五十二話 お家へご案内
「てめぇみてぇなヤツに興味ねぇんだよ、だからとっととどっかいけや!」
正直ここまでアホなヤツなんぞかなりの少数派だろう。コイツのツレも付き合う相手を間違えたな、頑張って止めようとしているが暴走したアホはそれでも止まらない。
「いや全部こっちのセリフなんだよ。失せるのはお前だっての」
真正面から睨み合っているがコイツはついに胸ぐらを掴んできた。こんな目立つところで…バカだなぁ。
その手首を掴んで捻ると、ヤツは痛みで手を離したのでそのまま拘束した。
しかも丁度いいことに騒ぎを聞きつけた警察がやってきたのでそのまま男を引き渡した。ツレは申し訳なさそうに頭を下げていったが、これを機に付き合う人間は考えて欲しいものだ。
「大丈夫?」
「うっうん、
「もちろん」
紗奈さんにも怪我はなさそうだし一件落着だな。よかったよかった。
彼女と手を繋いで改札をくぐり電車に乗る。
「大変なトラブルが起きちゃったね」
「まぁしょうがないよ、悪いのはアイツらだし俺たちは気にしないでおこう」
車内で喋っているとすぐに俺の家の最寄り駅へ到着し、電車から降りて駅から出た。
ここから家までそう遠くない。五分から十分くらいだ。
「そういえば樹くんの家に行くのって初めて」
「だな、ちょっとドキドキするよ」
そう言うと彼女は ふふっと笑った
可愛らしい笑顔にキュンとしてしまう…が それはいつもの事だった。
「俺の家にはいつも家族がいるからなぁ、アレするときはさすがに二人きりがいいから…そういえば紗奈さんって一人っ子?」
「そうだよ…まぁそうじゃなかったら多分 私の家でもあんなにたくさんエッチ出来なかったかもね」
ストレートに言われてしまいちょっと恥ずかしくなってくる。まぁ間違ってないんだけどさ。
「でも、そろそろ紗奈さんのご両親にも会いたいな。いつも紗奈さんの家ではアレばっかだから…」
「……私の家がラブホみたいになっちゃうね♪」
「みなまで言わないでよ」
せっかく敢えて止めておいたのに、先を察した彼女がいたずらっぽい笑みを浮かべて言ってしまった。顔が熱くなってきてしまう。
「あははっ、顔真っ赤ー♪」
そんな俺を見て嬉しそうに頬をツンツンとしてくる紗奈さんはとても可愛かった。
なんだかんだ喋りながら手を繋いで歩いていれば家に着くのはそうもかからなかった。
家の鍵を開けて先に中へ入り、扉を押さえて紗奈さんを迎え入れる。はじめてのことなのでドキドキだ。
「どうぞ」
「ありがと、じゃあ…お邪魔しまぁす♪」
彼女が家の扉をくぐったところでソレを閉じて鍵をかける。
俺は彼女の背中を両手でそっと触れた。
「さ、靴脱いで上がってよ」
「うん♪」
靴を脱ぎ始めた紗奈さんの横で俺も靴を脱ぐ。
そうしていると奥から誰かがやってきた、どっちかな?
「あっ、おかえり樹……どーも
やってきたのは姉ちゃんだった。紗奈さんが気になって見に来たのだろうか?
姉ちゃんは彼女に気付いて軽い自己紹介をして会釈した。
「あっ、初めまして、私
姉ちゃんを見た紗奈さんがそう言って頭を下げる。世話になってるのはこっちだよ、いつもありがとうございます。
「いやいや、そんなかしこまらなくてもいいよ……しかし
「あはは…まぁ、捕まえたというか、捕まえられたというか……」
実際きっかけとなったのは紗奈さんが声を掛けてくれたからだ。そうなると捕まえられたのは俺の方になる。
「へぇ、その話詳しく!」
「それはいいけど、こんな所で立ち話もなんだからそろそろリビングに案内したいんだけど?」
いつもでも玄関に立たせるわけにもいくまい。
もしそうならとっととホテルでもなんでも行った方がいいくらいだ。せっかく来てくれたんだしゆっくりして欲しい。
「あっ、そっか。じゃあ樹頼んだ」
「言われずとも…さっ、おいで」
そう言って紗奈さんに手を差し出す。エスコートってやつだ…まぁ家だから変な話だけど。
「うん♪」
それでも彼女は嬉しそうに俺の手を握ってくれる。やっぱり天使だね、ほんと素敵。
紗奈さんの手を引いてリビングに向かうと母さんが昼食の用意をしていた。
「あら、いらっしゃい。しかしまぁ可愛い子連れてきたのね…どうも樹の母です、ウチの樹が世話になってるわね」
「いえいえ!樹くんにはこちらこそお世話になって…」
母さんが頭を下げるもんだから紗奈さんまで恐縮してしまっている。そんな彼女も可愛いがね。
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