第11話 付き合うということ
陽キャ女さんと数人の女子に、突撃隣の晩御飯よろしく平日の放課後にそのままカラオケに連れていかれる。用意周到な女さんが昼休み中に予約済だったらしい。どこで手際の良さを発揮しているのだろうか。
地味に初めてのカラオケだった私は、人の前で歌うことがすこし緊張していたけど、みんなが楽しく盛り上がってるのを見ていて、逆に燃えてきた。ボカロを熱唱したら、私のおかげで私の好きなボカロPのチャンネル登録者数が2増えた。やったね。布教できたと言えるのではなかろうか。
だいたいみんなが2,3曲歌ったぐらいのころ、陽キャ女さんや他の女さんと割と打ち解けた私は、結構いろんな話をして盛り上がっていた。趣味とか、黒歴史とか、昔どんな子だったかとか。そして
「ねぇねぇ詩悠ちゃん。ぶっちゃけ好きな人とかいるんじゃないの?」
今は恋バナ中。人生初恋バナ。私も優香も、告白などは彼女から度々聞けど恋愛とは縁もゆかりもないため、なんだか気恥ずかしい。けど、やはりな。私には縁もゆかりもない物なのだ。
「いないよ。いたらもっと猛烈アタックしてるっての」
「じゃあじゃあモテ期来ちゃうかもね。詩悠ちゃんのかっこいいところ今学校で噂になってるし」
「水篠さんっていざってときにすごく頼りになるんだなーっておもったよ!」
たかがドッジボール……されど、ドッジボールというものか。まあ人間足が速いだけで魅力的に見えるような単純な生き物だし、これが球技に置き換わったと見れば納得できないでもないけど。
「なんか……失礼だけど、理由が小学生だよそれ。もっとこう、心で感じるものなんじゃないの?恋とかって」
高校生なら、もう本格的に将来を見据えていくものだと思うし、衝動的な好きで揺れ動いて付き合っても、そこにはなにも残らないんじゃないだろうか。
「人間ってね。そんなにできてないんだよ」
おお、陽キャ女さん、とうとう宗教勧誘か?私は残念ながら神道の申し子にして、そちの宗教には入ることが出来ぬ。すまぬな。
「別に宗教じゃないよ」
「はい、ふざけました」
「どんなになんでも出来る人でも、絶対にどこかは間違っている部分があるし、悩みだってあるんだよ。私たちなんか、しょっちゅう間違えるでしょ?なのに、恋愛で別れることがいけないことなんておかしいと思わない?」
「……というと?」
「付き合うってね、要は経験値を貯めることなの。たまたま初めて付き合った人がそのままの自分と相性が良くて、たまたまゴールインする人もいるけどね?人と付き合うって、その人を通して自分の好みを知る機会なの」
「ほうほう」
「この人のこういうところが嫌。こういうところが好きっていうのを積み重ねて、自分がしんどいなら無理にいる必要はない。だって自分の人生じゃん?んで、別れるって言うのは、その人に自分の知らなかった一面を気づかせてくれたことを感謝して、相手にもこういうところがダメだったの。嫌だったのって、面と向かってアドバイスできる機会なの」
「おお、なるほど」
「だから、別れるっていうのは悪いことじゃないし、いっぱいの人と付き合うって言うのも、決して悪いことじゃないんだよ」
私の中の陽キャ女さんのイメージがとっても変わった一日だった。普段あんなにおちゃらけてるのに、しっかりとした芯を持っている人……憧れる!
「ま、まずは告白成功しないといけないんだけどねー」
「あ……オワタ」
「だいじょーぶだよ。詩悠ちゃんなら、多分困らないだろうから」
「???」
その後もバンバン歌って夜ご飯一緒に食べて、私がなんだか磨かれていくような気がした。
「んで、気になる人もいないの?」
「んー……最近はちょっとありますけど……」
「なんでも言っちゃって!話聞くからさ!」
なんなら連絡先も交換した。
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優香「最近あんまり詩悠と話せてない……」
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