第2話 やっぱこういうの苦手だわ

 昼休み。給食当番でもなかったため、給食を食べてそのまま図書室に向かう。夏休み中に借りていた本を返さないと、今日外で遊ぶという楽しみをとるよりもはるかに長い時間を取られとてつもない後悔の念に駆られるため、しぶしぶ図書室へと向かう。


「げっ」


 噂の転校生さんがいた。窓際のよく日に当たるところでなにやら難しそうな本を読んでいる。なんて書いてんだろ。ん?世界の……なんだこれ、漢字読めない。


「あ、お隣の子だよね。こんにちは」


「あー、どうも」



 天使のような笑顔で、とっても透き通った声が私にやってきた。にしてもほんと、もうこう言っちゃなんだけど、目が笑ってない。



「その、何読んでるの?」



 せっかくだし、本好きなら一緒にお話でもできるかなって思って、今何読んでるのかを聞いてみた。見たことない位分厚いし、見たことあっても多分、いや絶対手に取らないし。



「あー、これはね。世界史の本だよ」


「世界……し?え、死!?世界死ぬの?」


「あはは、面白いねお隣ちゃん。違うよ。世界の今までの歩みがしっかり記載されてるんだ。全部で30巻あるんだけどね。今は13巻目だよ」




 やっぱり私は、この子が苦手だ。皆が言うように、綺麗なのは認めよう。賢いってのも、今の話を聞いていて分かった。けど、朝みたいに人によって来てほしくないってことを気配だけで伝えてくる感じが、すごく嫌なのだ。今だって、私に向けられる笑顔は、とても綺麗で、模範的なのだ。人間がこんな笑顔ができるのかと思うと、私は少し気味が悪くなった。



「私、もっと人間くさい人間が好きだわ」



 あ、言っちゃった。私としたことがっ、思ったことをつい言っちゃうのが、私の悪い癖!やばいな、ただでさえ人様近づかないでオーラましまし人間に、こんなん言っちゃったら私絶対……消される。消されちゃうよ!



「ご、ごめん。その、私思ったこと全部口から出ちゃうんだ。だから今のはその……あ!いや思ったことが全部じゃなくて、思ったことがだいぶ誇張されて出ちゃうというか、あははー……ごめんなさい」




「あははっ、面白いね君。そうだよねーやっぱこんなヤツ嫌いだよねー」



「へ?あ、こ、こんなヤツって」



「私だってこんなの好きでやってるわけじゃないんだよ?まして私は君のことちょっと興味持ってたんだよ。皆とは反応違うしさ。なのに、そんな人にまでこれ出ちゃうとか、ちょっと病気だよね……」



 私には、彼女が何を言っているのかがわからなかった。ただ、なんか反省してるんだろうなという事は、雰囲気で分かった。



「てか、世界史の『史』が読めないのに、誇張とか知ってるって面白いね君。そうだ、まだ名前効いてなかったね。お名前は?」



「み、水篠、水篠詩悠みずしのしゅう、です……」



「そっか、私は優香だよ。笠波優香。よろしくね!しゅうちゃん!」




 多分これが私と彼女、優香との仲良くなるきっかけだったんだと思う。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


笠波優香

大人びて達観した性格。自覚なしで人にはやんわり近づくなというオーラを出している。が、みんな小学生だから気づかない。(しゅうちゃん以外)

好物はパスタ、お菓子

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