第10話 朝比奈さんは素敵な人だね

 そして……あれから一週間経って、中間テストの答案返却の日がやってきた。


 数学の先生が名前を呼んで、次々答案用紙を生徒に返していく。

 僕はふと朝比奈さんの方を見ると、朝比奈さんは見るからにそわそわしていて、緊張している様子だった。

 ことわる僕もめちゃくちゃ緊張していた。


「……え〜次朝比奈!!」

「……は、はい!!」


 先生が朝比奈さんの名前を呼ぶと、朝比奈さんは勢いよく席から立ち上がり、答案用紙を先生から受け取って答案用紙を見た。

 すると、朝比奈さんは満面の笑顔でこちらに向かってピースをしてきた。

 

 僕はそれに対して笑顔で静かに頷く。

 朝比奈さん……テストの結果良かったんだな……僕は朝比奈さんがとりあえず大丈夫そうでそーと胸を撫で下ろした。


 まあ、人の心配をしている場合ではないのだが


 そして、テスト返却が終わり、休み時間になると、僕は朝比奈さんにメッセージを飛ばす。


(ひかげ) 朝比奈さんどうだった? テスト

(ひなた) 私なんと! 数学の点数! 82点取っちゃいました! パチパチパチパチ!!


(ひかげ) すごいじゃん!! 僕なんて67点だったよ!


(ひなた) 僕なんてって、影密くんも十分すごいじゃん!! これは今日の放課後影密くんの家で勉強お疲れ様会をやるしかないね!!


(ひかげ) そういうと思って、メロンソーダ! 家の冷蔵庫にキンキンに冷やしておいたよ


(ひなた) まじ!? やるう!!僕は今日図書委員会の仕事で昼休み図書室を利用して本を借りたい人に向けての本の後ろについてあるバーコードを読み取ったり、本の整理をしたら月に一回か2回回ってくるかどうかの仕事をこなしていた。


「今日の図書館は静かだな……」   


 僕は図書室の本の整理をするために図書館の中を歩いていると、今日はなんとなく図書館の利用する人が少ない気がした。

 まあ、図書館はいつも静かなんだけど……静かにしないと怒られちゃうし


「……あれ!? ここの本どこだっけ? あれれ……おかしいな……ここだって言ってたんだけど」


 図書館が静かだったため、一人の生徒が何やら本を探して悩んでいる声が……僕がいつも聴いてる親しみのある声が余計に図書室内に響き渡った。


「……なんかお困りごと? 朝比奈さん」

「あ! 影密くーん!!」

「し! しー!! 怒られちゃうよ」


「あはは……ごめんごめん、影密くんと会えて嬉しくて!!」


 図書室に常駐している先生がこちらを見てきたがすぐに朝比奈さんが静かにしたことで、大目玉は避けられた。


「会えて嬉しいっていつも教室であってるじゃん」

「教室は教室……図書室は図書室なの!! 影密くんって図書委員会だったんだ!」


「……うん、なんとなく図書委員会を選択してね……朝比奈さん知らなかった?」


「ううん!! 知ってたよ!!」

「へ? 知ってた? ならなんでそんなことを」

「アハハ! 影密くん今めちゃくちゃびっくりした顔してたー!! 今の顔可愛かったよ!!」


「……僕は全然可愛くなんてないよ……」


「またまた照れちゃって! えへへー!!」


 朝比奈さん僕に可愛いっていうけど、それはこっちのセリフだよ……


「それで……何か本探してたんでしょ?」


「うん!! このグレープキングダムっていう本探しててさ!! みんなこの本面白いって言っててなんかここの図書室に置いてあるって言ってたからさ! 借りに来たの!!」


「……あ……それ、今すごい人気で誰か借りちゃってるかも……」

「そうなの!? 残念ーー!! まあ! また借りに来ればいいかー!! アハハ!!」


 朝比奈さんは用事を済ましたのか、その場から歩き出したので僕はてっきり教室に戻るのかと思ったら図書室に置いてあるテーブル名前にある椅子に座り始めた。


「……あれ、朝比奈さんそこで何してるの?」

「え? 何してるのって……影密くんをみてるの!」


「……なんで僕を見るのさ?」

「……だって今暇なんだもん!!」


 なんで暇なら……僕のことをなんだか楽しそうに観察してるんだろ……もっと他にゲームするとかあるのに……僕なんか見ても面白いのかな?


「あ! 影密くん今……僕なんか見ても面白いのかな? って顔したね!!」


「……え? よくわかったね……さすが朝比奈さん」


「だって私影密くんの大親友だから!! それぐらいわかるよ!! だから影密くんの図書委員会の仕事が終わるまで、私ここで待ってるね!!」


「……朝比奈さんは素敵な人だね……」


「……え? 素敵な……ひと?」


 え? 僕今一体何を……朝比奈さんに素敵な人って言ったよな……そんな心の中でつい思ったことを口に出しちゃった……


「……朝比奈さんもしかしてこの部屋暑い? めちゃくちゃ顔赤いけど……あれだったらそこにいる先生に頼んで、冷房つけてもらうとか、そこにある扇風機をつけてもらうとか……」


「ち、違うの!! 確かに熱いことは暑いけど……その、体じゃなくて心の中が……じゃなくてもうーー! 影密くんが変なこと言うからだよ!!」


「え? ごめん……でも熱くなかったのならよかった……」


 僕は図書委員会の仕事をこなして、無事に今日の仕事を達成することができた。


「……あはは! なんだか影密くん本屋さんの店員さんみたいだったよ!!」


「え? 本屋さんの店員? まあ、図書委員の仕事はもしかしたら本屋のバイトと少し似てるかもね僕は実際本屋のバイトしたことないからわかんないけど……」


「……ねえ! 今日も行っていい? 影密くんのお家!! いや、私の別荘に!!」


「いやいや、勝手に僕の家を自分の家の別荘にしないでよ……」


「ええー!! いいじゃん!! 私影密くんのお家めちゃくちゃ好きなの!!」


 この子はそんなに僕の家が好きなの?


「……じゃあ朝比奈さん……いつも通り僕の家に学校の帰りに直で来るの?」


「うんうん!! 影密くんのお家にあったら早速やろう! デラックスファイターズ!! 私今日は全勝してみせるからねプレイヤーネームマスター!!」


「僕だってそれをそっくりそのまま返してあげるよ……プレイヤーネームうさぎ!」


 僕たちは嬉しそうにお互い微笑んで教室は戻って行った。


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