第9話  犯人の出頭

 草薙神社で発見された蜂須賀蛍の死は、草薙市全体に暗い影を落としていた。事件の謎は深まるばかりで、市民たちは恐怖と不安に包まれていた。そんな中、意外な展開が訪れることになる。


事件発生から数日後、静岡県警察署に一人の男が姿を現した。顔には疲労と罪の意識が浮かび、どこか諦めたような表情をしている。その男は受付のカウンターに歩み寄り、静かな声でこう言った。


**「草薙神社の件で、出頭しに来ました…」**


 受付の警察官は驚きを隠せないまま、迅速に上司へ報告した。すぐに事件を担当する刑事が呼ばれ、男は取り調べ室へと案内された。


 静岡県警の刑事、林田由美は、草薙神社での殺人事件に関与したとして自ら出頭してきた男と対峙していた。林田は、冷静な表情で男の様子を観察し、まずは状況を慎重に確認することにした。


 彼女は、落ち着いた声で男に問いかけた。


**「出頭してきたということは、あなたがこの事件に関与しているということで間違いありませんか?」**


 男は俯いたまま、小さな声で答えた。


**「はい、そうです…俺がやりました…蜂須賀蛍を殺しました…」**


 その言葉に林田は表情を変えず、さらに詳しい状況を聞き出すため、丁寧に質問を続けた。


**「動機について教えてください。なぜ彼女を殺すことになったのですか?」**


 男は一瞬口ごもったが、やがて重い口を開いた。


**「彼女は…俺の人生を狂わせたんです。俺の家族や仕事を…すべてを壊した。許せなかった。でも、俺がやったことが間違いだったことは分かっています」**


 その言葉に、林田は微かに眉をひそめた。動機が個人的な恨みであったことは予想の範囲内だったが、まだ何かが腑に落ちない。彼女は慎重に、男の証言を整理し、事件の全貌を把握する必要があると考えた。


**「わかりました。今後の手続きに関しては、私たちが案内しますので、しばらくお待ちください」**

林田はそう言うと、部屋を出て同僚たちと情報を共有した。


 林田は、男の供述を基に事件の再調査を始めた。草薙神社での犯行を認めた男の言葉には、確かに動機があった。しかし、林田の経験が告げていた。この事件はまだ終わっていない、何かもっと大きな秘密が隠されている、と。


 草薙市の静かな街並みの中で、再び新たな真実が明らかになる時が近づいていた。


 出頭した男のプロフィールは以下の通りだ。


### **名前:** 岡本 達也 (Okamoto Tatsuya)


### **年齢:** 42歳


### **職業:** 失業中 (以前は草薙市内の小さな工場で製造業に従事)


### **住所:** 静岡県草薙市桜町2丁目


### **家族構成:** 妻と中学生の娘がいるが、最近別居中


### **性格・特徴:**

- **内向的で真面目**な性格だが、近年は職を失い、自信を喪失していた。

- **短気な一面**もあり、特にストレスが溜まると感情のコントロールが難しくなることがあった。

- 過去には特に問題を起こすことはなく、周囲からは「地味で真面目な男」という評価を受けていた。


### **背景:**

- **経済的に困窮**しており、職を失ったことが原因で妻と口論が絶えず、家庭内での関係が悪化。

- 工場勤務時代、彼のミスで会社に損害を与え、上司や同僚から強く叱責されることが多かった。

- 蜂須賀蛍とは、草薙市内で偶然知り合い、彼女に仕事の斡旋や金銭的な支援を期待していたが、その関係が裏目に出て、結果として彼の生活はさらに悪化したと考えていた。


### **動機:**

- 蜂須賀蛍が、自分を騙し、人生を狂わせたと信じており、彼女に強い恨みを抱くようになった。

- 自暴自棄に陥り、彼女を殺害することで自身の苦しみを解消しようとしたが、実際に行動に移した後、後悔と罪悪感に苛まれた。

- 最終的に罪の意識に耐えられなくなり、警察に出頭した。


 岡本達也は、長年積み重ねられた生活のストレスと、蜂須賀蛍との因縁によって追い詰められた結果、取り返しのつかない行動に及んでしまった。その背景には、個人的な恨みや社会的孤立が大きな要因となっている。

 

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