第1話 吼えろ!!俺の相棒・エアロドラゴン!!! その4
「おいおい!!? さっきまでの威勢はどうしたんだよド素人!! じゃあ次はこっちの番だぜ!! ところでイレイザーさん! アイテムの使用はOKなのかい?」
「無論! OKだ! 相手に直接危害を加えなければ、それはカスタマイズの範疇として認められる!」
「ようし! なら遠慮なく!!」
「では準備はいいな!? 3・2・1!」
カスタマイズ?何をするつもりなんだ?そんな疑問を口にする前に権堂は自分の筆箱から何かを取り出した。あれは……なんだ?
「まさかあれは! 翔ちゃん気を付けて!!」
「イレイズ! ゴー!!」
ドゴォン!!
宙斗が警告するよりもはやく、黒い物体が俺の相棒目掛けて放たれ、着弾とともにすさまじい轟音を立てながら煙を巻き上げた。
そして煙が消えると……
「!? あ、相棒……!」
俺の相棒は机の下に無残に転がっていた。
「あ……ああ……」
「ブラックナイト! 一ポイント!」
おっさんがブラックナイトの先制点を告げた。そんな……こんな簡単に先制点を取られるなんて……。権堂のやつ……何をしやがったんだ……!
「なにが起きたんだって顔してるなぁド素人! おれはこいつをつかったのさ!」
権堂が勝ち誇ったような顔で俺に見せたもの……。それは
「鉄製の……定規!?」
「そう! 定規! と鉛筆だ!!」
「なに? どういうことなの?」
得意顔で権堂が見せつける二つを見ても、訳が分からないといった様子の茜はそう疑問を口にしている。その疑問に宙斗が再び答えた。
「てこの原理です……」
「てこの原理?」
「はい……! 権堂君はてこの原理で、定規の真ん中を鉛筆で支えて定規の片方に消しゴムを乗せたんです。そしてもう片方を思いっきり叩くと……」
「デコピンよりもはるかに大きな力で消しゴムを飛ばせる……ってこと?」
「はい……」
「ふむ……重量のあるブラックナイトを扱うにはとても良い作戦だ! 見事だ! 権堂君!!」
「へへ! どうも!! これが俺の必殺! ブラックカノンだ!! どうだド素人!!! さぁ次はお前の番だぜ!!?」
おっさんに褒められた権堂は得意顔だ……!くそ!冗談じゃねぇぞ、何が必殺技だ!!まるで大砲からの砲撃みてぇじゃねぇか!!あんな防御力に加えてこの破壊力って……どうやったら勝てるってんだ!!
俺は、焦りから相棒を乱暴に拾い上げた……その時……
シュー……シュー……
どこからか……小さく呼吸しているような音が聞こえた……。
「!?」
俺は周りのだれかの呼吸音が聞こえてるのかと思って周囲を見渡した……!でも違うようだった……。
(じゃあだれが……?……!?)
呼吸音の正体が分かった……。今俺が右手に拾い上げた相棒だ……!
相棒が小さく……でも確実に呼吸をしている、その音だ!!
その時……俺のなかで何かがひらめいた気がした。確実ではないかもしれないが……でももしかしたらあのブラックナイトを倒す方法が……!!
(やれるんだな……? 相棒……!)
「神風君!! 君の番だ! 早くセットしたまえ!!」
「それとももう棄権するかぁ? せっかくの新しい消しゴムがぶっ壊れちまうかもしれねぇぞぉ?」
俺は静かに相棒をラインにセットして、それから権堂を見やり……笑った。
「あん? なに余裕かましてんだ?」
「別に余裕ってわけじゃあねぇさ? けど! そうやって笑ってるお前が吠え面かくと思うと自然と笑えちまってな」
「なんだと!? このド素人!!!」
「まぁ黙ってみてろや」
「二人とも静粛に!!! 神風君、準備はいいな!? 3・2・1!」
俺の心にはもう焦りとかそういう感情はなくなっていた。今はただただ相棒と呼吸を合わせる……ただそれだけしか頭にない。
シュー……シュー……
だんだんと相棒の呼吸が早くなる……。俺もそれに合わせて呼吸を早める。呼吸を合わせるとともに何か……身体中に風を纏っているような……そんな感覚になっていく……。
そして、その呼吸と身に纏う風の強さが最高点に達する……その瞬間に……
「イレイズ・ゴー!!!」
ぶっぱなす!!!!!!
俺は腕を竜巻のように回転させながらその勢いのままデコピンをかました!
相棒は俺の身に纏った風をもその身に纏い、弾丸のように空中を回転しながらブラックナイト目掛けて突っ込んでいった!
ビュオオオオオオオオ!!!
身に纏う風は回転の力でさらに勢いを増し、小さな竜巻となってブラックナイトに迫っていく!!
「なるほどな!! 回転を加えたか!! いいシュートだ!!翔君!!」
「え!? なに!?」
「ど、どういうことなんです!!? イレイザーさん!!」
「うむ宙斗くん! 茜くん! エアロドラゴンの鎧についた翼は風を受ければ受けるほどその威力を増す!! 通常の撃ち方ではどうしても空気抵抗を受けてそれを十分に発揮できないのだが、翔くんの回転を加える撃ち方ならば空気の流れが整い、抵抗を最小限に抑えられるんだ! まさにエアロドラゴンの力を最大限に引き出すシュートと言えるだろう!! ……しかし! ……これは! ……いくらなんでも!! ……うわぁああ!!」
「うわぁ!」
「きゅああああ!!」
おっさんたちやクラスメイトたちもあまりの風に耐えきれず吹っ飛ばされそうになっている!すげぇ威力だ!!これなら!!!!!
ドクン!!
「!?」
これならいける! そう思った瞬間!俺の心臓が大きく脈打ち……そして「必殺」の二文字が脳内をよぎった……!
(もしかして……相棒が?)
相棒を見つめると、何かをもとめるように青く、鈍い輝きを風の中で放っていた。それでわかった!……相棒が求めているものが何かを!!
「いっけぇ!!! 相棒!! ショータイムだ!!!」
相棒は俺の叫びに呼応するように竜巻の中で青く輝き始め、竜巻の威力をさらに高めている!!やっぱりそうか……必殺技の名前は、ちゃんと欲しいよな!!相棒!!!任せろエアロドラゴン!!最高の必殺技をお前とともに放ってやろうじゃねぇか!!!いくぜぇ!!!!
「必殺!! トルネード……ブラストォ!!!!!!!」
ギュォォォォォォォ……!!バシューーーーーーン!!!!
叫びとともに一気に解き放たれたそれは、極限まで青く輝く相棒を中心に巨大な竜巻となり、うねりを上げてブラックナイトに直撃した!
「う!うわぁああああああああ!!」
権堂のやつもブラックナイトとともに教室の奥までものすごい勢いではじき飛ばされロッカーに激突し、そのまま気を失った!
「やったな相棒!!!」
意気揚々と相棒を回収しにいくと、相棒はなおもうっすらと青白い光を放っていた。どうやら必殺の一撃に相棒もまだ少し興奮しているようだ……!しかもこれだけの衝撃の中かすり傷一つついてない……!すげぇぜ!!
しかしここで俺は少し冷静になり、あることに気づいた……。
(相手が気絶した場合どうなるんだ?勝敗は持ち越し?)
おっさんに聞こうとおもって探すが……あれ?いない?っていうか……
「やべぇ!! 教室中とんでもねぇことになってる!!!」
トルネード・ブラストの威力が高すぎたみたいだ……。
幸い窓は割れてねぇけど、教室中の机やら椅子やらがひっくり返って大変なことになってる……。クラスメイト達の姿も見えねぇし……もしかして開いてた窓から皆外に吹き飛ばされちまったのか……!!?
とんでもないことをやらかしてしまったかもしれねぇ、と背筋がゾーとするのを感じていると、突然、ひっくり返って小さな山見たいになっていた机がボコっと盛り上がり、中からボロボロになったおっさんや、ほかのクラスメイト達が這い出てきた。
「ゲフンゲフン!!!ゲッフ!! すぅ~~~~~ふぅ……ウォッホン!! あ~……見事だった神風くん! さすがはあの男の息子、と言ったところだろう!! 見たところ権堂君は気絶して続行も不可のようだな……! んよって!! 勝者!! 神風 翔くん!!」
勝者!!その言葉を聞いて俺のテンションはグッと上がる!!
「やったぜぇ!!! 茜! 宙斗!! だからいったろぉ!! ぶっ飛ばしてやるってよ!!」
ここで、茜と宙斗やクラスメイト達がわーって俺に駆け寄ってきて胴上げワッショイ!……のはずなんだが……あれぇ?全然だれもこっちに来てくれない……?おかしいぞぉ?
「み、みんな……どったの?」
「どったのじゃないわよ翔!!」
「やりすぎだよ!!翔ちゃん!!!」
「てめぇ教室の机直しやがれぇ!!!」
「ノートどっかいっちゃったじゃない!! さがしなさい!!!」
途端にとんでもねぇ殺気でみんなが押し寄せてきやがった!!
「お、おっさん……! なんとかしてくれぇ……!!」
神にすがるような目でおっさんを見つめたがあの野郎……。
「フハハハハハ!! 神風君! エアロドラゴンの真価をいきなり引き出すその消しバトセンス!! まさにお見事!! だが、次はそれをうまくコントロールできるようにせねばな!? というわけでその反省の意味を込めてみんなの教室をきれいにしておくように!! ではまた会おう!! あ、それから……今後は学校内でその必殺技は絶・対・に! つかわないように!! では!!!!」
「ちょ! 待てよ!! おやじのことを教えてくれんじゃねぇのかよ!!」
「……何……焦る必要はない……。時がくればいずれわかるときがくる……いずれな……」
「なんだよそれ!! あ~もう! じゃあせめて教室の片付け手伝ってくれよおっさん!!」
「フハハ! 神風君! 君に一ついい言葉を授けよう!! 自分のケツは……自分で拭け!!」
「はぁ!?」
「以上だ!!!」
「あ!おい!」
それだけ言うとあのおっさんは窓から飛び降りた……。とおもったらマントがハングライダーみたいなのに変形してそのまま彼方へと消えて行った。
フハハハハハ!!アーハハハハハハ!!とかいうバカみたいな笑い声が遠くから響くなか、殺気立つクラスメイト達のもとに一人残された俺がどうなったかは……言うにおよぶまい……。
でもまぁその日をきっかけに……俺の苦手なものは一つ減って、好きなものが一つ増えていた。
そしてこの日が、俺と相棒の長い長い戦いの日々の……始まりとなったんだ……。
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