第12話 放課後の作戦

「ねぇ詩悠。今日の放課後って空いてる?」


「あー……


(そういや、相手の要件を聞く前にはなから断るのはだめだって言ってたな)


今んとこ用事はないけど」










「久しぶりだねー。詩悠と放課後デートなんて」



「デートて……もっと私よりいい男捕まえてからやりな」



「そんなの、多分そうそう見つからないよ」




 優香からのお誘いで絶賛デートに来ている。今朝だるいからって断ってたら、この機会はなかったのだるか。いやまぁ、眠たいのには変わりないけど。



「んでも、優香から誘ってくるなんて珍しいね」


「うーん。私からすれば私が誘うに至るまでに撃墜されてるんだよね」



 ビンゴ。反省しよう。そうしよう。



「まあ、誘ったはいいけど行きたいとこはないんだよね」


「そうなの?」


「それに、詩悠やっぱり眠たそうだし。よし、私の家行こうか」


「あー。いいね。外ふらつくほど元気じゃないかも」



 優香の家なんて、いつぶりだろうか。昔から付き合いがあるのに、行ったことはそんなにない。大体私の家か、私の家か……私の家だ。





「おじゃましまーす」


「どうぞ。お茶入れるから、そこの私の部屋でゆっくりしてて」



 がちゃりと扉を開ける。すごく大人っぽいグレーの壁紙のシックな部屋が広がっていた。机の上には、相変わらず難しそうな本が開かれてあって、本棚にも分厚い本がいっぱいある。何語?筆記体のようなものだが、全く読めない。なんなら革製の固い表紙の本もおいてある。




「すげー……魔法陣みたい」



 本を開くと、いろんな絵と達筆な文字とが書いてあって、片面にはどんと大きく円状の模様が描かれていた。



「おまたせ詩悠。麦茶で良かった?」


「いいよ。私ジュースとか苦手だし……あ、オレンジとりんごは別だけど」


「うんうん。わかってるよ。どっちも果物では食べられないのもね」



 小学校の給食の時間にみかんの皮をむいていると目に果汁が入ってひどい目に遭ってから、果物をそのまま食べるのが苦手になったのだ。ちなみにぶどうとかベリー系は色が無理。



「てかさ、優香ってこういうファンタジーな本とか読むんだね。しかも中身まで完全再現とかじゃない?なんかのグッズ?」



「違うよ。本物の魔法の本だよ」



 

 今日の優香はそういうキャラなのだろうか。最近登下校くらいしかしゃべってないから、最近優香がなにをしてたのかはあんまり分からないけど、あれだな。私が断らなかったから知ることができた優香の新たな一面かもしれない。



「てことはさ、優香ってこういう本がお好き?」


 私は今日学校で読もうと忍ばせていたラノベを取り出す。『禁術として忘れ去られた古代の魔法を俺だけが知っている。ロストスキルで現代魔法世界を成り上がり』という本だ。その名の通り、成り上がりものの魔法世界のお話だ。


「嫌い」


「おお、シンプルに嫌な顔するじゃん」



「そういう強い力を持ってて、そんな理想的な展開が起こるなんて絶対ないもの。詩悠は強い力を持ってたらいいふらす?」


「うーん……私は別にいいかな。辺境を旅したいかも」



「あはは、詩悠らしいね。それに、それでもやっぱり色々と付きまとってくるものだよ。世界って案外狭いからね」




 話が難しい気がしてきた。ただのたられば話だと思って私は会話しているが、なんか優香の目が本気すぎて、感じ方の相違を実感している。


「今日はね……詩悠に聞いてほしいことがあるんだ」




 優香が……見たことのない位弱気な目で、恐る恐るそれを口にした。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 優香が自分の家に詩悠を誘うという行動に有した時間は、1週間。彼女は思い切って、いつもの平静さを保って詩悠を家に招きました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


少し休息で上げてみました。

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