第4話 影密くんもなんだか嬉しそうだね!!

「影密くん! こっちこっち!!」


 マニメイトの建物が見えたのか……嬉しそうに朝比奈さんが僕を呼んでいる。


「なぁ、あの子すげー可愛くない!」

「モデルなんじゃない? それとも芸能人?」


 通行人から朝比奈さんを可愛いという声が聞こえてくる。

 それはそうだ……朝比奈さんは可愛いのだ……

 こんな僕と朝比奈さんが一緒に歩いているだけでも奇跡に近いんだ……


 これをラブコメに例えるなら圧倒的美少女ヒロインと圧倒的モブが一緒に歩いているようなもの……


「さ! さ! 入ろう!!」


 僕と朝比奈さんは一緒にマニメイトの中に入っていった。


「見てみて!! 影密くん、これ「イエローダンジョン」の限定コーナー!! 実際に存在したんだ! グッズがいっぱい並んでる! 影密くん! すごいね!」


 朝比奈さんはとても嬉しそうだ……

 かくなる僕も今この状況に感動していた。

 だってあのどこを探しても見つからなかった「イエローダンジョン」のグッツが今ここにたくさん並んでいるんだもん……


「影密くん!! ほらみて! うさぎだよ!

うさぎのキーホルダー!!」


 朝比奈さんは嬉しそうにうさぎのキーホルダーを僕に見せてきた。

 朝比奈さんいつもダンジョン攻略の時、キャラクターうさぎを使ってるし、プレイヤーネームも「うさぎ」だし……めちゃくちゃ好きなんだな、うさぎ


「私これ買うことにする!! 影密くんは何か買うの?」

「え? うーん……これもいいな! あ! コアラのキーホルダー! これ前ネットでどこかに売ってることが書いてあってどこに売ってるんだろうって思ってたんけど……ここに売ってたんだ……」


「影密くん……なんだか嬉しそうだね!!」

「……えっ?」


 気づけば僕は熱心にイエローダンジョンのコーナーのグッズやらを眺めてはなにを買うかぶつぶつ声に出して言ってらしい……

 それを見た朝比奈さんがとても嬉しそうに僕にそう言ってきた。


「もしかして……うるさかった?」


 僕はつい集中してしまってもしかしたら結構大きいボリュームでぶつぶつ言ってしまったのではと思い思わずそう言った。

 てか、こんなにテンションが上がったのは久しぶりだ……


「ううん! むしろ影密くんのこんな姿初めてみれて嬉しいよ!」

「嬉しいって……朝比奈さん変わってるね……」


「アハハ! 私変わってなんかいないよ! 友達の喜ぶ顔を見てこっちまで嬉しくなっちゃっただけだよ!!」

「朝比奈さん……」


 朝比奈さんは本当にいい子だな……それに顔はめっちゃくちゃ可愛いし、スタイルは抜群だし、なんだか、めちゃくちゃオシャレだし…… まるで漫画やゲームの世界からやってきた美少女ヒロインのような感じがする……

 本当になんで僕、この人の友達になれたんだ?


「さーて! 次どこに行こうか? えーと! 影密くんは漫画などは見るの?」


 僕が限定コーナーから「コアラ」のキーホルダーと「キリン」の缶バッチなど諸々買うことを決めた時に朝比奈さんが僕に質問をしてきた。


「漫画……たくさん、いっぱいみます……」


 僕は漫画がめちゃくちゃ好きだから、家に結構な数の漫画が揃っている……


「そうなんだ! じゃあ! ちょっと来て!!」

「……えっ?」


 朝比奈さんは急遽足早にマニメイトの中のある場所へと向かって行った。


「影密くん!! 私これ最近見て面白いと思ってるの!!」


 朝比奈さんが歩いて行った先は漫画が売ってある漫画コーナーだった。


 朝比奈さんは「ソードグリーンファンタジー」と書かれた漫画を僕に見せてきた。

 これはバトル漫画なのだろうか……


「これって……?」

「影密くん知らないの? これ今すっごい!! 人気なんだよ! 私も初めて読んだ時この世界観にどっぷりハマって思わず徹夜しちゃったね! しかもこの漫画戦闘シーンが迫力満点でとってもいいよ!」


 僕が知らないような反応を見せると朝比奈さんは待ってましたと言わんばかりに喜んだ顔を見せながら、この漫画の魅力について語ってくれた。

 そんなに面白いんだ……僕も今度読んでみようかな……


「あ! そうだ! 影密くんのおすすめの漫画も教えてくれる?」

「えっ? うん」


 僕は自分のスマホである漫画を検索してそれを朝比奈さんに見せた。


「これなんですけど……」


 僕が朝比奈さんに紹介した漫画は「ぬいぐるみストリーム」というある特殊なぬいぐるみを着ることにやって能力をへたものたちによる迫力満点のバトル漫画だ。


「あ! 私この作品知ってる!! 前! テレビで紹介してたやつ!!」

「そうなんだ……ってテレビで紹介?」

「うん!! 私今日この単行本一巻買おうっと!」


 朝比奈さんはそう言ってぬいぐるみストームを買うためにぬいぐるみストームが連載されている出版社の本棚を隅から隅まで見渡した。


「あれ? ぬいぐるみストーム売り切れてる……」


 どうやら朝比奈さんが隅々まで探した結果ぬいぐるみストームは売り切れている様子だった。

 朝比奈さんはぬいぐるみストームが売り切れたので、買えないことに落ち込んでいた。 


 普段は売り切れることなんてないのに……もしかしてさっき彼女が言ったテレビの効果かな?


「朝比奈さん……残念だったね……」

「そうだ! ぬいぐるみストリーム影密くんから借りればいいんだ!!」

 え? 借りるって漫画の貸し借りのこと!?


「影密くん! 今度ソードグリーンファンタジー貸してあげるからぬいぐるみストリーム貸してくんない!」


「え? いいけど……」

「えへへ! やった!」


 僕がそう言うと朝比奈さんは最高の笑顔を馴染ませた。

 友達と漫画の貸し借り……何だかそんなことをするのも初めてだな……


「いや〜マニメイトで結構買っちゃったね!!」


「……そうだね……」


 マニメイトを出るとマニメイトの袋を待った朝比奈さんが僕に嬉しそうに言ってくる。


「影密くんも!! なんだか嬉しそうだね!」


 僕……今……嬉しそうな顔してたのか……


「さーて! では、影密くん! なにか食べに行こうか!!」


 朝比奈さんがそう言ったことにより僕たちはどこか食べられる場所を求めて歩き始めた。

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