第15話 朝比奈さんのお友達

「でねでね!! 昨日学校近くのパン屋さんで限定メロンパンが売っててさ! 前々からここ通りかかる時食べたいなって思ったから、わたし思わず買っちゃったよ!! 超美味しかった!! 今度みんなで一緒に食べに行こう!!」


 僕は朝比奈さんのもとに恐る恐る歩いて行くと、彼女はいつもいた友達二人と仲良くおしゃべりをしていた。


「それってこの前ネットで美味しいって書いてあったやつだよね!! 私メロンパン大好きだから食べたいなーー!!」


「日向めちゃくちゃパン好きだもんね!!」


 僕は朝比奈さんたちの輪の近くに来ると、静かに立ち止まった。


 朝比奈さんパン好きなんだ……知らなかった

 まあ、今はそんなこと置いといて……僕が朝比奈さんたちのこんなに近くにいるのに、朝比奈さんを含め誰も僕に気が付かない……


 僕やっぱり影薄いのかな〜なんだか涙が出そう

 でも、今勇気を振り絞らなくてどうする……せっかく大翔が背中を押してくれたんだ……頑張ろう


「……あ、あの……あの……すみません」


 僕は勇気を振り絞り、朝比奈さんたちに弱々しい声で話しかけた。


「あれ? どうしたの? そこの人……わたしたちになんかよう? ってあなたは確か……そう! 影松日陰くん!」


「全然違うよ! 紗奈!! この人は影密日陰だよ!!」

「……あ、あは……ごめんね、影密くん……名前間違えちゃって……」


 僕の名前を間違えて朝比奈さんに訂正されたのは、千秋紗奈ちあきさなと言って、緑色の髪の色でロングヘヤーだったり……髪を後ろに束ねたり、よく二つの髪型を交互に切り替えたりしている女の子だ……それに物静かそうだけど、顔は大人っぽくスタイルも良くて大人の色気が漂っているそんな感じの女の子だ……


 それに、時々見せるフィクションの世界に出てくる王子様のようなのような顔と美しい声は男の子女の子問わず学校の人たちを魅了している……

 

 そして、そんな二人の横にいるのは同じく朝比奈さんと仲がいい、花輪京香はなわきょうかと言ってオレンジ色の髪の色のショートヘヤが特徴でとても可愛い童顔なことからクラスのみんなにも注目されていて……

 

 「花輪ってよ! なんか童顔で顔が幼く子供っぽくて小さい子みたいでとっても可愛いくて、それに出るところ出てるからいいよなー!!」

 っていう男子の会話が聞こえてくるほど、出るところが出てる人……


 それになんだかとっても元気いっぱいの人だ……


「でも影密くんがわたしたちに何の用? ……あ、もしかして! そこにいる朝比奈日向さんに用があるのかな?」


「……うえ……はぃ……そうです……」


 朝比奈さんはそれを聞くと、びっくりしたような表情をした。


「……あの、えーと……その……」


 僕は何ウジウジしているんだ!? 目の前にある朝比奈さんは初対面じゃなく僕の友達である朝比奈日向さんだぞ……


「……ねえねえ……影密くん……もしかしてさ」


 すると、そんな僕の様子が気になったのか、千秋さんが僕の近くに来て僕にしか聞こえない声で呟いた。


「……日向にさ……告白しようとしてる?」


「ちが!? 違うよ……こ、ここ……告白だなんてそんな……告白じゃないよ……」


 どうやら僕のこのもじもじ用で、千秋さんに朝比奈さんに告白するのではと勘違いさせてしまったようだった。


「……あの……影密くん……私に用って……なにかな?」


 朝比奈さんは僕が目立つのが嫌だと前にマッサージしたことにより、あくまで他人を装って聞いたきた。


「……あ、そ……その……朝比奈さんに前言ったよね……僕がその……あんまり学校では話しかけないでほしいって」


「え? うん……てか、影密くんいきなりそんな話をするなんてどうしたの?」


「僕は他人の目が気になって……その、朝比奈さんは可愛くて目立つから……僕が朝比奈さんと喋っていたことにより、みんなからいろんな視線を浴びることに慣れてなくて……僕は話しかけないで欲しいってつい言ってしまったけど、僕は目立つことよりも……朝比奈さんと学校であんまり話せないことの方が嫌みたいなんだ……だから……これはあくまで僕のわがままだけど……その、ちょっとだけでいいから……教室でも僕もお話ししてくれると嬉しいな……なんちゃって」


「……えへへ……影密くんそんな風に思ってたんだ……私さ! ずっと教室でも影密くんと喋りたいと思ってたんだ!! でも、影密くんからこの前メッセージが来てさ……私、せっかく影密くんとお友達になったのに、嫌われちゃうのが嫌で……教室ではなるべく他人を装うようにしてたの……」


「ごめんね……朝比奈さん……僕自分勝手で」


「ううん!! 影密くんは自分勝手じゃないし! 私も影密くんともっとお話ししたい! だからさっきのちょっとだけでもいいからって言うのは、なしで! めちゃくちゃあなたとお話しするから!!」


「……あなたもしかして、日向がよく遊ぶっていう男の子の友達の人?」

「……え? あんちゃ! もしかして! 日向の男の子の友達!?」


 僕と朝比奈さんがお互いが面と向かって自分の胸の内を明かすと、横で唖然としていた、千秋さんと花輪さんが僕に質問をしてきた。


「……あ、うん!! 紗奈!! 京香!! そうだよ、この人が私がこの前言ってた!! 私の仲がいい男の子の友達の子だよ!!」


「……ええ!? 友達の男の子って影密くんのことだったの? ええ!? びっくりしちゃった! あ、影密くんわたし名前! 千秋紗奈って言うの、日向のお友達ならわたしのお友達でもあるよねだからよろしくね!! 影密くん!!」


 千秋さんは僕の手を掴んで上下にぶんぶん振ってきた。

 なんだかすごいコミュ力高いな……


「……え、よろしく……ち、千秋さん」


「ふふ!! よろしくね! 影密くん!」


「なるほどなるほど!! ふむふむ!! あなたが日向と数々の死戦を突破したというネッ友のマスターこと、影密くんかね〜!! あ、あたちの名前は花輪京香って言うんだ!! よろしくね影密くん! いや! 日影っち!!」


 千秋さんが挨拶した後、花輪さんが興味津々に僕に至近距離まで接近して笑顔で話しかけてきた。

 僕は女子に近づかれてついオドオドしてしまった

 ち、近いよ……それに日影っちって……


「うん……よろしくね……」


「ちょっと京香! 影密くんにくっつきすぎだよ」


「アハハ!! ごめんごめん! いっつも日向達にくっつく距離感で話しちゃったよ!!」


 花輪さんは俺から離れて苦笑いをした。

 すると、朝比奈さんが僕の横にやって来て、小さい声で僕に謝罪をしてきた。


「……ごめんね、影密くんのことほんとは黙ってようと思ったんだけど……でもどうしても影密くんのことを話したくなっちゃって……名前は隠して男の子の友達ってことで二人には前に話したんだ……」


「いや……別にいいんだけど……すごいね、朝比奈さんのお友達なんかコミュ力高いって言うか……とても明るいっていうか……」


「えへへ! そうでしょ! 紗奈と京香はとっても明るい子なのよ!!」


「なーに二人でコソコソやってるの?」


「あー! 日向ー! 日影っち! もうすぐHRはじまるよー!!!」


 朝比奈さんのお友達は明るくて優しい……僕は今日朝比奈さんのお友達と友達になった。

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