第11話 学年一の美少年

 そして、放課後……

 僕はいつも通り……朝比奈さんを待つため校門に向かおうと席から立ち上がった。

 そんな時、一人の生徒に話しかけられた。


「なあ、影密くんだっけ……ちょっといいかな?」


 僕に話しかけてきたのは、緋村蓮と言って、朝比奈さんと同じく、入学式から学年一の美少年と言われている男子生徒だ。 

 僕は彼を一目見ただけ、溢れ出るイケメンオーラに目をやられるところだった。


「あの……僕に何か用ですか?」


「ああ、ちょっと大事な話があるから俺についてきて来れないかな?」

「ここではダメなの……?」


「ちょっとここでは……集中できる場所に行こう……確かもう使われてない視聴覚室が空いていたはずだからそこに行こう!!」


「……ええ? はい……わかりました」


 緋村くん僕になんの用なんだろう……は!?

 僕は今とんでもないことに気がついてしまった……


 緋村くんは僕を除いて最も異性間で朝比奈さんと仲がいい……もしかして僕に警告を? これ以上朝比奈さんに近づくなって……

 それはありえる……それしかあり得ない気がしてきた……


 そして、僕は緋村さんの後ろをついて行って視聴覚室までやってきた。

 僕は彼と一対一で向かい合う。

 彼はこちら側に爽やかな笑顔を向けてくるが僕にとってはその笑顔が悪魔の笑みに見えて仕方がなかった……


 ああ〜ドラマみたいに誰々に近づくなって! そう、男子生徒に警告されちゃうんだろうな……


「……影密くん? 何やってんの?」


 僕は顔を下げて彼に謝罪をする体制をとった。

 先手必勝……緋村くんに僕が言いたいことだけ伝えてさっさと逃げよう……


「僕は朝比奈さんとお友達です! それはあなたも知ってると思いますが! あなたが朝比奈さんと近づくなって! そう言っても僕は彼女と友達でいたい! だからそれは無理な相談です!! ごめんなさいそれではさようなら!! バイバイ!!」


 僕は早口で言いたいことだけ言って、逃げようとしたら、緋村くんが大笑いを始めた


「アハハハハ!! お前面白いやつだな! 何言ってんださっきから? 朝比奈さんと近づくなって、俺別にそんなドラマみたいなセリフ言わねえし!! お前ちょ、まじでやめろよな〜!!」


 え? なにどういうこと? 朝比奈さん関係じゃないの?


「あのな……お前何か勘違いしてるぜ! 俺はお前にあることを確かめたくて呼んだんだ!!」


「あ……ある事? ある事って?」


「……ああ〜えっと……どこから話そうかな……そうだ、まずは謝らないと、悪いな……さっき朝比奈さんと歩いてる時の会話を聞いちまったすまない……」


「え? 何で会話を聞いただけでなんで謝るの?」


「だって、別荘とかなんとか言ってたじゃん……その、朝比奈さんと影密くんは付き合ってらことを知って……その、あんまり知られたくないのかなって付き合ってること……だから聞いちまってごめんって謝ろうかと……」


「……いやいやいや、その……朝比奈さんとはただの友達だから付き合ってなどいないよ!! それに……朝比奈さんと僕じゃとてもじゃないけど釣り合わないよ……」


「お前な……釣り合うとか釣り合わないとか別にどうでも良くね? 大事なのはお前が朝比奈さんと一緒にいて楽しいかってことだろ? 俺は影密くんと朝比奈さんお似合いだと思うけどな……しかも名前日陰と日向だろなんか運命的だなって」


「……お似合いって……日陰は太陽に照らされると日向になっちゃうんだよ……別に運命的なやつじゃないよ……」


「お前わかってねえな! 日陰と日向は太陽と月みたいにお互いかけがえのない存在なんだよ!! だってよ! 太陽が地面を照らすと日向だろ? 太陽が当たらず地面に影が灯ると日陰だろ? 日向って言葉は日陰が太陽に照らされることを言う! 日陰って言葉は日向に太陽の光が当たらなくなって影になっちゃうことを言う! 日陰と日向は互いに存在しないと意味がなくなっちゃうんだよ! それってよう! すごく運命的じゃねえか!! おっと、話が逸れた悪いな……なんか哲学的な話になっちゃってよ」


 太陽と月みたいにお互い変えのない存在か……


「……話を戻すが、お前に聞きたいことがある! 影密くんさっき、朝比奈さんにプレイヤーネームマスターって言われてたよな? それってデラックスファイターズっていうゲームでもその名前か?」


「え? そうだけど……」


「オンラインマッチに潜ったりするか?」


「え? うん……まあ割と潜ったりするよ……」


「影密くん前、世界ランキング一位のプレイヤーネームコウモリと当たって倒したことある?」


「……えーと、その……まぐれだけど一回……そのコウモリさんを倒したことがあるよ……」


 なんだろう……世界ランキング一位のコウモリさんと緋村くんに何か関係が?


「……やっぱり……そうだったのか! 俺! 実はデラックスファイターズの世界ランキング一位であるコウモリなんだわ!! そんでよ! 俺今までオンラインに潜ってから全勝0敗でよ!! 俺は無敗だったんだ! でもこの前マスターってやつに負けたんだ!!」


「え? コウモ……リ……あ」


 僕は瞬時に理解した……なんで緋村くんにこんなところに呼び出されたのか……


 それは、僕がオンラインマッチでコウモリさんをまぐれで倒してしまったから……コウモリさんこと、それで緋村くんの無敗記録は途絶えてしまった。


 だから緋村くんは……よくも俺の無敗記録を破ってくれたな!! このやろう!!


 ……ってな感じで僕のことをボコボコにする気だ……

 やばい、逃げないと……僕もうこの部屋から出れないかもしれない……


「ちょっと緋村くん!! 私の大切な友達をいじめないで!! 私影密くんに手を出すやつは許さないんだからね!! 私、女だと思って舐めていたら痛い目見るわよ!! シュシュ!! ハハ!!」


「い? 朝比奈さん? どうしたの?」


 視聴覚室のドアが突如開いて、朝比奈さんが血相を変えながら、何もないところにパンチキックの動作をしつつ、緋村くんに威嚇をする。


「どうしたのじゃないわよ!! 聞いたわよ! 影密くん緋村くんにここに連れてこられたんでしょ! ちょっと緋村くん! 影密くんに手を出したいのなら! まずこの私を倒してから行きなさい!! まあ、このわたしを倒すなんて百年早いけど!! ハハ!!」


 その百年早い言っていうセリフ現実で言う人初めて見た……


「ぷふ! アハハハハ!! アハハハハ! お前ら二人揃ってなんだよ全く! 面白えじゃねえか!! アハハハハ!!」


 緋村くんはその場で大笑いを始めた。


「な、何を笑ってるの? まさかこんな貧弱な奴が威張ってるぜ! って余裕ぶっこいてるつもり? 私学級委員長だって容赦しないから!」


「アハハ! いや、違うんだ……悪い悪い……別に影密くんに何かしようってわけじゃないし!! お前ら本当にお似合いだな……ぷふ!!」

「……ふえ? じゃあなんで? これはどういうことなの?」


「まあまあ、俺の話を一回聞いてくれ! 朝比奈さんと影密くん!」

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