第39話

「今日、ここに泊まらせていただけないでしょうか」

突然のレベッカ嬢の発言に、俺は言葉を失った。様々な思いが、頭の中を駆け巡る。


そ、それは初夜というやつでは?ちょっと待て、まだ心の準備ができていないぞ!


何故泊まり?何かあったのだろうか?実家に居られなくなったとか?それはまたどうして?


というかそもそも、俺に聞くことじゃないだろう、父上に確認は取ったのだろうか。


俺の口から出たのは、最後の疑問だった。

「正確には今日から一週間ですが、当主様には、既に滞在の許可をいただいております」

大真面目な顔で言い放つ。


父上がオーケーしたということは、相当重大なことなのだろう。

表情を引き締めて事情を聞き出す。


「それで、泊まり、というのは…?」

「実は、近いうちに貴方と結婚したいのです」

「…は?」


えええ、待って展開が早すぎて頭が追いつかない…!


「駄目、でしょうか?」

「っっ!」


上目遣いで見上げられて心に矢が刺さった。

初めてだ。上目遣いは。不意打ちはやめてくれ。


「い、いや、駄目とは言っていないが…いくらなんでも急じゃないか?」

「実は、私に弟が生まれたのです」

「!?!?」


レベッカ嬢からの突然の告白に、俺はさらにダメージを追った。

先程の上目遣いといい、ここでの新情報追加といい、不意打ちはやめていただきたい。


「そ、れは、おめでとうございます…?」

なんとか残っている理性で受け答えする。


「それで、そのことと今回の滞在が、どう結びつくのでしょうか…?」

お願いです、教えてください。もう分からなさすぎて敬語になってしまった。


「はい。これで後継問題は片付いたも同然なので早いとこ結婚してしまおう、と父が言い出しまして…」


軽っ!


お義父さん、こちらの気持ちも考えてくださいよ…いや別に嫌ではないけど。

あまり急なのも迷惑だと思わないのかね…いや別に良いけど。


「そ、それで、同棲、みたいな流れに…?」

「はい…」

レベッカ嬢は、少し申し訳なさそうに頷く。


世の中では結婚してから同棲するのが普通だが、中には数回の同棲生活を経て結婚する人もいるようだ。結婚する前の練習、のようなものだろう。


「いやまあ、こちらとしては断る理由もないし、構わないが…」

「良かった、シリル様が了承してくださらなかったら勘当を言い渡されるところでした」


…やっぱり重大なことだった!!

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