第7話 影密くん本当にありがとう
「そういえばさ、影密くんはなんで待ち合わせ場所を校門にしたの? 別に同じクラスなんだかクラスからそのまま一緒に行けば良かったのに」
「……だって、朝比奈さん目立つから……僕なんかが一緒に歩いていたらその……いろいろな噂が経ってしまうかも知らないし……朝比奈さんに迷惑がかかるかも」
「なんで影密くんはそういうことを言うの?」
「……え?」
そういう事とはどういうことなんだろう……
「どうして僕なんかがとか! そういう自分がダメな人間を見たいなように自分を言うの?」
「だって僕は朝比奈さんと違ってキラキラ輝いている人間じゃないんだよ……それに僕はすぐうじうじしちゃうし……こんな自分を変えたいって心では思っているけど、なかなか実行には移せないんだよ」
「なんで自分をそういうふうに決めつけるの? 私知ってるよ影密くんの素敵なところいっぱい知ってるよ! だからあんまり自分をそういうふうに言ってあげないでよ!!」
「それに影密くん本当に自分を変えたいって思っているのなら頑張って欲しいけど無理やり変わろうとしているなら、無理に変わらなくてもいいよ! 私今の影密くんもとっても素敵だと思うからさ!」
「……朝比奈さんと友達になれて……僕……本当に良かったよ……」
「あ! 影密くん今笑った? ねえ! 笑ったでしょう! もっと顔見せて!」
「いやだよ……恥ずかしいもん……」
「いいじゃんいいじゃん!! 影密くん!」
僕と朝比奈さんはしばらく歩いた後、僕の家に到着した。
僕の家は一軒家で、お父さんとお母さんと僕で住んでいる。
「お邪魔しまーす!!」
朝比奈さんは僕が玄関を開けると、勢いよく靴を脱いで綺麗に並べて僕の家に足を踏み入れた。
「僕の家……そこの階段を上がったところの左を曲がったらすぐそこにあるから……」
「了解了解ー!!」
朝比奈さんはお菓子が入った袋を手に持って、嬉しそうにどすどす階段を上がっていく。
僕たちはさっき家に向かう前に、近くにあったコンビニで朝比奈さんが一昨日言ってたポテチやチョコレートなどを買っていた。
「すごいね! あ! この壁にかかっているポスター! もしかしてイエローダンジョンの限定ポスター?」
「そうだよ……限定ポスター」
朝比奈さんが俺の部屋に到着して真っ先に目についたのは僕の部屋にでっかく飾られているイエローダンジョンの限定ポスターだった。
このポスターはイエローダンジョンが特集されている雑誌を買った人で抽選応募で選ばれた人百名様だけがもらえるポスターである。
このイエローダンジョンというゲームは知名度こそあんまりないけど、このゲーム以外と奥が深くて、隠れマニアがいっぱい存在している。
だから僕が抽選応募に当たったのは奇跡のようなものだろう……
「すごいね! 私応募したけど見事に外れちゃったよ!!」
「まあ、僕もこのポスターが当たったのは奇跡みたいなものだから……」
朝比奈さんは僕の部屋の中央に置いてあるテーブルの前に座るとポテチとチョコレートそれに飲み物であるメロンソーダ……オレンジジュースが入ったファミリーパックを置いた。
「あ、朝比奈さん……僕下から紙コップ持ってくるよ……朝比奈さんせっかくだったらそこの本棚に朝比奈さんが読みたがっている漫画が全巻揃っているから見てて!!」
「うん! じゃあよろしくね!!」
僕は一階にあるキッチンから紙コップを取り出して、朝比奈さんの待っている僕の部屋に持って行った。
「ん? あ、おかえり影密くん!!」
「お、おかえり……」
朝比奈さんは僕が戻ってくると、テーブルの横の空いているスペースに寝そべりながら漫画を楽しそうに読んでいた。
この人……いくら僕たちが友達だと言っても、まだ出会って一週間しか経っていないのに、くつろぎすぎじゃないか?
「あ! 影密くん!! 私さ! この漫画取る時にこのゲームソフトを見たんだけど! 影密くんもこのゲームやるの?」
朝比奈さんが僕に言ったゲームは「デラックスファイターズ」と言って、たくさんのキャラクターの中から一つのキャラクターを選択して、そのキャラクター同士が戦う、一人でもみんなでも楽しめる、今めちゃくちゃ熱い対戦ゲームである。
「……うん、今このゲームめちゃくちゃ盛り上がっているよね……」
「私も家で結構やるよ!! あ! あとでさもし良かったら対戦しない? マスターさん!!」
朝比奈さんは僕に対戦を申し込んできた。
僕もこのゲームはオンライン対戦とかに結構潜ってやり込みにやり込みを重ねている。
これを言うと自慢になるかもしれないけど、この前オンライン対戦で今の世界ランキング一位の人とマッチングして、タイマンでその人を倒したからな……
まあ、あれはまぐれだったんだけど……
「ふうー! 面白かったー!! 私面白すぎてすらすら読んじゃったよ!! あー! 面白かった影密くん本当にありがとう!!」
「朝比奈さんが喜んでくれて良かったよ……」
朝比奈さんはぬいぐるみストーム……今のところ出ているのは全三巻なので、三巻分読み終わると、満足したように声を漏らした。
「それじゃあ影密くんやりましょうか!!」
「うん! 僕も負けないよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます