第3話

出会ったときの気持ちも

一緒にいるときの楽しさも

つい目で追ってしまうのも

次会う約束をしたいって思うのも

正直初めてなのです。

自分にそんな感情があったのだな、とむず痒い。


先日病院の帰りに会った友人に

「初めて自分から好きになったんじゃない?」

と言われて、確かにそうだなと。

過去の相手は、相手方からの好意に押されてお付き合いしていたと思う。

勝手に私に期待をして、違うからと他に行き、被害者面して去って行った人達。

…あの人(実母)みたいだな。

実際私も期待に応えるべく、聞き分けの良い人間でいたからおあいこか。


過去と今で違うのは、無理に『好かれようとしてない』事。

と言うか、好かれようと無理しなくても大丈夫だと思える事。


割と最初の方に、自分のポンコツ具合を彼には披露してしまっているので今更なところもある。


週末、彼が出張だったのだけど。

たった2日声が聴けなかっただけで、とてつもなく眠りが浅くなって寝付きも良くなかった。

「俺の声がないと寝れないもんね」

と言われたことがあるけれど、全くもってその通りなので何も言えず。

何故か、と問われても【安心するから】としか答えられないけれど。


その【安心するから】が、私にとってはとても大事。過去の相手には感じなかったから。

いつも不安だった。だから好かれたかった。

相手の言う「好き」を信じることが出来なかった。実際裏で、他にも好意をばら蒔いていたしね。どこかで、それを感じていたんだろうな。勘は良いので。


《アダルトチルドレンの多くは、子どもの頃、親や家族を大切にし、必死に信じようとしてきた。自分の本当の気持ちを抑え込み、家族のために努力してきたけれど、大人になってようやく、家族が思いやりのない自己中心的な存在だったと気づく。そのとき初めて、自分自身を守るために無意識に作り上げた幻想が崩れ、心の痛みが溢れ出す。


その気づきの瞬間は、アダルトチルドレンにとって大きな転機となる。自分の感情を無視し続けてきた代償は、深い孤独感や虚無感として現れることが多い。家族の期待に応えるために、本当の自分を抑え込んできた結果、自分が何を望んでいるのか、どう感じているのかさえわからなくなってしまう。それでも、「家族を裏切ってはいけない」という無意識の声に縛られ、自分を優先することに罪悪感を抱いてしまうことも多い。》


これは、とある相手と別れた時に大きな波となって溢れた。その時は、希死念慮も凄くて。歩道橋の上にいるだけで、「飛び降りたら楽かな」とか「終わらせられるかな」とか。

とにかくマイナスマイナス方向に行ってしまって、ただただしんどかった。

本当に、あの時以前の私は死んだんじゃないかな。

毒親の元培われた価値観、思考のくせ。

全部崩れて吹き飛んだ。

なら。

自分の好きな様にしよう。

今までと逆の事しよう。

そう決めたのが、始まりだった。


沼から…

いや、深海から陸へ上がるための。

そして人に成るための、最初の1歩だった。




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深海育ち40年後に人に成る 咲海李桜 @emi9rio

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