四十八話 紗奈って結構…
「そういやアンタ、いつ彼女連れてくんのよ」
「えっ」
一緒に帰っている姉ちゃんからそう聞かれて反応に困ってしまう。というかなんで知ってんの?
「なんの話かな?」
「いやバレてるから、とっくに。お姉ちゃんナメんなっての」
どうやら俺の様子から気付いたらしい。えっマジ?心当たり無いんだけど。
それに
「たまにいい匂いさせながらニヤニヤして帰ってくるでしょ?そんな事してたら誰でも分かるからね、あとちゃんと避妊しときなよ」
「ちょっ、そういいのは良いからやってるからちゃんと。家族からそんなこと言われるのは結構辛いからやめて」
どうやら、紗奈さんと身体を重ねた日はいつもシャワーを浴びているのでそれが原因らしい。
ってかそんなにニヤニヤしてたかなぁ?
家族から恋愛関係の話…それも性にまつわる話をされると結構いたたまれなくなるのでやめて欲しいものだ。
「ふふっ、分かった分かった……でも、良かったよ。ちゃんと彼女が出来て」
「え?」
「だってアンタ、一時期 酷かったじゃない。中学の時」
それは多分 麻緒との事だろう。
散々な目にあわされたせいで家でもあまり休んでなかったし迷惑も掛けたと思う。
「一応話は聞いてたけどさ、やっぱり本人から言ってくれないとどうにもできないからね」
「え、ソレも知ってたんだ」
「うん、壱斗くんと燈璃ちゃんから…ね」
どうやらそういう事らしい。それを聞いてあの二人なら確かにと納得した。
要は家族からも気にかけてやってくれと言ってくれたのだろう。本当に良い友達に囲まれたものだと嬉しくなる。
「相手は誰?燈璃ちゃん?」
「いや、別の子だよ。多分姉ちゃんは知らないかも」
「えっ、燈璃ちゃんじゃないんだ」
俺の答えが想定外だったようで姉ちゃんが目をぱちくりさせながらそう言った。
もしかしたら燈璃との関係もあったろうけどさ、そうだとしたら結構前から付き合ってたと思うよ。
「まぁね、燈璃には相手がいるから」
「ふーん…意外だね、だってあの子……まぁいいか」
何かを言おうとした姉ちゃんだが、結局言うことは無かった。なんだったのかは分からないがまぁ仕方ない。……半分予想はつくけど。
「なんでもいいけど、早く彼女連れてきてよね。母さんも喜ぶからさ」
「分かったよ」
俺がそう答えると姉ちゃんは微笑んで頭を撫でてきた。その目はいつもより一段と優しさを帯びていて、不思議な気持ちなった。
前はこんなんじゃなかったのにと思ったけど、そもそも俺は姉ちゃんのことをあまり知らない気がする。最近のこと話だけどね。
「もし良かったら、今度 家に来てよ」
「えっ、行く」
それは翌日のこと、紗奈さんと登校中にそんな話をした。
まぁ彼女ならば嫌だとは言わないだろうと思ってはいたけど、やっぱりすごい乗り気だなぁ。
「とりあえずゴム買っとかないと」
「ごめん家には家族いるからちょっと……」
「あっ」
流石に家族のいる傍でそんなことはできないので彼女には諦めてもらったのだが、そっかぁ と言いながら悲しそうな表情を浮かべた。
そりゃ俺もしたいけどさ、やっぱり状況ってもんがあるからね。
「じゃあ仕方ないね。できても精々 おさわり かぁ…」
「ん?」
彼女の口から出てきた内容を鑑みるに、恐らく悲しいのは表情だけかもしれない……
おさわり て…やめてよ見られたら恥ずかしいってば。
「バレるかもしれない状況って興奮するよね♪」
「いや恐怖が勝る」
なぜかノリノリな様子の紗奈さんだが、こっちとしては普通に勘弁して欲しい。ガクブルだよ。
それでも何故か彼女は引く気がないというか、なんというか乗り気な様子である。
「ソレがいいスパイスになるんじゃん!もしバレたらっていうハラハラと あんなことこんなことをシたい!っていう欲望が…」
「もしかして経験者?」
「ううん」
思わずやった事あるのかと聞いてしまったが 彼女は首を振っている。違うんかい!その割によく語ってたな、もしかしたら過去に相手でもいたのかと思ったよ。
イメージの割に鮮明が過ぎるでしょ。
「いやぁ、正確にはその……家にいる時に一人で…」
「あぁ、もしかして…」
「うん、両親がいる時に……ね」
そう言っている紗奈さんの表情は赤かったがこっちとしてはあんまり知りたくなかったよ。
そんなアブノーマルなモノなど知ってはいけなかったのだと思いつつ、なんでこんな話になったのかと頭を抱えるのだった。
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