第23話
「はぁ、眠い……」
俺は待ち合わせ場所で思わず欠伸をした。
今日は聖良と海で遊びに行く日だ。
そう、海だ。
当然、聖良は水着になるだろう。
それも、ただの水着ではない。
“大胆なやつ”だ。
何を基準に大胆なのかは分からないが、それなりに肌面積多めの水着なのだろう。
俺も年頃の男子。
同級生の女の子の水着には、とても興味がある。
ましてや聖良は俺が今まで見て来た女子の中で一番の美人だ。
気になって仕方がなかった。
結果、昨日の夜は眠れず、寝不足になってしまった。
果たして体力が持つのか。
心配だ。
「おはよう、春樹君」
後ろから、声が聞こえた。
はやる気持ちを抑えながら振り向くと、そこには白いワンピースに麦わら帽子を被った美少女――聖良が立っていた。
この前、一緒に買った服を早速着てきてくれたようだ。
「おはよう、聖良。……そのワンピース、似合ってる」
「当然よ」
ふふん。
と、聖良はドヤ顔で胸を張った。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだな」
俺たちは電車に乗り、少し遠くの海水浴場に向かう。
近場だと同じ学校の生徒と鉢合わせる可能性もある。
それに少し規模が小さい。
どうせなら、出店などがたくさんあるような大きな海水浴場の方が良いだろうという判断だ。
「ねぇ、春樹君」
並んで座席に座っていると、聖良がすり寄ってきた。
少し距離が近い。
「今日は何だと思う?」
聖良はワンピースの袖を軽く摘まみながら、俺の耳元でそう囁いた。
俺は少しだけ考えてから答えた。
「水着だろ。俺もズボンの下に履いてる」
「小学生みたいね」
「お前は違うのか?」
「違わないわ」
聖良は楽しそうに笑った。
電車に揺られて一時間半。
ようやく、海水浴場に到着した。
「へぇ、悪くないじゃない。ちょっと混んでるけど」
広い空、青い海、白い砂浜。
そして人混みと、時々ゴミ。
そんな感じの景色が辺りに広がっていた。
「時期が時期だから、仕方がない」
海なんてこんなものだろう。
「遊泳場所から離れているけど空いてるところと、遊泳場所の前だけど混んでいるところ。どっちがいい?」
「空いてる方かしら」
聖良の希望に沿う形で、遊泳場所から少し離れた場所にレジャーシートを敷き、ビーチパラソルを開く。
「じゃあ、水着に着替えるか」
「そうね。え、あ、ちょっと!? キャッ!」
俺がズボンを脱ぐと、聖良は両手で顔を隠しながら悲鳴を上げた。
……いや、よく見ると指の間からこちらを伺っている。
むっつりめ。
「中に履いてるから」
「そ、そうだとしても、急に脱がないで!」
聖良は頬を赤く染め、視線を逸らしながらそう言った。
どうやら、男の肌に対する免疫が低いらしく、俺を直視できない様子だ。
変なところで純情なやつだな。
「お前は着替えないのか?」
「あー、えっと……」
確か、聖良も中に水着を着ていると言っていたが……。
それとも外では脱ぎずらいか。
分からないでもない。
「中に着てるんじゃなかったのか?」
「う、うん。そうだけど……」
「だけど?」
「……」
「……どうした?」
「……あっち、向いて!」
聖良は海の方を指さしながらそう言った。
「中に水着、着てるなら、関係ないだろ」
「き、気持ちの問題! 何となく、恥ずかしいの!」
スカートの下に何も履かない方が、よっぽど恥ずかしいと思うが……。
内心で呟きながら、聖良に背中を向けた。
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