五十八話 頼れる仲間たち
後輩たちが去った校舎裏にて、何故か急に現れた
しかも彼らと一緒についてきたらしい
話を聞いたところ、朝から俺の様子がおかしかったとのことで、それは紗奈さんも気付いていたようだ。そこで壱斗から声をかけられ俺の後をつけてきたんだって。心配かけてごめんね。
「天美も、助けてくれてありがとう」
「いや、そんなことより気を付けた方がいいと思うぞ」
先程アイツが竹刀を振り下ろそうとした時、それを掴んで止めてくれた天美がそう言った、
何に気を付けた方がいいんだと思い、首を傾げてしまう。
「今回でビビり散らして心を折られたならそれで良いけど、アイツらが逆恨みをしてこないとも限らないからな」
「っ……!」
彼の言った
今回は人数がいたからいいけど次からはそうとは限らない。もしかしたら一人でいるところを狙われるかも……しかも女性をターゲットにする可能性はある。
……例えば紗奈さんとかね。
「もちろん、絶対じゃないけどな。ただアイツらの心うちは分からない、もしかしたら俺らのうち誰かをつけ回すかも……っていうのは否定できない」
「警戒するに越したことはないってか」
「あぁ」
天美の言い分は最もだと、壱斗も彼の言葉を要約する。そもそも人数を連れて一人を呼び出すようなヤツらだ、闇討ちだって平気でするかも。
そういう性根かもしれない……まぁそれだけの根性があればの話だが。
「それなら、私たちで孤立させてあげましょうか?」
「そうだね舞幸ちゃん。何せお兄ちゃんを殴ったんだし、なんの報いもないのは気に入らないし」
そう言ったのは天美の恋人の妹(ソレも恋人らしいが)と、天美の友人の妹らしい。
先に言ったのは
二人とも一学年下の子たちだが可愛いことから人気者である。それは俺でも知ってる。
「そうだな。しかも
「
燈璃が苛立ったように言いながらこちらにやってくる。それに続いたのは紗奈さんであった。
彼女はそのまま俺に抱きついてきたので、俺も抱きしめ返す。
「樹くんが無事で良かった、でも今度からはちゃんと相談してね?もし
「そうだね、ごめん」
彼女の言う通りで、今回はあまりに軽率だったと思う。
今回は壱斗たちに助けられた形になるな、本当に感謝だ。今度埋め合わせしなきゃ。
「まったく、お前はまた抱え込もうとしやがって。俺らは友達なんだから頼ってくれよな」
「本当だよ。友達が困ったら助けるだなんて、それくらいの権利を奪ったりしないでほしい」
ポンと俺の方に手を置いた壱斗に続いて晴政もそう笑ってくれた。そうだな、一人で抱えるのはやっぱりダメだよな。
「そうだぞ、人間は一人じゃ生きられないんだ。困ったら助ける、助け合うんだよ。同じ学年なんだしせっかくの縁なんだ、呼んでくれたら駆けつけるぞ」
「なんだよ天美、すげぇ良い奴じゃん」
「それはチョロくね?」
天美の言葉に壱斗が感心しているが、天美の方はソレに困惑している。しかし壱斗の言うことは間違ってないな。
俺がもし一人だったら、中学の時にとっくに潰れていた。そう考えたら不思議なことじゃない。
「ありがと」
俺がそう呟くと、皆がふっと笑った。
そんな次の日、あの後輩連中はものの見事に孤立したのだと燈璃から聞いた。
しかも内三人は剣道部だから、そいつらは無事に部活も追い出されたそうだ。もし天美が穏便に済ませなかったらアイツら学校生活さえ終わってたな。
ちなみに長名妹は燈璃は仲がいいらしい。天美といい意外な接点だと思い彼女に聞いてみたところ……それは去年の事だが燈璃のいとこが長名妹に振られたことで天美と彼女にケンカをふっかけたことが始まりだってよ。
もちろんそのケジメはちゃんとつけたらしいんだが、どうやら妙にウマが合って長名妹とは今でも連絡する仲らしい。
天美とも顔を合わせれば喋るくらいの仲ではあるとか。
今回 天美を呼んだのも、彼が逆恨み関係で割と慣れがあったかららしい。経験者の知恵があると助かるのはある。
闇討ちの危険性とかもまさにそうよな。
" 一度プライドを折られた人間は
それは彼が言っていたことだ。だから警戒しておけとも……
そういうわけでいつも通りではあるけど紗奈さんとは一緒にいる。離れる必要はないからね。
あれから一週間とか経ったけど特に何も起きていない。とはいえひと月程度は様子を見るけどね。
できるだけ人の多い場所に身を置くという至極当然の話ではあるけど、今はそれが一番だ。
身を隠すなら人ごみの中っていうことさ。
連中は相変わらず五人で固まっているが、周りから避けられがちなのでかなり浮いている。なにせ下校する人間が沢山いるのにすぐ分かったくらいだからな。
悪いことをすれば嫌なことになるって、ちゃんと理解して欲しいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます