五十九話 懐かしい顔(クソ)
あれから時間が経ち、紗奈さんと図書室にやって来た。しばらくしていなかったので少しだけ久しく感じてしまう。
とはいえこれといって特別なことはなく、本を読んだ後は時間になり図書室を後にする。
ちなみにさっき気付いたんだけどさ、
まぁ彼女も読書好きなので、つまりはそういうことだろう。特に意図はないはずだ。
それを裏付けるかのように観月は会釈だけしてさっさと帰っていった。一応こちらも会釈だけは返しておく。
もはや彼女とはあくまで他人だ、少し前のように近付いてこなくて助かる。
多分もう彼女とは最初の時の関係性大差ないと思う。
紗奈さんと帰宅している途中、彼女が喫茶店に行こうと言い出した。
それも悪くないと、彼女が知っているらしいその店に向かう。
「たまにはコーヒーでも飲みながら喋るのも悪くないかなって」
「そうだね」
アレコレと喋っているとその店にはすぐに着いて、扉を開くとカランカランと音が鳴る。
その音に気が付いた店員がこちらにやってきて……え?
「いらっしゃいませ!……って紗奈じゃん、
「えっ栞?ここでバイトしてたんだ?」
どうやら紗奈さんもこんなことは知らなかったんだろう、先日世話になった
ちなみに彼女も先日妹の方と一緒にいたよ。
「まぁね!……じゃ、こっちの席どーぞ!」
長名は長所である快活な姿で俺たちを席へ案内する。二人でそれに着いていきその席に座った。
注文は既に決まっていたのでソレを伝えると彼女は奥に入っていった。
紗奈さんと喋っていると注文したコーヒーが届いたのだが、それを運んできたのは天美であった。
二人して少し驚くが、たしかに長名が居るのならおかしい話でもなかった。
前からベタベタだったし。
「よっ」
「ここでバイトしてたんだね」
「まぁな、なんだかんだもう一年だ」
そう彼は得意気に言った。
俺たちが注文したコーヒーを置いていくと、彼は ごゆっくりと言って奥へと戻っていった。
彼の言葉通りに俺たちは、のんびりとした時間を楽しんだ。
ソレが終わって今は紗奈さんを家に送っているところだ、もう空はだいぶ暗い。
彼女と手を繋ぎながら、夜道を歩く。
「樹くん、明日よかったらウチに来て?」
「うん、よろこんで」
紗奈さんがそう言うということは、つまり彼女の両親の帰宅は遅いということだ。
当然ながらその気満々である、悟られないようにしないと……ってそんなこと気にするような仲じゃないか。
「あっ、そーだゴム買っとかないと」
「張り切ってるね」
むしろ紗奈さんの方がノリノリだった。彼女は露骨に胸を押し付けてくる。
その表情はいたずらっぽく、それがあまりにも可愛すぎて思わず抱きしめた。強すぎないように、それでもしっかりと。
「ふふっ、もー可愛いなぁ樹くん♪」
「いやちょっとつい」
「あははっ♪」
紗奈さんはからかうように笑い、俺の頬にキスをしてきた。チュッというリップ音を立てながら顔を離してはにかむ。
そんな姿にまたもや触発せれた俺は彼女と唇を重ねた。
紗奈さんを家に送り届けて、今は最寄駅から自宅に向かっている。
そんな途中に変な連中に絡まれたのだが、ソイツらは見知った顔であった。
「あ?てめぇ
「げっ……」
その二人組はいつぞやか麻緒に手を振り払われた俺を徹底的にボコボコにしてきたヤツらだ。
あの時から俺の学校での立場はかなり悪くなってしんどかった。
それが続いたある日、耐えきれなくなった俺はコイツら含めてその場にいた連中にやり返したことがありその時からイジメはパッタリと止んだ。
それが関係しているのから知らないが、片方は嫌そうな顔をしている。
「こんなところで何してんだ?あ?」
「おいちょっ、やめろって」
しかしもう片方はあの時の事が気に入らなかったのか、今更になって噛み付いてくる。
たしかに体は少々大きいようだが、ソレでもこれじゃあダメだろう。こんな圧の安売りしているようじゃただ情けないだけだ。
相方に止められているというのにそれでもズンズンとやってきている。
「チラッとこないだも見たけどよ、お前随分と可愛い女連れてんじゃん、なぁ?」
「……あ?」
いつの事だったのだろうか、どうやら紗奈さんと一緒にいた時のことを見られていたらしいが、彼女に手を出すつもりなのかと思うとイラッとくる。
「なんだよテメェそのツラはよぉ……テメェの女がどうなっても」
そこから先が聞きなくなかったため思い切りソイツの頬を殴り飛ばした。
ソイツが起き上がる前に仰向けに変え、馬乗りになった後は胸倉を両手で掴みあげる。
「気に入らねぇのは俺だろ?関係ないヤツに手ぇ出すなよ」
「うっ……ぐっ……」
涙目になりながら呻き声で返事をしているソイツはコクコクと頷いている。なんで絡んできたんだコイツ。
相方の方はガタガタと震えていてひどく情けない。弱者相手にしかイキがれないというのも情けない話だ。
あまりに情けない二人に呆れてしまった俺は立ち上がってさっさとその場から離れた。
万が一の報復に警戒しあとをつけられていないか気にしていたが、連中にはその気力も無かったようで杞憂に終わった。
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