四十九話 楽しい下校
今は放課後、
今日は二人して本を持ってきていないので適当に図書室の本を物色している。何読もっかな。
アレコレ探して適当な本を見つけた。ちょっと有名どころだけどまだ読んでいないファンタジー小説だ。
小学校にもあったなこんなの。
「おっ、
「あぁそれね、まだ読んでなかったんだ」
「うん、実はね」
紗奈さんが選んだのは近未来SFの小説だ。結構マイナーなヤツだから学校にあったのは驚いた。
二人で並んで座り、本を読む。
ただ傍にいるだけで何かを喋ったりする訳じゃないけれど、こういう時間がやっぱり幸せだと思う。沈黙の時間を共有できる相手は大事にするべきと言うけれど、本当にその通りだと思う。
時間は思ったよりすぐに過ぎ、気付けばもう学校が閉まる時間だ。
「いやぁやっぱり楽しい時間は過ぎるのが早いねぇ」
「ホントだよ」
図書室から出て二人で歩く。
ふと、後ろから視線を感じて振り返ると、そこには
まだ図書室を出たばかりの今、その目の前の教室からも誰が出てきたわけでは無かったので彼女も
「ん?あっ…」
俺が振り返ったので紗奈さんも合わせてそちらを向くと、その理由に気が付いて気まずそうな声を出した。
当然だが観月とも目が合っている。
「っ…ごめんなさい!」
気まずくなった彼女は俯いて走り去っていった。まぁあんな事になったんだしだろうなって感じだ。
俺たちは互いに顔を見合わせ、何も言わずに歩き出したのだった。
そんなことも忘れて一緒に帰っている途中、いきなり紗奈さんが変なことを言い出した。
「樹くんって、家で一人でシたりしないの?」
それは突然のソレであったが、一瞬 意図が理解できず何も言えなかった。
だがいざ理解してみると結構恥ずかしい内容だった。
「いや、そりゃするけどさ」
「でも、昨日は家族がいるのにするのってちょっとみたいなこと言ってたでしょ?よくよく考えたら家じゃなかったらどこでするんだろう」
それは素朴な疑問であった。
当然俺にも性欲はあるし確かにやるんだけど…
「まぁやるとしたら家に誰もいない時とかだね」
「ソレだと毎日できなくない?」
「まぁそうだけど」
当然だが土日のような休日はほぼ確定で無理だ、溜まっていても我慢するしかない。
当たり前だが外やトイレだなんて以ての外だ、誰に見られてるかも分からない以上軽率なことは出来ない。
「じゃあ休みの日は?」
「我慢してる」
「えぇ…それ辛くない?」
我慢と聞いて紗奈さんは顔を顰めている。そりゃ良いもんじゃないけどさ、仕方ないって。
「まぁ慣れてるし」
「慣れてる、ねぇ……」
さすがに誰かれ構わず変な姿を見せたくは無い。まぁ家でするにしても、家族に見つかるかもしれないからハラハラして気持ちいいとかはないな。普通に萎える。
……ってかなんの話だよこれ。
「……じゃあそういう時は私で発散しようよ!どこか二人で出かけてさ!」
「わぁぁぁこんなところで大きな声で!せめて静かに……」
内容がアレすぎて驚いた拍子に変な声が出てしまった。聞かれたらどーすんの!
「大丈夫だよ、発散っていってもストレスみたいなもんでしょ?別に聞かれてないって」
「…まぁ確かに周りには人……あれ、いないね」
「でしょー♪ちゃんと見てるんだから♪」
そう言ってピースしながら得意げに笑っている彼女がとても可愛い。
本当に良い彼女さんが出来たものだ。
「でも紗奈さんのご両親だって土日は休みなんじゃ…」
「まーね、だからほら……二人っきりになれる場所、あるでしょ?……ふー」
後半からそっと耳打ちしてきた紗奈さんが耳に息を吹きかけてきて変な声が漏れる。あぁゾクゾクしてちょっと気持ちいい……
「あっ……ちっちょっと…」
「あははっ可愛い♪」
ビクっと身体が跳ねた俺を見て彼女は可愛らしく笑った。まったくからかって…困っちゃうよ。
「まぁでも、考えといてよ。せっかくなら私で気持ちよくなって欲しいから……ね?」
「ぁ……」
紗奈さんは言い切ると同時に少しだけ身体を前に傾けて胸を強調させた。当然ドキッとしてしまいソコから目が離せなくなる。
「んふふ、ジーっと見て可愛い♪……でも足元は
「献身的がすぎる」
ここまで良くされたらダメにされてしまいそうだ、勘違いしちゃうよ?いや勘違いじゃなかったわ間違ってないわ。
そんな幸せな時間も過ぎるのは早く、もう彼女の家に着いてしまった。
「じゃあまた明日ね、また土日のことは考えといて。……楽しみにしてるから」
「分かった、前向きに考えとくよ」
そう言って紗奈さんを抱きしめてキスを交わす。ちょっとディープなソレを楽しんで口を離す。名残惜しいしそれは彼女も同じみたいだけど
今日は事に及べないのだ、紗奈さんの家には親御さんが……
「じゃーね♪」
「うん、また明日」
二人で手を振り合って俺は家に向かった。
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