第21話
今度は武術の試験だ。一対一で教師と模擬戦闘をし、その中で筋力、技術、スピード、反射神経、持久力などを見られる。
剣術、弓術、格闘技、それぞれ部門が分かれている。俺は当然剣術部門だ。
深呼吸して試験官と相対する。
これは完全なる他流試合。どこから一閃が飛んでくるか分からない。
隙を作らず、相手の目から足の先まで注意深く観察する。
俺が動くより先に教官が踏み込んで来た。剣で受け止め、横にいなす。
それからは相当な速度で攻防戦が続いた。
顔面を狙った攻撃をしゃがんで躱し、そのまま足払いをする。
攻撃を受け、その勢いでこちらも突き、躱され、また攻める。これを繰り返す。
ふと、教師の後方のペンが目に入った。
ん?空中にペン?
しかもそのペンはひとりでに動いている。ペンが動くと、同じく空中にある紙に文字が書かれる。
なるほど、今目の前にいる教師は、闘いながら魔法でペンを走らせ記録しているのだろう。ここまでコンマ1秒で考えを巡らせて得心した。
マルチタスクとは、器用なものだ。
感心していると、剣先が目の前まで迫ってくる。瞬時に上体を後ろに逸らして避けた。そのままの勢いで宙返りし、態勢を立て直す。
「余所見とは、まだ余裕があるようだな」
「教官こそ、随分と手加減なさっているようじゃありませんか」
少し煽ってみる。
実際、手ぬるいな、とは思っていた。
剣を習いたての素人でも見抜けるような基本的な技しか出してこない。
何より、フェイントがない。体の向きで次の攻撃が読めてしまう。
流派が違う可能性を警戒していたが、そんな必要もない。どこの流派でも最初に習うような技ばかりだ。
「よく分かったな」
教師の纏う雰囲気が変わった。どうやら本気を出すようだ。
ギンッと金属のぶつかり合う音が響く。
(太刀筋が、さっきと違うっ!)
「ぐっ」
一撃も重い。
(だが、問題ないっ!)
こちらも力を入れて押し返す。
本気を出した教官は、フェイントも入れてくるし太刀筋も鋭い。やはり俺とは流派が違うようだが、この程度ならば対応できる。
フェイントに注意しながら防御に徹する。隙を見て太刀を入れる。
「っ!」
攻防戦を続けていると、急に足が地面から離れ、俺は後ろに倒れた。
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