第45話

朝食の席。


テーブルの手前からレベッカ嬢、レニー、その向かいにセシリアが腰掛けていた。


「おはようございます」

「ああ、おはよう」

視界が可愛いで溢れている。はあ、目が幸せだ…



朝食後、鞄に教科書を詰めていると、ある可能性に思い当たる。


ん?待てよ?これはもしかしなくても、レベッカ嬢と一緒に登校することになるのでは…?


うわあどうしよう、道中ずっと一緒なんて、し、心臓が持たない!

「いや乙女か、あんたは」

「そうか、乙女心とはこういうものか…」

「急に真面目」


不思議そうな顔でアルが言う。

「心臓が持たない、ですか」

「だって道中ずっとあの綺麗な横顔を拝めるんだよ?幸せすぎて死ねるよ」

「はいはい良かったですねー」

棒読みだな。でもまあ、惚気ている自覚はある。



「では、行って参ります」

「いってらっしゃい」

家族に見送られて門の外へ出る。母上とセシリアとレオナルド。時間があるときはこうして見送りに来てくれるのだ。

「温かい家庭ですね」

「ああ、自慢の家族だ」



学園までの道中。

「…」

注目されている。すごく。


こうなると思ったんだ、レベッカ嬢は可愛いから。


(マスター、それ口に出して言った方が良いですよ)

(…)


「なんか、すごい見られてないか?」

(無視ですか!?ヒドいっ!)

(…)

変態腐女子が何か言っているが面倒なので無視だ、無視。

「そうですか?…確かに、周りに人が多い気はしますね」


俺が指摘した瞬間、見つめていた奴らがさっと視線を逸らした。

やっぱり。レベッカ嬢に見惚れていたんだ。


「…嫌だな」

ぽつりと、言葉を漏らす。


「え?…も、もしかして、私と登校するのが…?」

「い、いや、違うんだ!」


違うのだが…

「ではどうして?」

「すまん、ここでは言えない」


きちんと理由を説明すべき、いやしたいのだが、それができない。人目を憚る内容だからだ。


レベッカ嬢は不思議そうに首を傾げた後、頷いた。

「分かりました。じゃあ、あとで聞きますね」


「っ、すまない…」

苦虫を噛み潰したような顔になる。


ああ、もどかしい。申し訳ない。理由を黙っておくなんて本当はこんなこと、したくないのに。


「そういえば、そろそろ学園祭ですね」

「ああ、そうだな」

レベッカ嬢が気を遣って話題を変えてくれた。


「レベッカ嬢は何か出し物をするのか?」

そういえばまだ聞いていなかった。


「私は、仲の良い子たちと焼き菓子のお店を出すことになっています。と言っても、私はお菓子を作ったことがないので売り子ですけれどね」

レベッカ嬢はそう言って苦笑する。


「いや、今時菓子の作り方を知っている貴族なんてそう多くない。にしても、売り子か…」

レベッカ嬢が売り子なら絶対に買いに行こう。でも直接行くとな…


「…ご不満ですか?」

「あ、いや、別にそういうわけでは」

ネガティブな感情が顔に出ていたのだろうか。


「…」

「レベッカ嬢?」

急に黙り込んでどうしたんだ?


「…私、今度アルヴィンさんと映画に行くことになったんですけれど」

は?アルヴィン?誰だそれ?


「あ、アルヴィンさんは最近知り合った商人の方で…」

ああ?最近知り合ったばかりのどこぞの商人が俺のレベッカ嬢とデートだと?


「行ってきても良いですか?」

駄目だ、絶対に駄目だ。と言いたいところだが…


「ああ、楽しんできな」

精一杯の微笑みを添えて言う。


レベッカ嬢はなぜか落ち込んだ顔をしていた。



※寝不足の頭で書いていたら間違えました…

文化祭×→学園祭○です。

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