第14話 わがまま
「今日はありがとな! お前ら超楽しかったぜ!!」
僕と朝比奈さんは外が暗くやってきたこともあって大翔の家を後にするために、玄関に向かうと大翔が玄関までお見送りをしてくれた。
「うんうん!! 私もすごい楽しかったー! またやろうね緋村くん!!」
「ああ! 朝比奈さん!! 次は俺に勝てるといいな!! アッハハ!!」
「むう! 次は絶対に負けないから! 世界ランキング一位さん!!」
朝比奈さんと大翔は笑顔でグータッチをした。
僕はそんな二人を見てお似合いだと不覚にも感じてしまった。
それと同時に胸の中にモヤモヤが起こる。
なんだろうこの胸のモヤモヤ……
「日陰もまた遊ぼうなお前とゲームすんのすげー楽しいからまた遊ぼうぜ!!」
「うん……また遊ぼう大翔……」
「それじゃあ約束のハイタッチしようぜ!!」
「……うん、ハイタッチ……」
僕は大翔とハイタッチを交わした。
「影密くん緋村くんとだけハイタッチしてずるいよ!! 私ともハイタッチ!!」
「うん……ハイタッチ」
「えへへ! アハハ!!」
朝比奈さんは僕とハイタッチをするとなんだか嬉しそうだった。
そして、僕達は大翔の家を出て家に帰るためにゆっくり歩き出した。
外はすっかり暗くなっていた。
スマホの時計を見るとすでに午後9時を回っていた。
今日が金曜日ということもあるけど……めちゃくちゃ遊びすぎたな……
「ねえ影密くん!!」
「ん? 朝比奈さん……どうしたの?」
「今日は本当に楽しかったねー!」
「え? うん……そうだね……」
「あ、そこに見えるパン屋さんさこの前!
朝比奈さんと僕は信号待ちをしている時、横断歩道の奥に見えるとても大きいパン屋を僕にPRしてくれた。
紗奈と京香と言うのはおそらく朝比奈さんのとても仲のいい女友達のことだろう……
「え? うん……ぜひお供させてもらうよ……」
それから僕たちはしばらく無言のまま、夜の静かな道を歩き続けた。
なんだかこう無言だと何を話していいのかわからないな、僕から話を振るべきか……でもな……もしかたら朝比奈さん今、会話したくない時間かもしれないしな……
僕がそんなことを考えてしどろもどろしていたら、朝比奈さんが長らく閉じていた口を開いた。
「ねえ……影密くんはさ……学校楽しい?」
「……うーん、楽しいって聞かれたら楽しいよ……今まで僕あんまり友達がいなくて、ずっと一人だったけど、最近教室でも大翔が話しかけてくれるしさ……そういう朝比奈さんはどうなの? 学校楽しい? っていうか、朝比奈さんは楽しいに決まってるか……ごめんねそんなこと聞いて」
「私学校楽しいって聞かれたらもちろん楽しいよって思うけど半分はなんだか物足りないって感じがする……」
「え? 物足りない? 朝比奈さん学校に期待してることがあるの?」
「……これはさ、私の単なるわがままわがままだけどさ……私……影密くんと話し足りないよ」
「え? 話し足りないって……? でもこうして今僕と朝比奈さんはお話ししてるよ?」
「影密くん私は今話してるって意味じゃなくて……あなたと学校で……ううん! やっぱりなんでもない!!」
朝比奈さんは何かを言いかけたが、話を逸らしてこちらに笑顔を向けて来た。
朝比奈さん今何を言いかけたんだろう……
「あなたと学校で……」
この言葉の意味って僕と学校でもおしゃべりしたいってことか?
僕は朝比奈さんと出会った次の日、クラスのみんなから目立つという理由で朝比奈さんにあんまり話しかけないで欲しいってそうメッセージを打った。
それからは図書室や空き教室で会った時……人がいない時にはこのように友達として接したりするけど、教室で会った時は赤の他人を演じていた。
「……影密くん! それじゃあまた月曜日ね!」
「……うん、おやすみ朝比奈さん……」
僕たちは家の方向がそれぞれ違うため、朝比奈さんとそれぞれ別の道を歩くため別れた。
もし、朝比奈さんのわがままが僕が考えているまんまのことだったら……
なんだか彼女に申し訳なく感じてきた……
僕は一体どうしたいのだろうか……
僕は人の目が気になるより、教室で朝比奈さんとお話しできないことが嫌だ……
そして、週明けの月曜日になった。
僕は昨日からイエローダンジョンの限定ダンジョン配信されたために、昨日の夜からぶっつずけで、朝までダンジョンに入り浸っていたので、おかげで寝不足である。
「日陰! おはよう! ってお前なんだか眠そうだな!!」
「うん? うん……昨日の夜からゲームに没頭しててあんまり寝てないから……」
「わかるぜその気持ち!! 俺もデラックスファイターズが発売された当初、明日学校だってのに朝方までゲームしてたもん!!」
僕が眠そうに席に座ると、大翔が調子良さそうに僕の席にやって来た。
「なあ、おまえちょっと疑問に思っていたんだがよ……お前朝比奈さんと学校ではあんまり喋ってなくね?」
「え? そうかな?」
「ああ、お前らこの前俺の家に来た時、めちゃくちゃ仲良さそうだったのに、教室ではただの顔見知りのクラスメイトぐらいの仲に見える。」
僕は朝比奈さんの方をふと見ると、朝比奈さんはいつも仲がいい女の子二人と仲良くおしゃべしていた。
えーと、名前は確か……京香さんと紗奈さんだったっけ?
朝比奈さんは、教室では、僕にあんまり話しかけに来ることはない……
あの僕のメッセージのせいで朝比奈さんは僕に話しかけに来ないんだろう……
朝比奈さんは優しいから多分僕に気を使っているんだと思う……
「多分……それは僕のせいだと思う……ほら、入学した当初さ、いきなり朝比奈さんが僕に話しかけたことあったじゃん……その時にクラスメイトから僕注目されて、今まで注目されたことのない僕にとっては結構戸惑ったっていうか……それで、朝比奈さんに学校ではあんまり話しかけないで欲しいってメッセージしたんだ……」
「ふーん……それで日陰はどうしたいんだ?」
「え? 僕が?」
「ああ、お前が朝比奈さんとどうしたいのかって聞いてるんだ……教室でこのまま顔見知り程度のただのクラスメイトでいたいのか、それとも……あそこの女子二人のようにクラスでも朝比奈さんの横に立ちたいのか?」
自分で朝比奈さんにまいた種だけど……僕はクラスで朝比奈さんの方を見ると、ふと寂しく感じることがある……自分で話しかけないでと言っておいてなんなんだこいつ……って思うんだけど……
「……横に立たなくてもいいから、せめてちょっとでもお話しはしたいかな……」
「アハハ! よく言った!! ほんじゃあ行ってこい!! 朝比奈さんの元にな!!」
「え? 今から行くの?」
「当たり前だろ!! ほらほら! まだHRまでは時間があるしちょうど朝比奈さんそこにいるんだから!!」
「……わかった行ってくるよ……」
「頑張ってこいよ! 日影ー!! ああ、そうだ、あんまり人の目とか気にすんなよ!! お前はお前のやりたいようにやれ!! 朝比奈さんと喋りたいならそれでいいじゃねえか!!」
僕は大翔に背中を押されて勇気を振り絞り朝比奈さんの元へと向かって行った。
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