、高校生で自分でお弁当作るってすごいなって思って……」
「日向はね! お料理とても上手なんだよ! しかも女子力も高いしこれはいいお嫁さんになりますな〜よかったね! 日影っち!!!」
どうして、朝比奈さんが女子力高くていいお嫁さんになることに対して僕がよかったねになるんだろう……
それにどうして額に冷や汗をかいて、顔を赤らめているんだろう……
「ちょっと京香何言ってんのよ!! お嫁さんっていきなりそんなこと……」
朝比奈さんは焦りつつ花輪さんの口を塞いだ。
「うへへ! ごめんごめん日向〜〜!!」
「あ、そういえば! 私まだ影密くんの家に度々お邪魔してるけどあなたの親御さんに会ったことないー!!」
「まあ、うちは両親帰ってくるの夜だからね……朝比奈さん土日は僕の家に来ないからおそらく、朝比奈さんと入れ違いになっているのだと……」
「そうなんだ〜影密くんの親御さん絶対優しいよ今度会ってみたい〜」
「え? うん……タイミングが合えば紹介するよ」
そういえば僕の親には朝比奈さんのことを伝えてないから、多分朝比奈さんのことを言ったら相当驚くだろうな……
僕、今まで家に友達なんで連れてきたことなかったし、しかもその子が学年一の美少女だって言うんだから尚更だよ……
「京香!? あんた今日は一段と食べるね!!」
「うへへ! 今日も部活頑張るからその分食べまくらないと!!」
千秋さんが驚きを示したので、僕と朝比奈さんは、花輪さんの方を見ると、花輪さんはお弁当のほかに学校の購買で買ったパンをバクバク食べていた。
「花輪さんって部活入ってるんだ……」
「うえ? そうだよ日陰っち!! あたちさ陸上部に入ってるんだ!!」
花輪さんって運動神経がとてもいいから、陸上部でもきっとすごいんだろうな……
「ようよう! 日影!! 何か面白いことやってるじゃないか! 俺も混ぜてくれ!!」
すると、大翔が僕たちのところにやって来た。
「あ! 大翔くんやっほやっほー!!」
「花輪さんあんためちゃくちゃ食うな……」
「えっへん!! 私これくらい食べないと部活終わった時、お腹空いてしょうがなくなるからさ! いひひ!!」
「相変わらずすごいな……よいしょっと!!」
大翔は僕の椅子の横に自分の椅子を置いてそこに座り始めた。
「大翔はさ……花輪さんと千秋さんと仲がいいの? みたところ仲良さそうだったけど……」
「ああ! ていうか俺クラスの全員と仲良いぜ!」
「なんだかすごいね……さすが大翔だよ」
「緋村くんのお弁当美味しそうだね」
僕がおにぎりにかぶりついた頃、朝比奈さんは、大翔のお弁当の感想を述べる。
「まあな、でも朝比奈さんのお弁当の方が美味しそうだぞ」
「みんな美味しそうって言うんだけどそんなに私のお弁当美味しそうに見えるの?」
「そんなに美味しそうに見えるぞ!」
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