第46話
「シリル様、私のこと、好き、なんですよね?」
屋敷に戻るなり、レベッカ嬢が聞いてきた。
「…それは、どういう意味だ?」
なぜそんなことを聞く必要がある?
「そのままの意味です。どっちなんですか!?」
レベッカ嬢がなぜか切羽詰まった表情で聞いてくる。
「そんなの、好きに決まっているだろ」
当然だ。レベッカ嬢を愛していないわけがない。
「じゃあどうして」
震える声で彼女は言う。
「どうして私が他の男の人と出かけるのを許したんですか?
どうして朝、嫌だと言ったんですか?
どうして、すぐに理由を教えてくれなかったんですか…?」
今にも泣きそうな顔をしているレベッカ嬢を見たらたまらなくなって、彼女を抱きしめた。
「ごめん、レベッカ嬢…ごめん、ごめん」
罪悪感が募る。こちらまで泣きそうになってしまう。
「ごめんじゃ分かりません。ちゃんと教えてください」
そうだな、きちんと伝えなければ。ゆっくり、腰を据えて話をする必要がある。
「ここではなんだから、まず俺の部屋に行こう」
俺の部屋で、向かい合ってソファに腰を下ろす。
「レベッカ嬢、君の問いに対する答えだが」
レベッカ嬢の目を見て話す。
「まず、あの時嫌だと言ったのは、レベッカ嬢が他の奴らにジロジロと見られていることに対してだ。自分の好きな人が他の男に見られるのはあまり気分の良いものではないからな」
一呼吸置いて続ける。
「それと、その…」
これは一番言いにくいことだ。言葉を濁したくなる。だが誠意をもって打ち明けると決めたんだ。
「嫌だと言った理由をすぐに言わなかったことと、他の男との外出を許したことについて…」
レベッカ嬢は真剣な顔で黙って待っていてくれる。優しい人だ。
「あれは、俺の体面を守るためだったんだ。俺は次期公爵であり次期宰相。周囲に多く人がいる中で一つでも綻びを見せては弱みに漬け込まれる。だから、婚約者や妹弟に弱いということが知られないように…」
俺は何をぐだぐだと…
「いや、言い訳しても仕方ない」
床に膝と手をついて頭を下げる。俺の前世で、誠意を表す最上位の姿勢だ。
「これは完全に俺のエゴなんだっ…!すみませんでした。これからは貴方を蔑ろにしたりしない」
「な、何をなさっているんですか…!そんな、み、みっともない格好を…!」
レベッカ嬢は初めて見るために戸惑っている。早く立つよう急かされるが、俺は動かない。
「これが俺の、精一杯の謝罪だ。受け取ってもらえるだろうか?」
「分かった、分かりましたから、もうその姿勢はやめてください」
少し、ずるかっただろうか。惨めな姿を晒して、許すしかないよう仕向ける。そんなつもりはなかったが、結果的にそうなってしまった。
「本当に、許してもらえるのか?貴方はそれで良いのか?」
今度は座って、対等な目線で尋ねる。
「はい、許します」
「ありがとう」
良かった、これでひとまずは一件落着だ。
※途中で切ったので少し短くなりました。この後もう一話更新します。
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